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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

どんなかんじかなあ

2007-06-08 18:56:07 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 今日は、2ヶ月半ぶり、今年度に入ってはじめての「開き読み」の当番の日でした。

 行ったのは5年生の、娘の居るクラス。しかも担任の先生は、この図書ボランティアを
立ち上げた方なので‥久しぶりに緊張しました。
 娘は、自分のクラスに来るときは、自分の知らない本を読んでね、と言うので、本選びの
段階から練習まで、こそこそこそこそ。本もずっと事務所の机に隠しておきました。
(でも、結果的には、2冊とも娘の知っている本を読んでしまったのですが…)
 

 
 迷った末、1冊目はこの絵本にしました。
 

  どんなかんじかなあ
      『どんなかんじかなあ』
      中山千夏 文  和田誠 絵

 
 前に家では読んだことがあるので、娘は「なんだあ」と思ったかもしれないのですが、
それを承知の上で、この絵本は選びました。
 何週か前に、5年生は「総合学習の時間」で、アイマスク体験というのをしていたからです。

 目が不自由とはどういうことなのかをすこしでも知るために、二人ひとくみになって、
一人がアイマスクをして、もうひとりの声を頼りに、廊下を歩いたり、階段を下りたり…。
そのときの不安な気持ちやどきどきが残っているうちに、自分とは違う状況を想像してみること、
思いを巡らせてみることの大切さ、みたいなことを伝えられたらなあと、思いました。

 この『どんなかんじかなあ』は、表紙に描かれているひろくんが、自分とはちがう状況にある
ともだちのことを、「それって、どんな感じがするのかなあ」とイメージし、そして
少し近づいてみるために、たとえば、目を閉じてみたりするのです。


  ともだちの まりちゃんは めがみえない。

  それで かんがえたんだ。
  みえないって どんなかんじかなあって。

  しばらく めを つぶっていたら わかるかもね。
  うん、めを つぶっていてみよう

 

 しばらく目を閉じていたことで、ひろくんには新しい発見がありました。色々な音があふれかえって
いることに気がついたのです。だから、驚いて目を開けたひろくんは、まりちゃんにこう言います。


  「みえないって すごいんだね。
  あんなにたくさん きこえるんだものね。
  みえるって そんだね。
  ちょっとしか きこえてないんだものね」



   …    …   …   …   …
 
 

 基本的に私は、絵本は個人の楽しみのために存在すると思っているので、絵本を「利用」して
何かをわかりやすく伝えようとしたり、ある種の考え方を説こうとしていたりする、そういう
匂いがすこしでも感じられるものを、手にしてみることはあまりありません。

 左側のはじが「道徳」という項目で、右側のはじが「アート」という項目なら、私の中の
「絵本ものさし」は真ん中より、だいぶ右に寄っているのです。

 『どんなかんじかなあ』は、そんな私の「ものさし」では、ぐーんと右に寄っています。
 中山千夏さんの口馴染みのよいテキストに、和田誠さんの絵が、とてもよく合っていて、
「どんな感じかなあ」の世界に自然に、無理なく入っていくことができるのです。


 絵本を1冊読んだことで、賢くなったり、勉強になったりすることは、あまりないかなあと思うし、
そういうことに絵本を「使って」はもったいないし、絵本に対しても失礼かなあと感じています。
 だから、うまく言えないけど、『どんなかんじかなあ』で、学習してもらう必要は全然なくって、
ただ、いろんなことを、自分の枠の範囲を越えて、想像していってもらいたいなあと…それだけを。

 まず、思ってみること(想ってみること)が、すべてのはじまりだと思うから。




 ※2冊目の本の話は次の巻にします。









 

コメント (6)
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