年末の何かとせわしない時期に何だか書くのが面倒になる時がある。2024年はあんなに暑かったのに、今度は突然冬が来て日本海側は豪雪である。関東地方はまだ晴れているから良いというものではなく、ホントにカラカラで火事も多いしノドが痛い。あまり寒いと心も冷えてくるかも。ということで次第に毎日書くのも大変になってきたのかもしれない。
さて、前回記事で犯罪の「トクリュウ」化を通して「孤立社会化」ということを指摘した。続いて選挙の投票率に注目して、実際どのくらい減っているのか、世代ごとに見るとどうなのかを見てみたい。自治体は投票者を把握出来るので、その気になれば全年代の投票率を確定出来るはずである。しかし、さすがにそれは面倒すぎるので、幾つか抽出して調査しているらしい。2024年の衆院選に関しては、青森県の世代別投票率という画像が見つかった。左から右へ年齢が上がっていく。一番右の80代以上がグッと低くなっているが、それを別にすればおおむね年齢が高いほど投票率が高くなる。(10代は少し高いが。)
これを「若い人ほど政治的意識が低い」などと言うことが多いが、果たしてそういう理解で正しいのだろうか。戦後の衆議院選挙投票率の推移を示したのが下のグラフである。それを見ると、大きな傾向として「年代に関係なく段々下がっている」というのが判る。70%は行っていた投票率が70年頃から時に7割を割っている。やがて6割程度が普通になり、郵政解散(05年)、政権交代(09年)が例外的に高かったがそれでも7割には行かない。その後、直近4回ほどは5割台前半から半ば。グラフは2021年までだが、2024年は53.85%とまた低くなった。これは裏金問題に怒った自民党支持層がいたと思われると当時分析した。
このように全世代で下がって来ているのである。それでも高齢になるほど投票に行くのは何故だろうか。年齢が高くなるほど、「今までずっと投票してきた(党や候補者)」がいる場合が多い。選挙に関する「体験格差」が若年層との間にある。そういうこともあるだろうが、それ以上に「投票を働きかけられる社会的関係の差」が大きいのではないか。どの世代だって、特に国内政治や国際情勢に詳しい人は限られるだろう。昔の若者だって、「活動家」そのものはそんなにいなかったと思う。
だけど、「親から地域代表の自民党候補の投票を頼まれる」とか「同級生に民青(共産党の青年組織)活動家がいて電話があった」あるいは「同級生に創価学会員がいて(公明党への)投票を頼まれた」とか、ごく普通に体験していたと思う。地域の中でも「町内会」(事実上保守系の有力者がいる)、農協、医師会などの存在感が大きかった。会社で働くようになれば、労働組合に所属して推薦候補の応援をする。次第にエラくなれば自民党の党員になって会社に協力する。特にはっきりとした政治意識を持っている3分の1程度の人を除けば、4割程度の人は「立場上」とか「周囲の働きかけ」で選挙に行ってたんじゃないかと思う。
そういう投票を呼びかけてきた組織の弱体化が低投票率の原因だと思う。今は労働組合の組織率しかグラフが見つからないけど、上記画像のように、投票率と連動するかのように下がってきた。労働組合加盟者数を見ると、特に激減したわけではないが、それは近年パート従業員などの組織化に取り組んできたからだろう。そのため、加盟者数自体は少し持ち直しているが、組織率は下がっている。労働組合のない会社(福祉法人なども)が多い上、非正規労働者が多くなっているんだから当然だろう。それとともに労組に参加しない人も増えている。自民党が賃上げを求める時代に、労組の価値を感じないということか。
それでも立憲民主党や国民民主党の参院選当選者を見ると、労働組合代表がズラッと並んでいる。自民党も郵政、建設、医師会など業界代表者がズラッと上位を占める。公明党(創価学会)や共産党も個人票ではなく、組織の力で票獲得を行っているので「組織選挙」ということは同じである。25年参院選はどうなるか注目だが、少なくとも組織内候補は未だ有力なのである。組織が弱体化したと書いたばかりだが、弱体化したといっても国民の半数しか行かない選挙ではまだまだ「組織の力」は有効なんだろう。つまり、残り半数の「誰からも働きかけがない孤立層」が問題なのである。
こう考えてみると、若年層ほど投票率が低い理由が見えてくる。同級生に政治活動家がいて呼びかけられるということは今では少ないだろう。せいぜいバイトなど流動的な職に就いている程度では、選挙に関する「関係の網の目」に引っ掛からない。年齢を重ねるほど、職場や地域で何らかの社会関係が出来てきて、「あの政治家にはお世話になった」とか「あの党には頑張って欲しい」などの自分なりの「投票価値観」が作られてくる。そういうことなんじゃないかと思う。
「学校」や「職場」というのは、誰しもが一度は所属する場所だが、そういう組織と政治・行政は直結しているわけではない。その間に「業界団体」「労働組合」「協同組合」「町内会」「ボランティア団体」など「中間団体」が存在する。それらの中には近年活発に活動しているところもあるけど、少子高齢化にともなって次第に弱体化しているんじゃないだろうか。特にコロナ禍で活動を停止した後、なかなか元に戻れない地域の合唱団とか俳句結社、草野球チームなんかも多いんじゃないだろうか。メンバーはどんどん年齢が上がっていくので、次のリーダー、新人加盟者が出て来ないと、組織力が低下して行ってしまう。
やがて地域の公民館、図書館、スポーツセンターなども耐用年数が来て、施設の物的限界が来る。建て直さないといけないが、行政的には福祉予算や上下水道の維持が優先するから、あと10数年すれば地域からどんどん社会教育施設もなくなっていくんじゃないか。そうなったときにますます住民の自治力が低下してしまう。日本でも市長選などは投票率が3割程度のことがあるし、地方議会の議員確保も大変になっている。何か抜本的な対策を講じない限り、日本社会の底が抜けてしまうのではないか。
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