尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

全員に関係がある遺産相続ー相続を考える①

2024年04月30日 22時44分41秒 | 自分の話&日記
 高血圧の薬を飲むようになり、大腸ガン検診にも引っ掛かり、昨秋来頭上に暗雲が漂っているような気がしてきた。そして、この間母親の死去に伴う「遺産相続」をずっとやってきたが、これも面倒くさくて頭が痛い問題だった。大金持ちなら全部誰かに任せて、自分はハンコを押すだけで済むかも知れない。しかし、そんな金持ちじゃないので、出来る範囲のことは自分でやる気だった。しかし、どうしても自分じゃ出来ないこともあったので、外部に頼むことになった。で、どこに頼めば良いんだろう?

 自分が経験した「遺産相続」を通して、思ったこと考えたことを数回書いてみたい。まず「遺産相続は全員に関係がある」ということである。いや、ウチは大して財産がないから相続は関係ないと思う人もいるだろう。しかし、それは大間違い。どんな人でも何かしらの「財産」があり、ごく僅かしかない場合もあるだろうが、残された家族はその処理をしなければならない。もちろん「相続税が掛かるかどうか」という問題は別である。しかし、相続税には関係なくても、相続は発生する。

 そして、今後ケータイ電話ペットクレジットカード、スマホ内にあるが暗証番号が判らない暗号資産など、処理に困る「遺産」がどんどん増えてくると思われる。ちなみに、クレジットカードは暗証番号が判っていれば、(本人のフリをして)ネットで解約出来る場合もあるが、判らない場合は億劫。ネット上では難しく、電話すると何番を押せといろいろ操作して、「オペレーターにつなぎます」と言われて待つこと平均10~15分。それでも通じず何日も掛ける場合もある。

 スマホの解約も非常に大変で、本人が病気入院、施設入所の段階では、相談に行っても本人じゃないとダメ、または自筆の委任状がないとダメと言われることが多いと思う。ウチの場合も「ケータイ電話は重いから持って行かない」と本末転倒のことを言い出してから、10年以上払い続けていた。結構高いわけだから、少なくとも入院した段階で解約したかったが、どうせメンドーなこと言われると思って行かなかった。ちなみにさすがに死んじゃえばすぐに解約出来ました。
(相続税の控除範囲)
 「相続税」はいくらぐらいから掛かってくるのだろうか。知ってる人(経験した人)には周知のことだが、関係ない人は知らないだろう。僕も調べるまで知らなかった。まず「基礎控除が3000万円」で、それにプラスして「相続人数×600万円」が控除となる。つまり、父親が死んで、母親と子ども二人が相続人の場合、3000万+600万×3=4800万円が控除。その母親が死んで、子ども二人が相続する場合は、4200万円が控除。それ以下の場合は、相続税は掛からない。だけど、税務署に相続税ゼロという申告は必要だ。不動産と預貯金、有価証券などで6千万あったとすると、先の控除額を引いた額が相続税の対象となる、
(相続税額) 
 今の例で言えば、母と二人の子で相続する場合は、6千万-4800万=1200万円が相続税対象額となり、1000万を超えてしまったので15%となる。つまり1200万の15%=180万を相続分に応じて支払うことになる。これが相続額5千万だった場合は、無税となる。15%になるのは1000万~3000万だから、総額7800万を超える場合に20%になる。大体はそんな範囲に収まるんじゃないだろうか。6千万の財産を家族3人で相続するなら、合わせて180万ほど納税するというのは、そんな高いわけでもないと思う。

 ところで、では「相続財産額」はいくらぐらいになるのだろうか。預貯金や有価証券類、生命保険は大体判るだろう。だが不動産金などの宝飾品ブランド物などをどう評価するべきか。不動産の問題は次回に回し、ここでは預貯金有価証券類について考えたい。今はネット上だけで完結する預金、株、投信信託なども多いが、母の世代だと預金通帳があるから探せば存在は判明する。(株や投資信託などは、ちゃんとした会社なら報告を随時送ってくるから、それを取っておけば判る。詐欺の場合は、正式な書類を送ってこないはず。)だが、それだけでは済まないのだ。

 きちんとした相続サポート事務所(信託銀行や税理士など)に頼むと、「正規の残高証明書」が必要になるのである。今、預金口座はほぼ全員持っているはずだ。よくニュースなどで「年金だけでは食べていけないから大変」という声が聞かれる。ということは、少なくとも年金を振り込む預金口座はあるわけだ。コロナ禍の国民給付金も振込みで貰ったはずである。その口座を閉じないといけない。役所と民間企業の銀行は情報が連動しない。銀行に「死んだ」と伝えない限り、口座は生き続ける。(だから、年金振込みや公共料金、カード代支払いなどが終わるまで口座を残しておく方が良い。)

 注意が必要なのは、カードの暗証番号を知っていて死後に引き出した場合、相続放棄が出来なくなることだ。親が借金を抱えて死んだ場合、放棄する必要があるかもしれない。それにしても、入院費用、葬儀費などを親の口座から出すのは可能。だけど今は窓口で引き出すのは難しい。カードの暗証番号を知っていて、本人の委任を受けたということで引き下ろすしかない。そのためには、親の認知能力が怪しくなる前に、カードの保管場所と暗証番号を教えて貰っておかないといけない。

 そして死後に「残高証明書」を発行して貰う。これが面倒で、即日発行されるのは郵便貯金だけだと思う。(郵便局は身近にある場合が多く、今回郵便貯金の便利さを感じた。)銀行や証券会社の場合、「発行依頼」がいる。ある銀行はネットで来店予約が必要と言われ、見てみると最短でも2週間先。行って依頼書を出しても、発行まで2週間掛かると言われた。つまり、それだけで一ヶ月を空費したのである。またある銀行は「残高証明書発行料」が掛かるという。それが2千円もするというから呆れてしまう。

 証券会社にも一つずつ電話して依頼したのである。えっ、いくつ銀行や証券会社と取引しているんだという感じだが、これは恐らく多くの高齢者にあることじゃないかと思う。バブルとバブル崩壊を体験した世代である。あちこち転勤が多かった人もいるだろうし、地元にずっといた人でもバブル期には無理やり口座を開いてくれ、国債を買わないかと押し掛けてきた。バブル崩壊後に「ペイオフ解禁」などと、銀行が破綻しても預金は一千万しか払い戻さないと言われた。その頃退職金や遺産相続、土地売却などで何千万か手にした場合、銀行数社に分散したものである。これが80代、90代の親によくあることで、今子どもが苦労するわけ。

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