尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

トニ・モリスン、ピーター・フォンダ、池内紀等ー2019年8月の訃報

2019年09月06日 23時07分12秒 | 追悼
 2019年8月の訃報は、簡単に書きたい。いつもそう言いながら長くなるんだけど、今回は本当に簡単になりそう。アメリカのノーベル賞作家、トニ・モリスン(1931~2019.8.5、88歳)は、先に書いたようにこの機会に小説を読んで感想を別に書きたい。詳細はそっちで書くことにする。長いことプリンストン大学に勤務し、1993年のノーベル賞受賞時もそうだった。同時期に村上春樹がプリンストンにいて、ちょうど「ねじまき鳥クロニクル」を書いていた。エッセイにトニ・モリスンの姿が描かれている。
(トニ・モリスン)
 俳優のピーター・フォンダ(1940~2019.8.16、79歳)が亡くなった。もう「イージーライダー」の思い出に尽きる。1970年に半年以上のロードショーとなった有楽町スバル座が秋に閉館する。その記念上映に「イージーライダー」の名前も入っているから、見直してみたい。もっとも僕には「さすらいのカウボーイ」(1971)という「青春の終わり」みたいな映画の感銘も深かった。いろいろ浮き沈みのあった人生だが、ヘンリー・フォンダの子どもたちは苦労したということだ。その次はジェーンの弟と言われた。
 (イージーライダー)
 アメリカの社会学者、歴史学者で「世界システム論」を提唱したイマニュエル・ウォーラーステイン(1930~2019.8.31、88歳)が死去。まあ、そういう論が存在することは知っていたけど、読んだことはない。大航海時代以後の歴史を「世界全体が政治経済・社会的差異をこえて機能する一つのシステム」ととらえるという考え方である。フランスの「アナール派」の影響があって成立した歴史学。
(ウォーラーステイン)
 1964年の東京五輪マラソン銀メダリストベイジル・ヒートリーが死去。85歳。よく知られているように、この時はエチオピアのアベベ・ビキラが独走してローマに続く連続金メダルだった。2位は国立競技場に入ってくるまで日本の円谷幸吉だった。そして最後の最後にヒートリーに抜かれた。僕はそのシーンをテレビで見ていたのを覚えている。この劇的な逆転、そして円谷の悲劇的な生涯は幼い僕の心に深く刻まれている。ヒートリーは来年もう一回東京に来たかったらしいがかなわなかった。
 (ヒートリー)
 日本人の訃報で大きなものは少ないなと思っていたら、9月になってドイツ文学者の池内紀(いけうち・おさむ、1940~2019.8.30、78歳)の訃報が伝えられた。僕はこの人の本を特にたくさん読んできたわけでもないが、翻訳や編著が多いから名前にはずいぶん昔から接している。山の話で大雪山縦走の話を書いたけど、その時山の上まで持って行って読んでた本が、池内訳の岩波文庫「カフカ短編集」だった。ドイツ文学者といっても、まあ「ファウスト」も訳してはいるけど、多いのはウィーンの作家が多い。日本のウィーンブーム、ハプスブルク家への関心などは池内氏の影響が大きい。ちくま文庫の「ちくま文学の森」とか「温泉百話」など愛読した。このような雑学的趣味人タイプとして存在感があった。

・詩人の長谷川龍生が死去。8月20日、91歳。「新日本文学」系の詩人で、戦後詩を代表する一人。
・元ヤオハン会長の和田一夫が死去。8月19日、90歳。静岡の「八百半」をアジアのヤオハンにしたが、97年に倒産した。
・箏(そう)の奏者で文化功労者の野坂操寿が死去。8月27日、81歳。ジャズやクラシックとも共演した。知らなかったけど。
・直木賞作家の佐藤雅美(まさよし)が死去。7月29日だった。78歳。1993年の「恵比寿屋喜兵衛手控え」で直木賞受賞。これは江戸の訴訟事情を詳しく描いて興味深かった。人気シリーズもいくつかある時代作家で、つい数年前まで活躍していた。元々フリーライターで、1985年に出た最初の本、「大君の通貨」は歴史ノンフィクションとして非常に面白かった。
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