もう一月ほど前の事になるのですが、MAKIKYUが先月初めに青春18きっぷを使用して関西方面へ出向いた際には、豊橋で一旦途中下車して市内を走る豊橋鉄道の路面電車にも乗車する機会がありました。
その際には昨年暮れから走り始め、「ほっトラム」の愛称が付けられている最新鋭の低床電車・T1000形にも乗車する機会がありましたので、取り上げたいと思います。
この車両は最近国内各地の路面電車で登場している低床電車の中でも、海外製車両やそれをベースとしたものではなく、海外勢が進出する以前から国内各地の路面電車製造(以前は私鉄電車なども製造していました)を手がけていたアルナ車両(旧アルナ工機)の低床路面電車「リトルダンサー」の一員です。
リトルダンサー自体は国内の幾つかの都市で既に導入実績があり、MAKIKYUもその幾つかには乗車していますが、リトルダンサーも初期に導入された車両などは部分低床車が多く、その中には極めて特異な形態の車両も存在している事で知られています。
ただ比較的最近登場した車両の中には全面低床車も登場しており、ほっトラムはリトルダンサーの狭軌(軌道幅1067mm)用車両では初の全面低床車である事も大きな特徴となっています。
(国内で他に全面低床車が導入されている狭軌線区は、富山ライトレールなど幾つかありますが、これらは海外製車両をベースとした車両です)
また豊橋鉄道の軌道線(路面電車)は、最近親会社の軌道線廃止に伴い、こちらで用いられていた車両の中で比較的新しい車両の一部が移籍し、この車両が主力となる事で老朽車の淘汰を進め、車齢の若返りを果たしていますが、現在運行中の他車両は全て他社から転籍の単車であるのに対し、「ほっトラム」は現在運行中の車両では唯一の自社発注車(同社では鉄道線も現在は首都圏からの移籍車のみで占められています)で、その上3車体連接車となっている事も大きな特徴です。
車内に足を踏み入れると低床電車だけに、車輪や機器の配置上発生する出っ張り部分にクロスシートを配し、この部分は床が段上げされているなど、低床電車ならではの苦心点が見受けられます。
内装も化粧板こそアイボリー無地でシンプルな印象を受けるものの、天井やドア脇の部分などに木目を多用しているのが特徴で、シンプルな内装の車両でも、アクセントになるモノが何かあると随分見栄えするものと感じたもので、この内装を見ると、安っぽく貧相な印象が否めないJR某社の「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、この車両のパーツを多用した電車などの低コスト型車両も工夫次第で随分見栄えする様になるのでは…と感じたものでした。
この「ほっトラム」は現在1本のみの導入で、導入コストが極めて高額な事や、車両構造上の問題もあって日本一急な曲線が存在する運動公園発着の電車には充当できないなどの問題もあり、その上近年親会社から転籍した車両などは比較的新しくまだまだ耐用年数に達しないだけに、当面は少数派としての活躍が続く可能性が高いと思われます。
しかしながら比較的小規模ながらも近年豊橋駅前における路線延伸(僅かな距離ですが、JRや名鉄からの乗り換えの利便性が格段に向上しており、意義は大きいです)を果たすなど、超大手自動車メーカーのお膝元故に車社会と言われる愛知県にありながら、健闘している豊橋鉄道市内電車の存在感を顕示するには格好の存在と言えます。
ほっトラムは運用上の問題もあり、現状では使い勝手の面で今一歩の感もありますが、今後豊橋鉄道市内電車のイメージリーダーとして末永く活躍する事を期待すると共に、豊橋鉄道で活躍するもう1つの低床電車(当初導入された路線での活躍年数は指の数程度…という有様でしたが、第2の地で活躍する姿が見られる事は救いです)の如く、導入から僅かな期間で活躍の舞台を移す事がない事を願いたいものです。
(名鉄の起終点となっている都市は名古屋を挟み、南北で路面電車に対する取り組みは全く対照的で、路面電車が見直されれている今日の状況も踏まえると、一方の有様は余りに…と感じてしまうのはMAKIKYUだけでしょうか?)