おススメ度 ☆☆☆☆
「長江哀歌」以来、7年ぶりに長編を手掛けたジャンジャンクー監督、再びカンヌで脚本賞を得ている。
本作は、まったく異なる4つの物語のオムニバス映画。
モチーフは、現代中国社会の泣き所、殺人で表現される。
その時々の殺人場面は鮮烈。ジャンクーの新境地だ。
だが、その殺人の背景は、貧富の格差だ。
中国が抱える、今最大のテーマだ。
解決策はあるのか。
この映画は、殺人者の側から描いているので、動機というか、そこに至る様々な社会のひずみが語られる。
一方で、描かれる背景は、今の中国の象徴だ。PM2・5とおぼしき靄のかかった都会の風景。整然と並んだ団地。
地方も変化してきている。だが、ここにも公害が、そして描写される工場の現場。人件費を切り下げたセミオートマの大きな工場。
長江のその後の廃墟と船着場。
一方、不夜城と目される近代的な娯楽設備。
賄賂、強盗、売春、ひずんだ社会は、富める者のおごりを産んでいる。底辺はさらに底辺へ。
所々挿入される、京劇などのお芝居。そこでも監督の意図は語られる。
中国も、銃社会。(一般の市民も銃保持が可能なのか?)
そして規則に縛られる。
恋愛もままならない。出稼ぎ。そこにも差別が。
一見単純なテーマの映画だが、描かれている内容は奥深い。
自由に描けない中国での精一杯の表現か?