東南アジアの大衆文化が日本に紹介される機会もかなり増えてきた。タイの映画ではアート系のアピチャッポン・ウィーラセタクンが一人気を吐いていた感じだが、最近はエンタメ系映画も日本で公開されるようになってきた。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)という大規模なカンニングを描く映画は、日本でも2018年にヒットした。なかなか面白い映画だったけれど、内容的に好きになれなくてここでは書かなかった。その映画を作ったバズ・プーンピリヤ監督に、香港映画の巨匠ウォン・カーウァイが映画製作を持ち掛け製作総指揮を務めたのが、『プアン 友だちと呼ばせて』という映画だ。
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これはとても上手に作られた青春映画で、誰でも思い当たるような若き日の悔いを追体験させる手腕は見事。タイ各地とニューヨークを結ぶロケも魅力だし、ノスタルジックな音楽も心に沁みる。ある日、ニューヨークでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話があった。白血病で死期が近く、最後の頼みを聞いて欲しいという。過去に付き合っていた女性たちに返したいものがある、運転手を務めてくれないかというのである。バンコクに駆けつけてみると、ウードは見る影もなく痩せている。化学療法を拒否して死を待っているのである。
(左=ボス、右=ウード)
ウードと過去の女性たちはニューヨークで知り合っていた。そのため映画は現在と過去が交錯しながら進むことになる。ボスとウードはニューヨークで一緒にバーを開く予定だったが、ウードは直前に故郷でダンススクールを開くというアリスと一緒に帰国してしまった。しかし、アリスとは破局してしまった。イサーン(東北部)のコラートで開いたダンススクールは、今も続いているのだろうか。次のヌーナーは今では人気女優となっている。今はドラマのロケ中で、そこに会いに行く。
(バズ・プーンピリヤ監督)
ヌーナー役は『バッド・ジーニアス』でブレイクしたたオークベープ・チュティモンがやっている。ヌーナーはニューヨークでオーディションを受けたがったが、ウードが反対して別れたのだった。このようにニューヨークで起こった出来事が、ウードの過去と現在をつないでいる。続く写真家のルンが住むチェンマイまで出掛けて、一応ボスのミッションは終わったはずだった。ところが実はこの映画はここから始まると言っても良いのである。それまでボスの過去の人生は全然描かれなかった。ボスとウードはなんか昔からの友だちなんだぐらいの気持ちで見ていた。でも当然ながら二人にも過去があり、そこにはプリムという女性が大きく関わっていた。プリム役のヴィオーレット・ウォーティアは横浜生まれの歌手だという。
(ボスとプリム)
映像美と懐古的な音楽によって、映画は心地よく進行するが、人間関係は苦いものがある。それを面白く見せていくのは脚本の力。ニューヨークやボスの故郷パタヤ海岸などのロケの中に、過去と現在を縦横に織り込んだ脚本が見事だった。ウォン・カーウァイが上手く脚本にアドバイスしたようだ。監督は自分の実人生も入れたという。題名の「プアン」というのは、「友人」という意味だという。「友だちと呼ばせて」という副題が効いている。何度もカクテルをシェイクするシーンが出てくるのも興味深い。是非、韓国で(男女を入れ替えて)リメイクして欲しい。タイ映画初めてという若い人に見て欲しい。
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これはとても上手に作られた青春映画で、誰でも思い当たるような若き日の悔いを追体験させる手腕は見事。タイ各地とニューヨークを結ぶロケも魅力だし、ノスタルジックな音楽も心に沁みる。ある日、ニューヨークでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話があった。白血病で死期が近く、最後の頼みを聞いて欲しいという。過去に付き合っていた女性たちに返したいものがある、運転手を務めてくれないかというのである。バンコクに駆けつけてみると、ウードは見る影もなく痩せている。化学療法を拒否して死を待っているのである。
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ウードと過去の女性たちはニューヨークで知り合っていた。そのため映画は現在と過去が交錯しながら進むことになる。ボスとウードはニューヨークで一緒にバーを開く予定だったが、ウードは直前に故郷でダンススクールを開くというアリスと一緒に帰国してしまった。しかし、アリスとは破局してしまった。イサーン(東北部)のコラートで開いたダンススクールは、今も続いているのだろうか。次のヌーナーは今では人気女優となっている。今はドラマのロケ中で、そこに会いに行く。
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ヌーナー役は『バッド・ジーニアス』でブレイクしたたオークベープ・チュティモンがやっている。ヌーナーはニューヨークでオーディションを受けたがったが、ウードが反対して別れたのだった。このようにニューヨークで起こった出来事が、ウードの過去と現在をつないでいる。続く写真家のルンが住むチェンマイまで出掛けて、一応ボスのミッションは終わったはずだった。ところが実はこの映画はここから始まると言っても良いのである。それまでボスの過去の人生は全然描かれなかった。ボスとウードはなんか昔からの友だちなんだぐらいの気持ちで見ていた。でも当然ながら二人にも過去があり、そこにはプリムという女性が大きく関わっていた。プリム役のヴィオーレット・ウォーティアは横浜生まれの歌手だという。
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映像美と懐古的な音楽によって、映画は心地よく進行するが、人間関係は苦いものがある。それを面白く見せていくのは脚本の力。ニューヨークやボスの故郷パタヤ海岸などのロケの中に、過去と現在を縦横に織り込んだ脚本が見事だった。ウォン・カーウァイが上手く脚本にアドバイスしたようだ。監督は自分の実人生も入れたという。題名の「プアン」というのは、「友人」という意味だという。「友だちと呼ばせて」という副題が効いている。何度もカクテルをシェイクするシーンが出てくるのも興味深い。是非、韓国で(男女を入れ替えて)リメイクして欲しい。タイ映画初めてという若い人に見て欲しい。