先日豊橋鉄道の路面電車で活躍する3200形電車(親会社での形式はモ580形)に関して取り上げましたが、この車両とほぼ同時期に製造され、豊鉄の親会社が運行する路線で共に活躍していた車両の一つに、モ590形と呼ばれる車両があります。
この車両も一部は昭和末期に廃車となっており、こちらはその少し前に豊鉄に移籍した形式の様な譲渡も実現していないものの、この時に廃車を免れた車両は近年まで活躍を続けており、その一部は冷房化改造も施されていました。
ただ2005年に活躍していた路線自体が廃線となり、小型車による軌道線という特殊性もあって、VVVFインバーター制御車を含む比較的新しい車両ですら、自社内に転用路線がなく書類上は一旦廃車の扱いとなる程(とはいえ経年の浅い車両は豊鉄をはじめ、グループ会社で第2の活躍の場を得ている事は幸いですが…)でしたので、この時点で車齢50年近くになる590形は路線と運命を共に…と思っていたものです。
しかし590形の中でも冷房化改造を施された車両は、書類上は一旦廃車扱いになっているものの、冷房車であった事も幸いして、車齢50年近くにもなる車両にも関わらず譲渡先が見つかり、今も非冷房車を多数抱えている土佐電気鉄道(土電)に引き取られて、中京圏から遠く離れた四国の地で第2の活躍をしています。
(余談ながら590形は非冷房のまま路線廃止まで活躍した車両も解体は免れ、他の用途不要となった一部の旧型車と共に保存されています)
MAKIKYUも2月に四国を訪問した際には、高知駅~桟橋通五丁目間を走る桟橋線でこの車両に遭遇し、行先表示がLEDとなっている点などは少々印象が異なると感じたもので、他に使用しない一部扉の埋め込みも行われているなど、土電への転用にあたっては多少の改造が施されています。
とはいえ真っ赤な装いをはじめ、内装も概ね原型を留めており、ドアステッカーまでそのまま使われていた程ですので、中京圏で活躍していた頃(この頃にもMAKIKYUは一度だけ乗車した事があるのですが…)の雰囲気を強く留めており、往時の雰囲気のまま走らせる辺りは、一時期外国の電車を幾つも買い集めた会社ならではと感じたものです。
また土電では今年に入ってから同社バスや、県内に幅広く路線を持つ高知県交通の路線バスと共にICカード乗車券「ですか」を導入し、これに伴って異彩ぶりが際立つ外国電車はICカードシステム対応から除外された事もあって、営業運転から遠のいている程(一部は今でも稼動可能な状態になっており、イベント時や貸切での運転には対応できる模様です)ですが、590形は土電従来車とは趣の異なる少数派の異端車ながらも、ICカードシステムにも対応して第一線で活躍しており、外国電車の定期的な活躍が見られず、やや単調な印象になりがちな今日の土電にあって、異彩を放つ存在にもなっています。
590形は土電に移籍してから数年の活躍年数も含めると、活躍年数は既に50年を超えた古豪ですが、非冷房車もまだ結構な数が走っている中で冷房車である上に、内装が綺麗と言う乗客の声も聞こえた程ですので、土佐の地での評判は悪くない様です。
第2の地での活躍は暫く続きそうですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も土佐の地を訪問される機会がありましたら、是非一度590形に乗車してみてはいかがでしょうか?