尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

学校経営「遅延」センター

2011年12月10日 21時33分40秒 |  〃 (東京・大阪の教育)
 東京の教育を考えるとき、2006年4月にできた「学校経営支援センター」の意味はとても大きいと思うけど、マスコミなどではまとまった報道がない。多くの人は多分聞いたこともないだろうと思う。僕もよく知らない。知ってることは、「支援センターができた」ので、
 ①学校事務の定員が減らされ、学校事務の多忙が進んだ
 ②備品の注文などがセンター経由になり、すぐに届かなくなった
 ③職員会議への同席等、「学校経営の支援」と称してセンターから指導主事がたびたび来るため、「センターから来るので、書類の整備を」「センターから来るので、なんちゃらかんちゃら」、管理職の目が現場ではなくセンターを向くようになった

 「障害者自立支援法」ではないけど、行政が「支援」というとき、それは「妨害」を意味すると僕は思っている。上記①~③で、学校現場の支援になっていることがあるか。一つもない。

 初めは、「パソコンなどを学校ごとに買うのは不効率で、都でまとめて入札をすれば安く買えて、税金の節約になる」などと言っていた。だから、「学校事務をまとめて行う部署をつくる」などというのが、支援センターの仕事だとされた。が、同時に「各学校へのきめ細かい支援を行う」などと言うようなことも言っていたから、まあ「監視組織」なんだろうとは思っていた。パソコンをまとめて発注するというようなのはもちろんそれでいいのである。(しかし、その後「TAIMSパソコン」という使い勝手の悪いものを全職員一斉配布することになり、今ではこの問題も意味が変わった。この問題も大きいので、また別に。)パソコンとかその前のワープロ時代も、学校ごとにメーカー、機種が違うのを買うから、不便だった。高額な備品だから突然思いついて学期半ばに買うようなものではなく、校内のパソコン・備品整備等の部署での検討を経て、翌年度の予算要求をして買うわけだから、それを都でまとめるならそれでいい。だけど、それなら「支援センター」なんてものを新設せずに、都庁内でやればいいだけである。その方が税金の節約。

 前に紹介した渡部謙一「東京の『教育改革』は何をもたらしたか」には、校内でガラスが割れてもいちいちセンターで入札しないと発注してくれないから、なかなか修理されないという例が出ている。各学校には手元金もあるので、そこまで不便なことも今はあまりないかもしれないが。でも、授業に必要なものを頼んでも、なかなか来ないということが増えたのは間違いない。「遅延センター」と言ってる。備品は最初に頼むからいいけど、「消耗品費」は少し残すのが定例だろう。社会科だと、歴史系は流れだから計画的に頼めるけど、地理や現代社会、政治経済なんかだったら、ニュースを見て特別授業をすることがある。突然解散になったら順番を入れ替えて選挙制度を先にやるとか、中東情勢が緊迫すればそこを重点的にやるとか。そこで、教材用のDVDやビデオを頼むとする。以前は事務室の担当が業者に電話してくれて一週間あれば届いた。今は支援センターでまとめるのが年に何回と決まってるから、すぐには来ないのである。すぐに来ないことがわかってるから、生徒の関心をひくような特別授業はしない(するなと都教委が言ってるようなもんだから)か、または自分で買ってしまう。僕も自分で買ったことがある。

 とにかく、事務の担当者にお願いしても、もうどうしようもないので、もはやそんなものと皆諦めてしまったと思う。それまでは、部活でいるものを頼むとすぐに電話してくれて、翌日には届いている、みたいな時代を長く経験してきた。授業でいるといってもすぐには届かないというのには、いかにも今の都教委らしいなと思うのである。(なお、支援センターは東部、中部、西部とあり、それぞれ支所があるので、計6つある。それぞれのセンターがどこの高校、特別支援学校を担当しているかは、都教委ホームページにある。ちなみに島を管轄する支援センターはないんだけど、島の学校は「支援」しないのか。)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする