中学教科書問題、自分が名前を出して関わっている都教委の採択が7月に終わってしまい、なんだか時間がたってしまいました。9月になって、まとめの総括をしたいと思いながら、新聞報道にもある通り沖縄の八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町で構成)で決着が着いていないので、おくれてしまいました。ここの採択がどうなるかはまだ時間がかかりそうです。
今回は、今までの扶桑社(産経新聞の子会社)を引き継いだ育鵬社(扶桑社の子会社)が2年前の10倍ほどに「躍進」し、自分たちでは大成功と言っています。区市町村立では、大田原に続き、横浜、東京都大田区、武蔵村山、藤沢、東大阪、益田、呉、尾道、岩国、今治、四国中央、愛媛県上島町で採択。また中高一貫校での採択が、東京、埼玉、神奈川、横浜、香川、愛媛で行われています。特別支援学校は東京と愛媛。私立は省略。「日本教育再生機構」のまとめによると、「公立・私立合わせて(概数)歴史 45490 公民49950。採択シェアは(1学年120万人として)歴史 3.79% 公民 4.16%」です。このうち、横浜だけで27000あるので、この「成功」は横浜全市で採択されたことにおおきく負っています。(ちなみに、この問題を8月以後書いてないのは、育鵬社の「成功」の宣伝をするみたいで嫌だったからです。)
一方、自由社は、年表盗作問題の影響も大きかったでしょうが、公立では東京都の特別支援学校で公民が採択されただけだと思います。その責任を取って「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長は辞任しました。しかし、では「つくる会」ではこの「自由社惨敗、育鵬社『躍進』」をどう考えているのかというと、「つくる会」から分かれた「保守系」の教科書が伸びたことは自分たちの運動があったればこそで、二つの社があることが重要なんだと言っています。小さい字でコピーすれば、
「自由社と育鵬社の教科書は、保守系の教科書として、今回も市民運動の側からの激しい攻撃にさらされました。が、しかし、それでも全体として約5パーセントの採択を獲得しえたことは、保守系の教科書が2種あったことに大きく帰因したと考えられます。「つくる会」としては、保守系教科書の普及という観点に立ったとき、保守系の教科書が2種あるということは有利な条件であり、そのためにも「つくる会」は運動を続けていかなければならないと考えています。「つくる会」が教科書をつくることを止め、保守系の教科書が育鵬社の教科書だけになることは、保守系教科書の普及にとって大変な不利な状況の再来になります。」
こんなに採択されず商業的にペイしないことはもう止めればいいのに、と思いますが。結局、思想的運動的理由で「保守系教科書の普及」が目的なわけです。これは「教科書の政治利用」そのものを自己認識していることを示しています。「市民運動の側からの厳しい攻撃」と言っても、いわば「売られたケンカ」であって、「つくる会」が先に教科書を政治利用しようと市販したり、政治家を動員したりしたわけです。
この「2社ある」ことは確かに「保守系教科書に有利」でした。歴史と公民、合わせて4つも市販して、読むのも大変。(僕は自由社は買ってません。)きちんとした分析にも時間がかかるし、今回は自由社の年表問題も発覚して、とにかく一番ダメなのは自由社、という感じになってしまい、育鵬社への取り組みが弱くなった面は否めません。
また、震災で検定結果発表も遅れ、その結果育鵬社、自由社の市販も5月になり、分析と批判も遅れたのに、都教委の採択はいつもと同じ7月下旬。震災報道で教科書関係の報道も少なく、原発事故への取り組みで市民運動側の取り組みも難しかったという事情もあると思います。
と同時に、教育委員が中心となり現場の意向を無視して採択する仕組みが完成してしまい、教育基本法「改正」の趣旨を生かした教科書を、などと言う言い方が通ってしまう素地がありました。教育を教育現場の意向が通らないようにするという、ずっと進められてきた教育政策が効いてしまったということです。
僕は、検定制度そのものを再検討すべき(というか廃止すべき)と思いますが、検定制度を前提にすれば一定程度学習指導要領に沿って似たものになるわけで、そうであるならば「現場の意向を尊重して選べばよい」と強く思っています。教育委員が小中のすべての教科書を選ぶというのは無理です。しかも、その教育委員の構成が、一部の自治体では明らかに偏っています。
前に「外国勢力が支持する反対運動に反対」というような育鵬社に賛成するコメントがあったけど、なぜ「国内勢力」ならいいのかがわかりません。「外国勢力」なんてものはないのです。具体的にどの国の誰なのか、論点を明らかにして批判するべきです。教科書問題は確かに韓国などでも強い関心を持たれています。しかし、それは韓国の市民団体の運動です。
また中高一貫校での採択が多いことが気になります。東京が先鞭を切ったとも言えますが、中高一貫は都府県立でその意味で知事の意向が反映しやすいことが大きいと思います。結局は地道に、地方政治を変えていくしかないと思うけど、「保守系の教科書」と自分たちで宣伝する教科書を税金で買って地区のすべての子供たちに手渡すということが、教育の政治利用であるということを再確認したいと思います。
これって、不快なことではありませんか?
何しろ「大東亜戦争」と書いてあったり、国民主権の前に天皇について書いてあるんですよ。
また、杉並区で今まで扶桑社だったのが帝国書院に変更になりましたが、代わって事前に育鵬社有利という情報がなかった大田区で採択されてしまいました。知人や生徒も多く、痛恨事。
なお、この問題では、今までに下記のように7回書いています。
「中学教科書問題」
「中学教科書問題②-原発の記述」
「中学教科書問題③栃木県大田原市で育鵬社採択」
「中学教科書問題④教委の説明責任が大切」
「中学教科書問題⑤都教委の場合は」
「中学教科書問題⑥こういう意見もある…」
「東京都の教科書採択結果」
今回は、今までの扶桑社(産経新聞の子会社)を引き継いだ育鵬社(扶桑社の子会社)が2年前の10倍ほどに「躍進」し、自分たちでは大成功と言っています。区市町村立では、大田原に続き、横浜、東京都大田区、武蔵村山、藤沢、東大阪、益田、呉、尾道、岩国、今治、四国中央、愛媛県上島町で採択。また中高一貫校での採択が、東京、埼玉、神奈川、横浜、香川、愛媛で行われています。特別支援学校は東京と愛媛。私立は省略。「日本教育再生機構」のまとめによると、「公立・私立合わせて(概数)歴史 45490 公民49950。採択シェアは(1学年120万人として)歴史 3.79% 公民 4.16%」です。このうち、横浜だけで27000あるので、この「成功」は横浜全市で採択されたことにおおきく負っています。(ちなみに、この問題を8月以後書いてないのは、育鵬社の「成功」の宣伝をするみたいで嫌だったからです。)
一方、自由社は、年表盗作問題の影響も大きかったでしょうが、公立では東京都の特別支援学校で公民が採択されただけだと思います。その責任を取って「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長は辞任しました。しかし、では「つくる会」ではこの「自由社惨敗、育鵬社『躍進』」をどう考えているのかというと、「つくる会」から分かれた「保守系」の教科書が伸びたことは自分たちの運動があったればこそで、二つの社があることが重要なんだと言っています。小さい字でコピーすれば、
「自由社と育鵬社の教科書は、保守系の教科書として、今回も市民運動の側からの激しい攻撃にさらされました。が、しかし、それでも全体として約5パーセントの採択を獲得しえたことは、保守系の教科書が2種あったことに大きく帰因したと考えられます。「つくる会」としては、保守系教科書の普及という観点に立ったとき、保守系の教科書が2種あるということは有利な条件であり、そのためにも「つくる会」は運動を続けていかなければならないと考えています。「つくる会」が教科書をつくることを止め、保守系の教科書が育鵬社の教科書だけになることは、保守系教科書の普及にとって大変な不利な状況の再来になります。」
こんなに採択されず商業的にペイしないことはもう止めればいいのに、と思いますが。結局、思想的運動的理由で「保守系教科書の普及」が目的なわけです。これは「教科書の政治利用」そのものを自己認識していることを示しています。「市民運動の側からの厳しい攻撃」と言っても、いわば「売られたケンカ」であって、「つくる会」が先に教科書を政治利用しようと市販したり、政治家を動員したりしたわけです。
この「2社ある」ことは確かに「保守系教科書に有利」でした。歴史と公民、合わせて4つも市販して、読むのも大変。(僕は自由社は買ってません。)きちんとした分析にも時間がかかるし、今回は自由社の年表問題も発覚して、とにかく一番ダメなのは自由社、という感じになってしまい、育鵬社への取り組みが弱くなった面は否めません。
また、震災で検定結果発表も遅れ、その結果育鵬社、自由社の市販も5月になり、分析と批判も遅れたのに、都教委の採択はいつもと同じ7月下旬。震災報道で教科書関係の報道も少なく、原発事故への取り組みで市民運動側の取り組みも難しかったという事情もあると思います。
と同時に、教育委員が中心となり現場の意向を無視して採択する仕組みが完成してしまい、教育基本法「改正」の趣旨を生かした教科書を、などと言う言い方が通ってしまう素地がありました。教育を教育現場の意向が通らないようにするという、ずっと進められてきた教育政策が効いてしまったということです。
僕は、検定制度そのものを再検討すべき(というか廃止すべき)と思いますが、検定制度を前提にすれば一定程度学習指導要領に沿って似たものになるわけで、そうであるならば「現場の意向を尊重して選べばよい」と強く思っています。教育委員が小中のすべての教科書を選ぶというのは無理です。しかも、その教育委員の構成が、一部の自治体では明らかに偏っています。
前に「外国勢力が支持する反対運動に反対」というような育鵬社に賛成するコメントがあったけど、なぜ「国内勢力」ならいいのかがわかりません。「外国勢力」なんてものはないのです。具体的にどの国の誰なのか、論点を明らかにして批判するべきです。教科書問題は確かに韓国などでも強い関心を持たれています。しかし、それは韓国の市民団体の運動です。
また中高一貫校での採択が多いことが気になります。東京が先鞭を切ったとも言えますが、中高一貫は都府県立でその意味で知事の意向が反映しやすいことが大きいと思います。結局は地道に、地方政治を変えていくしかないと思うけど、「保守系の教科書」と自分たちで宣伝する教科書を税金で買って地区のすべての子供たちに手渡すということが、教育の政治利用であるということを再確認したいと思います。
これって、不快なことではありませんか?
何しろ「大東亜戦争」と書いてあったり、国民主権の前に天皇について書いてあるんですよ。
また、杉並区で今まで扶桑社だったのが帝国書院に変更になりましたが、代わって事前に育鵬社有利という情報がなかった大田区で採択されてしまいました。知人や生徒も多く、痛恨事。
なお、この問題では、今までに下記のように7回書いています。
「中学教科書問題」
「中学教科書問題②-原発の記述」
「中学教科書問題③栃木県大田原市で育鵬社採択」
「中学教科書問題④教委の説明責任が大切」
「中学教科書問題⑤都教委の場合は」
「中学教科書問題⑥こういう意見もある…」
「東京都の教科書採択結果」