MAKIKYUは今月初めに八王子・五日市周辺を訪れる機会があったのですが、その際には八王子周辺や奥多摩エリアで路線バスを運行する西東京バスを利用する機会があり、その中でも他に類を見ないトレーラーバスにも乗車する機会がありましたので、今日はこのトレーラーバスに関して取り上げたいと思います。
トレーラーバスは戦後まもない1950年頃には、日本でも各地で運転されていた様で、国内の主だったバス事業者の過去を取り上げた写真などを見ると、この年代のバスとして取り上げられる事も多いですので、存在自体は知っている方も多いかと思います。
1950年頃には各地で走り回ってトレーラーバスも、構造上運転席と客席が分離される事から、車内で運賃収受を行うワンマン運転には適さない事や、異常時の迅速な対応が困難な事などもあって、その後日本では姿を見る事はできなくなっていました。
しかし近年では東京都日の出町が、観光用に機関車型のトレーラーバスを導入し、「青春号」という名称で西東京バスに運行委託し、武蔵五日市駅(あきる野市)~つるつる温泉(「青春号」の名称もこの温泉施設の「生涯青春の湯」と関係がありそうです)間の路線バスとして運行を行っていますので、首都圏に居るのであれば、乗車も比較的容易になっています。
この機関車型トレーラーバスは、排ガス規制エリアの東京都内に使用の本拠を置いている事もあって、当初導入された車両は昨年引退し、現在日の出町内に保存されていますが、極めて高額な特別仕様の車両であるだけに、地方への転出などは出来なかったものか…と感じてしまうものです。
(機関車型の形態だけに、これで未完線の路盤でも走らせれば相当な話題性がありそうですが…)
そのため現在では昨年登場した2代目の「青春号」が活躍しており、MAKIKYUが先日乗車したトレーラーバスもこの車両ですが、こちらは排ガス規制への適応は勿論、被牽引車の扉付近はワンステップ構造とし、車椅子での乗車にも対応するなど、バリアフリーの面でも配慮されています。
とはいえトレーラーバスの構造上、タイヤ部分はかなり車高が高くなる事は否めず、レトロ調の内装が特徴的な客室内は、扉付近を境に、2人がけの前向き座席が3列並ぶ前部(牽引車側)は3段、3方シートとなっている後部も2段のステップを上がる構造となっており、被牽引車の前部は出入口から数えて4段ものステップを上がる必要がありますので、乗降性は決して良いとは言えません。
また連接バスなどと異なり、最前部の運転席と2両目の間は行き来できず、ワンマン運転による運賃収受は不可能な事もあって、被牽引車にも運賃収受などを行う車掌が乗務し、ツーマン運転を行っており、発車の際にブザーを鳴らしている事や、牽引車と被牽引車それぞれで別の登録番号を持っている事などは、このバスならではと言えます。
こんな状況ですので、一般的に路線バスとしての使い勝手を考えると、経済的にはどう考えても…という状況で、その上武蔵五日市駅~つるつる温泉間の路線バスは山間部を走り、一部区間は自由乗降区間(停留所以外の箇所でも乗降可能な区間:過疎地の路線バスでは比較的よく見られ、東京都や神奈川県などでも幾つかの路線が該当します)であるにも関わらず、この車両が充当される便では自由乗降区間でもその取り扱いを行わないなど、利便性の面でも難ありと言えます。
ただ使い勝手や利便性の面では難あり、その上運転には大型2種免許の他に、牽引2種免許(所持者は極めて少なく、大型2種持ちのMAKIKYUもこの免許は持っていません)も必要となりますので、運転者が限られると言う問題も生じるこの車両も、幼稚園バスなどでよく見かけるただの「機関車型バス」ではなく、トレーラーバスという特殊な構造を採用している事で、他に類を見ない極めて個性の強い車両に仕上がっているのは事実です。
地域の足を兼ねながらも、観光用としてのウエイトが高い事などを考えると、その存在自体を一見するだけでも大きな価値があると感じますし、一般の路線バスとは全く異なる乗り心地も、このバスに乗車するためだけに一度足を運んでも…と感じる程でした。
そのため「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様にも、五日市線沿線(起点となる拝島へは、都心からも西武線を利用すると比較的割安に到達できます)などを訪問する機会がありましたら、是非一度試乗をおススメしたい車両です。
とはいえ極めて高額で特殊な車両故に、当然ながら1台のみの存在で、つるつる温泉が定休日となる火曜日は運休、またそれ以外の平日も専ら午後からの稼動(土休日は午前中の稼動もあります)となるなど、運行ダイヤが限られるのは難点で、突発的な故障などの場合は、一般車両による代走となる事もある様ですので、この点も要注意です。
写真は青春号の外観(機関車型の特異な外観だけでなく、前後で異なる登録番号にも注目)と、その車内の様子です。