尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「移民」「難民」と日本-「入管法改正」と外国人労働者問題②

2018年12月10日 23時00分21秒 | 政治
 「入管法改正」に見られる安倍政権の対応はどうにもおかしいものだった。しかし、それ以上に僕が心配するのは野党側の対応である。真正面から外国人労働者の人権を論じるよりも、日本人労働者への影響を心配して外国人を排斥するかの論調も見られた。健康保険が家族にも適用されるのかなど、制度の本質から離れた論議が繰り広げられた。それだったら年金はどうなのか。家族を呼べないなら母国へ帰るしかない。年金は払い損になってしまうのか。

 日本の場合「外国人労働者」の制度問題以前に、まずは「難民認定」のあり方を再考しなければいけない。裁判所で二度にわたって難民と認められらながら、法務省は未だ認定しないケースまである。日本の裁判所は外国人の人権に敏感とは言えない。そんな裁判所でさえ認めたケースを行政が認めないのは、三権分立の精神に反している。入管の収容所での人権無視の長期拘束も大問題。入管だけでなく、刑事司法での長期の身柄拘束が世界基準から見て異常だ。日産のゴーン事件をきっかけに、世界からの批判も厳しくなりつつある。

 しかし、ここで言いたいのはちょっと違うことである。日本が直面している「少子化」をどう考えるのか。人口バランスの崩れた日本社会をどのように維持していくかという問題である。例えば「介護」の問題で、介護福祉士の待遇が悪いから介護の人材が集まらないという人もいる。介護だけでなく、労働者の待遇をよくすれば日本人の労働力が集まるという発想だ。同じように、女性や高齢者が働ける社会を作れば労働力不足の問題が解決するように説く人もいる。
 (人口動態統計に見る出生数の推移)
 しかし、出生数の動向を見れば、日本人だけで必要な労働力が足りるというのは幻想だと思う。もちろん介護や保育の待遇を改善することは大事だし、若年層を支援する政策も必要だ。だけど、今後少子化が改善したり「女性が輝く社会」が実現したとしても(その可能性はないと言うべきだろうが)、「もう遅い」のである。1970年代初頭は「第二次ベビーブーム」で一年間に200万人以上が生まれていた。その後漸減して行って、85年ころに150万を割り2017年には94万人程度の出生数となっている。外国人の養子を迎えることは少ないから、世代人口は増えない。

 今30歳を超えて結婚・出産期を向かえている世代は、第二次ベビーブーム世代の4分の3である。どんどん減っていって、2018年に生まれた世代が子どもを産むころには100万人を割る。女性はその半分だし、結婚しない人もいるし、子どものできない人もいる。何らかの政策により、この世代の女性が突然たくさんの子どもを産んだとしても、元の人口が少ないんだから人口に大きく影響しないだろう。高齢者や女性が「活躍」するといっても、建設業や長距離ドライバーはやっぱり若い男性にふさわしい仕事だろう。世の中にはそういう仕事もあって、AIなどにより働き方が大きく変わったり、報酬を大幅に上げたとしても、元々の人口が少ないんだからどうしようもない。

 「日本はいい国」だというテレビ番組がいっぱいある。「外国人観光客」はどんどん来て欲しいと国も力を入れている。そんなにいい国なら、観光で来て日本が気に入って、この国で働きたいと思う人が増えるはずだ。観光推進政策を進めているのに、どうして労働者になることだけ拒否できるのだろうか。家族が一緒で来ると「移民」になるとか、意味不明の議論ばかりしている。だから「技能実習生」という名前で来た「外国人労働者」は、乏しい給料を節約して母国の家族に送金している。安定した資格を持って働き、家族も日本に呼べたならば、彼らは日本で家を買い自動車も買うのである。日本で一定水準の消費者になってもらう方がずっといいと思うが。

 しかし日本人は「それでもいろいろ面倒」だと感じると思う。「外国人移民」というか、「日本が直面する問題を正視する」ことをしないだろう。その結果、少しずつ社会の歯車がずれて行っても、まあ仕方ないと諦める。いろんなことを諦めてガマンする様に言われて育ってきた。自分で考えて、自分でリスクをとることは避ける。こうして日本社会はゆっくりと沈んでいくのだろう。
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