安倍首相と安倍内閣について数回ほど簡単に。昨年末の「特定秘密保護法」と靖国参拝を受け、通常国会が始まった段階で、「2014年の安倍内閣」を考えておく。
まず最初に「外遊問題」。安倍首相は昨年来、今年に入っても外国訪問を繰り返している。もう今年度の予算を使い果たし、予備費を使っているという話である。他にも、東北被災地を初め国内訪問も多い。もちろん、合法的に選出された日本の政治指導者は、東日本大震災の被災地に行かなくてはいけないし、諸外国もたくさん訪問するべきだ。国内政局が不安定なために外国訪問もままならないような政権が続いていたのは、確かに問題だった。日本の首相のサハラ以南のアフリカ訪問は、小泉首相以来8年ぶりである(エチオピア、ガーナ)。
もっとも安倍首相の1年間の外国訪問は16回だが、実は野田政権の外国訪問も16回と同じなのである。ただ、野田首相はサミットとか国連総会とかAPECとかASEAN首脳会議とか、そういうのに出かけてそのまま会議に出ただけで帰国というのが多い。また安倍政権では当面実現不可能な「日中韓サミット」というのもあった。そういう会議出席ではない外国訪問は、訪問順に韓国、中国、インド、米国しかなかった。これは必要最小限というべきものだろう。また会議出席では会議のニュースの中で諸外国の首脳と一緒にテレビに映るので、印象に残りにくい。それを思うと、「親善を深める」目的の訪問が多い安倍首相は、外国にいっぱい行ってる印象が残るわけである。
ではどこに行ってるか、紹介しておきたい。
2013年
1月16日-19日 東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシア)
2月21日-24日 米国
3月30日-31日 モンゴル
4月28日-5月4日 ロシア及び中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ)
5月24日-26日 ミャンマー
6月15日-20日 G8ロック・アーン・サミット出席及び欧州諸国(ポーランド、アイルランド、英国)
7月25日-27日 マレーシア、シンガポール、フィリピン
8月24日-29日 中東・アフリカ諸国(バーレーン、クウェート、ジブチ、カタール)、
9月4日-9日 G20サンクトペテルブルク・サミット及びIOC総会出席(ロシア、アルゼンチン)
9月23日-28日 カナダ及び国連総会出席(ニューヨーク)
10月6日-10日 APEC首脳会議等(バリ)及びASEAN関連首脳会議(ブルネイ)出席
10月28日-30日 トルコ
2013年 11月16日-17日 カンボジア,ラオス
2014年
1月9日-15日 オマーン,コートジボワール,モザンビーク,エチオピア
1月21日-23日 ダボス会議出席(スイス)
1月25日-27日 インド
東南アジア諸国はすべて訪れた。トルコやロシアなど複数訪れた国もある。モンゴル、インドなどを訪れながら、中国、韓国がないのがいかにも不自然。アフリカも近年中国の経済的進出が著しいので、全体的に「対中国包囲外交」的な側面がうかがえるのは否定できない。これはいかにも問題ではないのか。東南アジア諸国と友好を深めること、中国との関係を「戦略的」に思考することは必要だと思うけど、中国に行けないような状況は日本にとっても本人にとっても、望ましいことではないはずだ。
それと「原発輸出外交」を進めていること。トルコ、ベトナムだけでなく、今回のインド訪問も本来核兵器開発国であるインドと防衛協力を進めることは問題のはずであるが、もはや全く念頭にないのではないか。次回は2月7日のソチ五輪開会式になりそうだ。これも問題山積で、欧米諸外国首脳が軒並み欠席する見通しのところ、安倍首相だけがサミット参加国で出席することになりそうだ。開会式の2月7日は、もともと「北方領土の日」(幕末の日露和親条約締結の日)なんだけど、政府主催の式典に出席した後に、政府専用機で出かけるということだ。時差の関係でそれでも間に合うということなのだろうか。
欧米諸国首脳が欠席するのは、プーチン政権の強権的体質、特に「同性愛関係の宣伝行為(プロパガンダ)禁止法」に反対の意思を示す目的がある。安倍首相はこの問題を人権問題ととらえられないかもしれないが、これではやはり「日本はロシアと並んで共通の価値観に立ってない国」だと思われてしまうだろう。日本は国会開会中だし、日本で人気が高いフィギュアスケートなどを応援方々、後から行けばいいではないかと思うが。それでも開会式に無理していくのは、「プーチンに恩を着せる」ということだろう。でも、それでロシアが北方領土を返還するということにはならない。「日本は人権を重視しない国」という印象を強めるだけだろう。大体、プーチンとかエルドアン(トルコ首相)とかと何度も会ってるというのも、「選挙で選ばれた政治家で、伝統重視で強権的手法が好きなタイプ」という共通点で意気投合したのではないか。
そういう風に安倍外交には様々な問題があるのだが、それ以上に最近は「行き過ぎ」感が強まってるという問題がある。ダボス会議から帰って、翌日に国会で施政方針演説を行い、その翌日にはインドに行くなどというのは、どう考えても「張り切り過ぎ」ではないのか。ここまで「元気」で「張り切っている」首相を持つということは、国民として喜ばなくてはいけないのか。でも、やり過ぎは何か大きな穴に近づいている不安感も抱かせる。急ぎ過ぎではないのか。もっと言えば「生き急いでいる」感じがしてしまう。この「生き急ぎ」というのは、もちろん人間の生命のことではなく、「政治的生命の旬の時期」ということである。どんな高支持率を誇る政権でも、だんだん飽きられるし、選挙ではうまくいかないことも起こる。
だから政治的基盤が強い時期に、どんどん「蒸気機関車に石炭をどんどんくべる」ようにエネルギーを全開させて、自転車操業というか、とにかくやり切るという感じを持つのである。行き着く所は、「いよいよ憲法改正」なのか、それとも「やはり抱える健康不安」なのか。それにしても、源実朝が官位がどんどん上がって行ったことに当時の人々が不安を感じたことを思い出すといっては、不謹慎なたとえに過ぎるだろうか。とにかく、「そこまではやらないだろう」などと思わない方がいいと思っている。次の選挙で何かあれば、「改憲派」は衆議院で3分の2を失うだろう。その前に、公明を引き留めつつ、「維新」「みんな」を引き入れるという策略はもう完成間近ではないか。
まず最初に「外遊問題」。安倍首相は昨年来、今年に入っても外国訪問を繰り返している。もう今年度の予算を使い果たし、予備費を使っているという話である。他にも、東北被災地を初め国内訪問も多い。もちろん、合法的に選出された日本の政治指導者は、東日本大震災の被災地に行かなくてはいけないし、諸外国もたくさん訪問するべきだ。国内政局が不安定なために外国訪問もままならないような政権が続いていたのは、確かに問題だった。日本の首相のサハラ以南のアフリカ訪問は、小泉首相以来8年ぶりである(エチオピア、ガーナ)。
もっとも安倍首相の1年間の外国訪問は16回だが、実は野田政権の外国訪問も16回と同じなのである。ただ、野田首相はサミットとか国連総会とかAPECとかASEAN首脳会議とか、そういうのに出かけてそのまま会議に出ただけで帰国というのが多い。また安倍政権では当面実現不可能な「日中韓サミット」というのもあった。そういう会議出席ではない外国訪問は、訪問順に韓国、中国、インド、米国しかなかった。これは必要最小限というべきものだろう。また会議出席では会議のニュースの中で諸外国の首脳と一緒にテレビに映るので、印象に残りにくい。それを思うと、「親善を深める」目的の訪問が多い安倍首相は、外国にいっぱい行ってる印象が残るわけである。
ではどこに行ってるか、紹介しておきたい。
2013年
1月16日-19日 東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシア)
2月21日-24日 米国
3月30日-31日 モンゴル
4月28日-5月4日 ロシア及び中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ)
5月24日-26日 ミャンマー
6月15日-20日 G8ロック・アーン・サミット出席及び欧州諸国(ポーランド、アイルランド、英国)
7月25日-27日 マレーシア、シンガポール、フィリピン
8月24日-29日 中東・アフリカ諸国(バーレーン、クウェート、ジブチ、カタール)、
9月4日-9日 G20サンクトペテルブルク・サミット及びIOC総会出席(ロシア、アルゼンチン)
9月23日-28日 カナダ及び国連総会出席(ニューヨーク)
10月6日-10日 APEC首脳会議等(バリ)及びASEAN関連首脳会議(ブルネイ)出席
10月28日-30日 トルコ
2013年 11月16日-17日 カンボジア,ラオス
2014年
1月9日-15日 オマーン,コートジボワール,モザンビーク,エチオピア
1月21日-23日 ダボス会議出席(スイス)
1月25日-27日 インド
東南アジア諸国はすべて訪れた。トルコやロシアなど複数訪れた国もある。モンゴル、インドなどを訪れながら、中国、韓国がないのがいかにも不自然。アフリカも近年中国の経済的進出が著しいので、全体的に「対中国包囲外交」的な側面がうかがえるのは否定できない。これはいかにも問題ではないのか。東南アジア諸国と友好を深めること、中国との関係を「戦略的」に思考することは必要だと思うけど、中国に行けないような状況は日本にとっても本人にとっても、望ましいことではないはずだ。
それと「原発輸出外交」を進めていること。トルコ、ベトナムだけでなく、今回のインド訪問も本来核兵器開発国であるインドと防衛協力を進めることは問題のはずであるが、もはや全く念頭にないのではないか。次回は2月7日のソチ五輪開会式になりそうだ。これも問題山積で、欧米諸外国首脳が軒並み欠席する見通しのところ、安倍首相だけがサミット参加国で出席することになりそうだ。開会式の2月7日は、もともと「北方領土の日」(幕末の日露和親条約締結の日)なんだけど、政府主催の式典に出席した後に、政府専用機で出かけるということだ。時差の関係でそれでも間に合うということなのだろうか。
欧米諸国首脳が欠席するのは、プーチン政権の強権的体質、特に「同性愛関係の宣伝行為(プロパガンダ)禁止法」に反対の意思を示す目的がある。安倍首相はこの問題を人権問題ととらえられないかもしれないが、これではやはり「日本はロシアと並んで共通の価値観に立ってない国」だと思われてしまうだろう。日本は国会開会中だし、日本で人気が高いフィギュアスケートなどを応援方々、後から行けばいいではないかと思うが。それでも開会式に無理していくのは、「プーチンに恩を着せる」ということだろう。でも、それでロシアが北方領土を返還するということにはならない。「日本は人権を重視しない国」という印象を強めるだけだろう。大体、プーチンとかエルドアン(トルコ首相)とかと何度も会ってるというのも、「選挙で選ばれた政治家で、伝統重視で強権的手法が好きなタイプ」という共通点で意気投合したのではないか。
そういう風に安倍外交には様々な問題があるのだが、それ以上に最近は「行き過ぎ」感が強まってるという問題がある。ダボス会議から帰って、翌日に国会で施政方針演説を行い、その翌日にはインドに行くなどというのは、どう考えても「張り切り過ぎ」ではないのか。ここまで「元気」で「張り切っている」首相を持つということは、国民として喜ばなくてはいけないのか。でも、やり過ぎは何か大きな穴に近づいている不安感も抱かせる。急ぎ過ぎではないのか。もっと言えば「生き急いでいる」感じがしてしまう。この「生き急ぎ」というのは、もちろん人間の生命のことではなく、「政治的生命の旬の時期」ということである。どんな高支持率を誇る政権でも、だんだん飽きられるし、選挙ではうまくいかないことも起こる。
だから政治的基盤が強い時期に、どんどん「蒸気機関車に石炭をどんどんくべる」ようにエネルギーを全開させて、自転車操業というか、とにかくやり切るという感じを持つのである。行き着く所は、「いよいよ憲法改正」なのか、それとも「やはり抱える健康不安」なのか。それにしても、源実朝が官位がどんどん上がって行ったことに当時の人々が不安を感じたことを思い出すといっては、不謹慎なたとえに過ぎるだろうか。とにかく、「そこまではやらないだろう」などと思わない方がいいと思っている。次の選挙で何かあれば、「改憲派」は衆議院で3分の2を失うだろう。その前に、公明を引き留めつつ、「維新」「みんな」を引き入れるという策略はもう完成間近ではないか。