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JR九州のSL列車「SL人吉」号(2)~車内は最近のJR九州らしく…

2010-06-22 | 鉄道[九州・JR]

今月MAKIKYUが乗車したJR九州のSL列車「SL人吉」号ですが、この列車に用いられる客車は、国鉄末期~分割民営化直後に全国各地のJR線におけるローカル列車で大活躍したものの、近年ではローカル列車の新系列車両導入や、これに伴うワンマン運転実施に伴って次々と運用離脱し、近年では殆ど乗車機会のない50系客車が用いられています。

今日では現役で稼動する50系客車自体が、非常に希少な存在となっており、中にはほぼ原型を留めた状態でSL牽引列車に用いられる車両も、関東地方の第3セクター鉄道に存在していますが、「SL人吉」号で用いられる50系客車は、以前運行していたSL列車「SLあそBOY」号運行時に大改造された車両ですので、外見だけに留まらず、車内も50系客車の原型とは大きく異なるものとなっています。

この50系客車改造車は「SL人吉」号運転開始に合わせ、大規模な改装を施しており、「SLあそBOY」号時代とはまた異なった雰囲気になっている模様(MAKIKYUは残念ながら「SLあそBOY」号時代には乗車した事がありません)ですが、最近のJR九州らしく、某デザイナーが手がけた車両の典型的特徴が随所に現れています。

3両の客車は4人掛けのボックス席を中心に、2人掛けの座席も混在する座席配置となっていますが、3両全てが普通車と言う事もあって、設備的にはどの車両もほぼ同等のもので、通路部分の天井には牽引機関車の形式にちなんだ「86」を模った装飾が幾つも見られる点が特徴的です。

  
内装は使用する木材の材質や色彩を1両毎に変えており、人吉方の客車が最も明るい印象を受け、熊本方の客車は重厚な印象を受けるものであるなど、編成内でも変化が見られる点は興味深いものです。

人吉方の1両以外は色彩の関係で写真が撮り難く、車内の様子を撮影するだけでなく、SL乗車の記念にその様子を撮影…といった場合にも不都合なのは頂けないと感じたものです。

また3両の客車それぞれで色彩を変えるだけでなく、各車両を2つに仕切り、座席モケットを前方と後方で変えることにより、僅か3両しかない客車内で、6通りものインテリアが見られるのは、デザイナーの拘りを感じる所ですが、その座席モケットも革張りや市松模様を用いたモノが幾つも見られる辺りは、JR九州の列車ならではといった所です。

ただ座席はモケットに拘りが感じられ、木材をふんだんに用いた座席フレームなども特徴的とはいえ、「SL人吉」号は快速列車の普通車扱いという事もあって、全席指定席で指定席料金が別途必要になるとはいえ、設備的にはさほど豪華なものではなく、居住性よりも雰囲気重視といった印象を強く受けるものです。


座席自体の座り心地は決して悪いものではないのですが、ボックス席主体の座席配列は、約半数の座席が進行方向と反対側になってしまう事に加え、座席形状や配置の関係で2人掛け席でも足元はさほど広くなく、4人掛け席で反対側に相席の乗客が居ると…というのが現状です。

4人掛け席には観光列車らしく、かなり大きな木製の固定式テーブルが装備されているのですが、このテーブルは床との間に大きな柱もありますので、MAKIKYUが乗車したのは2人掛け座席の窓側で実害がなかったものの、4人掛け座席の通路側は足元がかなり狭くなります。

そのため出来れば当たりたくない座席になっているのは頂けない所ですが、SL人吉号は人気が高い上に、座席数も決して多くないですので、座席指定を押さえる事自体が難しく、この座席でも指定席券が確保できるだけ良いと考えた方が良いのかもしれません。

こんな座席ですので、座席に座ったまま熊本~人吉間を乗り通すともなれば、SL列車ならではの遅さもあって片道2時間以上を要し、いくら快速列車といえども決して快適なものではありませんが、車内は中間車両の物販スペースをはじめ、両端車両には展望室が設けられるなど、自席以外の空間が充実しているのは大きな特徴で、長時間乗車でも決して飽きることがありません。


展望室は客室内と同様に、人吉方と熊本方で内装を造り分けている点に加え、最前部には大人が座るには小さ過ぎる椅子が置かれている辺りも、デザイナーの拘りが見られますが、その気になれば余程大柄な人物でなければ大人でも座れない事はなく、特等席だけあってこの椅子に座る大人の乗客の姿も散見したものでした。
(MAKIKYUも少しだけ試しに座ってみたのですが、子供がやってきたら「子供優先」にしてあげたいものです)

そして「SL文庫」と称する本棚(棚には乗客が車内で自由に閲覧できる本が置かれています)が設けられている辺りも、最近の某デザイナーが手がけた列車ならではの特徴と言えますが、本棚の制約もあって文庫の内容は…と感じたのは惜しい所です。


また車内だけに留まらず、途中停車駅で敢えて余計に停車時間を確保し、一旦ホームに下りる事が出来る様になっている事や、車掌以外に複数の客室乗務員が乗務し、様々な案内を行う辺りも、観光列車ならではの計らいと感じたものでした。

「SL人吉」号は数々の観光列車を走らせ、大成功を収めているJR九州の中でも大目玉的存在の列車だけあり、数々の観光列車の集大成といった印象を受けたもので、車内設備だけを見れば決して良いとは言い難い面もあるものの、観光列車としての完成度はかなりのモノと感じたもので、SL牽引列車でなくてもそれなりに楽しめるのでは…と感じた程です。
(以前JR九州では「SLあそBOY」号の機関車不調時に、ディーゼル機関車牽引による「ディーゼルあそBOY」号を運行した事がありますので、SLが稼動できない時等に「ディーゼル人吉」号でも走らせると面白いかもしれません)

JR九州の観光列車は、MAKIKYUが今回乗車した「SL人吉」号や、2月に乗車した「海幸山幸」号をはじめ、他に類を見ない独特な列車が数多く、MAKIKYUもその幾つかには乗車していますが、特徴的な車両や車内設備だけに留まらず、客室乗務員による案内などの取り計らいも評価できるものです。

九州では来年九州新幹線の全通を控え、今後も更に観光列車の充実が図られる事になると思いますが、今後の展開にも期待すると共に、機会があればまだ乗車していない観光列車にも…と思ったものでした。