母が前売り券をくれたので、昨日「母べえ」を観に行ってきました。
映画を観るのは好きな方だけど、娘が産まれてから、本当に数えられる
程度しか映画館に行っていないので、どんな映画を観ても大抵泣いてしまいます。
(娘と行った、ハム太郎やポケモンでも、結構じわってきたりうるっとしたり
してました‥)
母べえは、その時代設定と、タイトルからして「母」というところで、
もう絶対に自分は泣いてしまうだろうなあと思っていました。
そして、予想通り、始まって5分くらいのところでもうハンカチ取り出しました。
映画にはいろんな「見所」があるし、観る側もどこにポイントを置くか、
によって感じ方は様々になってきますが。これは、間違いなく
「吉永小百合さんのための」映画で、そしてそれがちっとも嫌じゃないと
思える映画でした。
ほんとうのお年は知りませんが、役がらでは、9歳と12歳の子の母なのです、
吉永さん。違和感はありませんでした。ほんとうにきれいだし、若々しいし、
やさしいお母さんなんです。
この話の中で重要な役柄は、父べえの教え子にあたる「山ちゃん」。
父べえが、治安維持法で逮捕されてしまったあと、野上家を訪れ
精神的にも、具体的な面でも、母べえと娘2人の支えとなる人です。
山ちゃんと母べえの間に生まれる信頼関係は、山ちゃん側では
せつない恋心と重なっていくのが、観ている側にはよくわかりますし、
母べえにだって、その気持ちが嬉しくないはずはないのに‥。
でも決して言葉にはできない、その二人の気持ちの揺れが
私に、ずっーと以前に観た、この映画を思い出させました。
外科室 というタイトルで、主演はやはり吉永さん。
お相手の外科医役を演じたのは加藤雅也さんです。
この映画の中では、吉永さんは伯爵夫人。小石川植物園で、ある日見かけた
男性と恋に落ちます。(それが加藤雅也さん)
恋に落ちたといっても、二人は遠くから見つめ合うだけで、互いに一言も交わしません。
それでも、互いが互いを好きになってしまったということはわかるのです。
その後、御夫人は心臓の手術を受けることになり、その執刀医が恋しい若者だと
いうことを知ります。そして、お願いだから決して麻酔をかけないでくれと
夫や病院関係者に頼むのです。(うわごとで好きな男性の名を言ってしまうかもしれないから)
麻酔をしなければ、手術はできるはずもなく、けれどなぜ御夫人が麻酔を拒むのかを
知っている執刀医は、悩みに悩みます‥。
この映画の中での吉永さんは、明治時代の伯爵夫人なので
着ているものも違うし、抱いている思いだってまるで違います。
けれども、自分の気持ちを口に出して伝えることができないという点では、
どちらの女性のせつなさも同じです。
一緒にこの映画を観た娘rが、夕方自転車に乗りながら、どうして父べえが
逮捕されたのか、そこがわからないと言いました。
私はもちろん、知っている知識を総動員して、その時代背景や日本の歴史を
話しました。もうすこし大きくなって、そのあたりのことを詳しく学ぶ時に、
ああいつか映画で観たなあ、と思い出してくれたら、とも思いました。
でも。
それよりも、もっともっと先、彼女がいくつぐらいになった頃かな。
山ちゃんがお別れの挨拶をしにきたとき、母べえが、思わずその手をとった
場面を思い出して、そんな話ができたらいいなあと思ったりしています。