偶然、図書館で見つけた『絵とき ゾウの時間とネズミの時間』
本川達雄文 あべ弘士絵 たくさんのふしぎ傑作集
ガリバーが小人国に流れついた。から始まる話は、「体のおおきさがちがったら、
食べる量はどうかわるか」という問題に置き換えられ、いろんな体重の動物の
食事量をしらべてみる、という科学数学領域に入っていきます。
子どもの頃から、そちら方面はあまり得意ではなく、科学系の本よりも断然物語り、
お話系の本が好きなのですが。時には、数字で明確に表せるものがとても心地よいことが、
この本を読んでよくわかりました。
1日の持ち分は誰でも24時間、と決まっている時間でも、感じ方はその時その時に
よって変わっていき…、嬉しい時、楽しい時はすぐに過ぎてしまうのに、つらい時間は
長く感じたり。
でも、1分間に心臓が打つ回数や、1回息を出し入れする回数は動物によって
きちんと決まっていることが、読んでいくうちにわかります。そして、大きなゾウも、
ちいさなネズミも、体重に関係なく息を1回すってはくあいだに、心臓が打つ回数は
同じだということがちゃんと割算で導きだされ、グラフにまでなっていると、
その潔さみたいなものに、なんだかほっとしてしまいます。
そうか、そういうふうに、生きてる動物はみんな同じ規則性の中に含まれていたんだ、と
感心しながらページを繰り、最後から数えて3場面目。海に沈む夕陽をゾウと少年と
ネズミがみている場面、こんなことが書かれています。
「小さい動物は、短い一生を全速力でかけぬけていくんだね。
大きい動物は、ゆっくりのんびり生きていく。短くても、長くても、
一生を生きぬいた感想は、あんがいおなじかもしれない。
ネズミは早く死んでかわいそうだなんてことは、ないんじゃないかな。」
最後から2場面目、最後の見開きは文章がないので、本文としては最後になる
文章は…。
「ネズミにはネズミの時間。ネコにはネコの時間。イヌにはイヌの時間。
ゾウにはゾウの時間。動物たちには、それぞれにちがった自分の時間がある。
それぞれの動物は、それぞれの時間の中で生きている。」
とっても科学的な本なのに、読み終わると、まるで詩を読んだあとのような気持ちが
残ります。不思議で、忘れられない本になりました。
私には私の、私のからだに見合った時間があり、その時間をかけて「一生を生きぬく」
ことを大切にしなければ、と思います。