2021年3月12日に第11期の中央教育審議会(中教審、渡邉 光一郎会長)が開かれ、①「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方②第3次学校安全の推進に関する計画の策定について文部科学大臣から諮問があった。「学校安全」の問題も大切だが、①で「教員免許更新制」の抜本的見直しが議論されるので、それについて書いておきたい。
文科省ホームページには、報道発表として「第128回中教審総会にて「「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」等を萩生田大臣が諮問」がある。また「中央教育審議会(第128回)配付資料」がアップされていて、非常に貴重な情報がある。細かくなりすぎるのでここでは省略するが、今まで見たことがなかった免許取得状況などが紹介されている。以下、そこにでている問題意識を紹介したい。
(萩生田文科相が渡邉中教審会長に諮問)
資料では、「趣旨である「最新の知識・技能の修得」には一定程度の効果がある一方で、費やした時間や労力に比べて効率的に成果の得られる制度になっているかという点では課題がある。また、学校内外で研修が実施されていることに鑑みれば、10年に一度の更新講習の効果は限定的である。」と書かれている。何を今さらという感じだが、全くその通りだ。「学校内外で研修が実施されていることに鑑みれば」など、「教員免許更新制」不要の証明だろう。
それに続けて、【関係者へのヒアリングの際の意見】として「教員免許更新制の課題について」が5点にわたってまとめられている。資料として全文引用しておく。
①教員免許更新制の制度設計について
教員免許状の更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある。教員免許更新制そのものが複雑である。
②教師の負担について
教師の勤務時間が増加している中で、講習に費やす30時間の相対的な負担がかつてより高まっている。講習の受講が多い土日や長期休業期間には、学校行事に加え補習や部活動指導が行われたり、研修が開催されている場合もあり、負担感がある。申込み手続や費用、居住地から離れた大学等での受講にも負担感がある。
③管理職等の負担について
教員免許更新制に関する手続や教師への講習受講の勧奨等が、学校の管理職や教育委員会事務局の多忙化を招いている。
④教師の確保への影響について
免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在していることに加え、退職教師を活用することが困難になりかねない状況が生じている。
⑤講習開設者側から見た課題等について
受講者からは、学校現場における実践が可能な内容を含む講習、双方向・少人数の講習が高い評価を得る傾向がある。一方で、講習開設者は、講習を担う教員の確保や採算の確保等に課題を感じている。
(オンラインで開会された中教審総会)
はっきり言えば、②も③も僕だけでなく多くの人が10年前から指摘してきた問題だ。しかし、それに加えて③として「免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在している」と明記されている。これも僕が起こりうる事態として書いておいたが、10年経って実際に講師などの任用に不便を来しているのである。そして「更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある」と認めている。
「疑問」などというレベルの問題ではなく、教員としての執務に問題がなかったにもかかわらず、実際に公務員として失職してしまった人が全国で何人も出た。これは「公務員」の身分の問題なので、私立学校においては「教員」としては資格喪失しても「学校職員」として雇用が継続された例もあるらしい。そんなバカげた差があるとは信じがたいことだ。このことは当初から言ってきたが、今回見直しの対象とされたことに「声は届いた」と受け取っておきたい。
今後は現場の声を集めて、より良い見直しに向けて注力する必要がある。最低でも「ミスで失職する」ような奇怪な制度はなくす必要がある。ただし、大学等で講習を受けること自体は悪いことではない。今年度はコロナ禍でほとんど大学に通うことは出来ず、オンライン講習だったと思う。来年度もそうだろう。そうすると、やり方が大きく変わってしまったことになる。しかし、大学等の講習を教員人生の中で何回か受講する意味はある。
前から「教員免許に修士(大学院博士課程前期)終了を義務づける」という議論がある。医学、薬学と並んで6年の大学学習を求めるものだが、今これを直ちに実施すれば教師を目指す人の多くが断念せざるを得ないだろう。だが、学校での指導的教員層には大学院卒が求められる時代になりつつあると思う。教員人生の中で、30代、40代になって、休職して通うのではなく、オンラインで受講できる教職大学院が増えれば、希望する人も多いのではないか。
大学院を受講中の人は、「免許更新講習」など必要ない。(大学院に提出する論文で講習に替える。)他にも代替できる講習は多いだろう。また現在の35歳、45歳、55歳で受講という回数は多すぎる。教員採用試験の受験年齢制限も高くなっている。正規教員になったら初任者研修があるんだし、年齢で切るのではなく在職年限で切る方が合理的だろう。「ペーパー・ティーチャー」や「非常勤講師」には更新は要らない。ずっと有効でいいと思う。学級担任をしたり、学校経営に関わるような教員だけ、大学で学び直すような研修がいるのだと思う。
他にもいくつもの論点があるが、現在のようなコロナ禍において通常の更新講習は出来にくい状況が続くと思う。このような見直しが検討されるということならば、今年来年などの該当教員に関しては、一端「休止」という判断もあると思う。今後も中教審の動向を注視していきたい。教員団体や教育学会でも様々な検討や働きかけが必要だ。
文科省ホームページには、報道発表として「第128回中教審総会にて「「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」等を萩生田大臣が諮問」がある。また「中央教育審議会(第128回)配付資料」がアップされていて、非常に貴重な情報がある。細かくなりすぎるのでここでは省略するが、今まで見たことがなかった免許取得状況などが紹介されている。以下、そこにでている問題意識を紹介したい。
(萩生田文科相が渡邉中教審会長に諮問)
資料では、「趣旨である「最新の知識・技能の修得」には一定程度の効果がある一方で、費やした時間や労力に比べて効率的に成果の得られる制度になっているかという点では課題がある。また、学校内外で研修が実施されていることに鑑みれば、10年に一度の更新講習の効果は限定的である。」と書かれている。何を今さらという感じだが、全くその通りだ。「学校内外で研修が実施されていることに鑑みれば」など、「教員免許更新制」不要の証明だろう。
それに続けて、【関係者へのヒアリングの際の意見】として「教員免許更新制の課題について」が5点にわたってまとめられている。資料として全文引用しておく。
①教員免許更新制の制度設計について
教員免許状の更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある。教員免許更新制そのものが複雑である。
②教師の負担について
教師の勤務時間が増加している中で、講習に費やす30時間の相対的な負担がかつてより高まっている。講習の受講が多い土日や長期休業期間には、学校行事に加え補習や部活動指導が行われたり、研修が開催されている場合もあり、負担感がある。申込み手続や費用、居住地から離れた大学等での受講にも負担感がある。
③管理職等の負担について
教員免許更新制に関する手続や教師への講習受講の勧奨等が、学校の管理職や教育委員会事務局の多忙化を招いている。
④教師の確保への影響について
免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在していることに加え、退職教師を活用することが困難になりかねない状況が生じている。
⑤講習開設者側から見た課題等について
受講者からは、学校現場における実践が可能な内容を含む講習、双方向・少人数の講習が高い評価を得る傾向がある。一方で、講習開設者は、講習を担う教員の確保や採算の確保等に課題を感じている。
(オンラインで開会された中教審総会)
はっきり言えば、②も③も僕だけでなく多くの人が10年前から指摘してきた問題だ。しかし、それに加えて③として「免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在している」と明記されている。これも僕が起こりうる事態として書いておいたが、10年経って実際に講師などの任用に不便を来しているのである。そして「更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある」と認めている。
「疑問」などというレベルの問題ではなく、教員としての執務に問題がなかったにもかかわらず、実際に公務員として失職してしまった人が全国で何人も出た。これは「公務員」の身分の問題なので、私立学校においては「教員」としては資格喪失しても「学校職員」として雇用が継続された例もあるらしい。そんなバカげた差があるとは信じがたいことだ。このことは当初から言ってきたが、今回見直しの対象とされたことに「声は届いた」と受け取っておきたい。
今後は現場の声を集めて、より良い見直しに向けて注力する必要がある。最低でも「ミスで失職する」ような奇怪な制度はなくす必要がある。ただし、大学等で講習を受けること自体は悪いことではない。今年度はコロナ禍でほとんど大学に通うことは出来ず、オンライン講習だったと思う。来年度もそうだろう。そうすると、やり方が大きく変わってしまったことになる。しかし、大学等の講習を教員人生の中で何回か受講する意味はある。
前から「教員免許に修士(大学院博士課程前期)終了を義務づける」という議論がある。医学、薬学と並んで6年の大学学習を求めるものだが、今これを直ちに実施すれば教師を目指す人の多くが断念せざるを得ないだろう。だが、学校での指導的教員層には大学院卒が求められる時代になりつつあると思う。教員人生の中で、30代、40代になって、休職して通うのではなく、オンラインで受講できる教職大学院が増えれば、希望する人も多いのではないか。
大学院を受講中の人は、「免許更新講習」など必要ない。(大学院に提出する論文で講習に替える。)他にも代替できる講習は多いだろう。また現在の35歳、45歳、55歳で受講という回数は多すぎる。教員採用試験の受験年齢制限も高くなっている。正規教員になったら初任者研修があるんだし、年齢で切るのではなく在職年限で切る方が合理的だろう。「ペーパー・ティーチャー」や「非常勤講師」には更新は要らない。ずっと有効でいいと思う。学級担任をしたり、学校経営に関わるような教員だけ、大学で学び直すような研修がいるのだと思う。
他にもいくつもの論点があるが、現在のようなコロナ禍において通常の更新講習は出来にくい状況が続くと思う。このような見直しが検討されるということならば、今年来年などの該当教員に関しては、一端「休止」という判断もあると思う。今後も中教審の動向を注視していきたい。教員団体や教育学会でも様々な検討や働きかけが必要だ。
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