はい。またまた「つるばら村」のお話です。
今度の家具屋さんのお話からは、挿絵の方が柿田ゆかりさん
という方に変わり、舞台もくるみさんの「三日月屋」から、
青木林太郎の営む「青木家具店」に変わります。
林太郎さんのご家族は、奥さんの美樹さんと、5歳の幹太
(かんた)君です。
ほんとはいけないことなんでしょうが、私 先に、あとがき
を読んでしまったのです。挿絵が変わったことに何か理由が
あるのかなあ、なんて思って。そしたら、とっても素敵な
エピソードを、知ってしまいました。本文は、本文でもちろん
すごく楽しいファンタジーに仕上がっているのですが、
あとがきは実話なので、「ほんとうの重み」の分だけ、
もしかしたら、いい話かもしれません。
それは、青木林太郎さんのモデルとなった、岩手、岩泉町の
家具屋さん、工藤宏太(こうた)さんとの出会いのきっかけ
となった話です。
工藤さんが、クリの木を丸太で買い、製材したところ、
中から子グマのミイラが出てきたという記事が、インテリアの
情報誌に載っていて。茂市さんは、工藤さんの工房を尋ね、
詳しい話を聞いたそうです。(以下カッコ内はあとがきからの
写しです)
「木の幹に、枝のつけ根が腐ってできた穴があり、その穴に、
どうしたわけか、子グマが入って出られなくなってしまった。
そうして、幹が成長するにつれて穴がふさがり、その結果、
子グマは、木の中に閉じこめられてしまったらしいのです」
「穴の外側の年輪から推定して、子グマは、クリの木の中で、
百年あまり眠っていようです」
「クリの木は、タンニン分が強く、それが防腐剤の役目を
はたしていたのだろうといいます」
このお話を工藤さんから聞いて以来、茂市さんの木に対する
見方が変わったそうです。
クリの木が、かわいそうな子グマを、だれか心やさしい
人が見つけだしてくれるまで、まるでおなかの子どもを
いつくしむ母親みたいに、幹の中にいだきつづけたように
思ったのでした。
さらに、工藤さんについても、
「工藤さんは、無垢の木をなるべく切り刻むことなく、
樹齢三百年の木は、家具になってさらに三百年生きるようにと、
家具を作っています。」と書いてあります。
ね。素敵な話、素敵な家具屋さんですよね。
こうして、生まれた「青木家具店」のお話も、つるばら村の
自然の中で育まれた木と、その木に対する人たちの思いを、
存分に生かしています。
この本に出会ってから、(今さらですが)私の、木と、
その木から生み出されたものに対する見方が変わってきたのを
感じています。
『つるばら村の家具屋さん』
子グマのお話はこちらです。
『クマのたんす』
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