ブルックリン・フォリーズがとてもおもしろかったので、続いて、オースターのこの本を
図書館で借りました。
文庫版もあるようで‥文庫の方はこんな表紙です。同じ内容が書かれているにも
かかわらず、表紙から受ける印象はだいぶ違いますよね?
私は、上のハードカバー版を読んだのですが、キーパーソンとなる
失踪した映画スター、ヘクター・マンを表紙の「白い男」は表していたんだなーと
読み終わってみればわかります。
文庫版の方は、終盤、主人公が辿り着く「ある場所」を表しているのでしょうかー。
***
とても緻密で、とても入り組んでいて、とてもうまい小説だなあと思いました。
英語で書かれた話を、日本語訳で読んでいるのに、文章はとてもスムーズに
流れていくのです。(訳者の力なのかな‥)
原題は、The Book of Illusions 邦題は、幻影の書。
「幻影」という日本語だと、単数で、幻影は「ひとり」のようですが、
イリュージョン「ズ」と、複数になっているところがポイントかなと思っています。
そう、物語は、飛行機事故でいっぺんに妻と二人の子どもを失い
「死んだように」生きている主人公や、死んでいるのか生きているのか
わからないヘクター・マンという俳優や、彼が作ったシナリオの中で生きている
人々や、単なる物語中の登場人物に過ぎなかったはずの人が、その後の運命を
示唆していたりと、1冊の本の中に、多くの「イリュージョンズ」が満ちているのです。
読者である私は、劇中劇の巧みさに驚き、入れ子のようになっている構成に
感心させられ、両側に鏡が貼られている部屋の真ん中に立たされているような、
デジャブを見せられているような気持ちになりながら、振り切られないように
しっかりとつかまって、最後まで読みとおした、というような気持ちでいます。
主人公は、物語の最初から悲惨な状況に置かれているし、失踪した俳優が出演した映画は
とても興味深いし‥そういうところにいちいち立ち止まったり、振り返ったり、わき道にそれたりも
してみたくなりますが、そんなことをしていると、この物語そのものに、おいていかれる予感が
大きかったので。
疾走感というのとは、ちょっと違うかもしれないし、達成感とまでは言えないかも
しれないけど、オースターの小説がまた読みたくなるのは、おいていかれそうだったけど
ぎりぎりでついていかれた、おもしろいと思えてよかった、という、この「あとあじ」なのかな
と思います。
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