今月MAKIKYUが熊本県南部の人吉まで出向き、「SL人吉」号乗などに乗車した際には、他にも様々な列車に乗車する機会があり、その一つがキハ40系列の気動車を改造した「いさぶろう・しんぺい」号用改造車です。
「いさぶろう」号・「しんぺい」号は肥薩線の中でも運行本数が極めて少なく、ループ線やスイッチバックが存在する険しい山中を走る事でも知られる、県境超えの人吉~吉松間を走る普通列車です。
2004年の九州新幹線以降、普通列車ながらも観光列車としてキハ40系列の気動車を改造した専用車両が充当され、定期普通列車ながらもほぼ全席が指定席と言う異色の列車としても知られています。
運行開始当初はキハ140形1両での運転でしたが、予想を超える大評判もあって直ぐにキハ47形1両が追加改造されて2両編成となり、MAKIKYUもこの2両編成で運行している時に一度「いさぶろう」号に乗車した事があります。
昨年には「SL人吉」号運転日の多客対応や、検査時の予備車両確保も兼ねてキハ47形を改造し、3両目の改造車が登場しており、当初1両だけしか専用車を用意していなかった「いさぶろう」号・「しんぺい」号がここまで繁盛する事を予想していた方は、殆ど居られないかと思います。
2両目以降の改造車は、必然的に複数両数での運行となる事や、改造の種車も単行運転可能な両運転台車に比べ、2両以上での運転が必須となる片運転台車の方が確保しやすい事もあって、片運転台のキハ47形が充当されています。
2両目の改造車は急遽改造した事もあってか、工期短縮もあってキハ140形改造車(当初からの「いさぶろう・しんぺい」号用車両)の大きな特徴だった、車両中央部フリースペースの窓サイズ拡大は行われておらず、外見は装いを除くと、一般のキハ47形と大差ないものとなっています。
昨年登場した3両目の改造車も同様ですが、こちらは車椅子対応トイレを装備しているのが特徴で、車内の雰囲気は既存車両と若干異なるものになっています。
車内はJR九州の観光列車らしく、木材を多用した非常に特徴的なものとなっており、雰囲気はなかなか良いものですが、「いさぶろう」号・「しんぺい」号は共に普通列車の普通車扱いだけあって、座席はボックス席を主体としたモノになっています。
4人掛けのボックス席は窓割の関係もあり、殆どの座席でシートピッチは一般のキハ40系列と変わらず、決して広いとは言い難い状況にあります。
(中には3両目改造車の運転席近くの様に、シートピッチが広い当り区画も存在していますが、逆にドア付近の2人掛け座席などに外れ区画も存在しています)
その上真ん中に大きなテーブルが置かれており、下に脚がある事もあって、ボックスの4席全てに乗客が座った場合は、狭さが否めないのが現状ですが、脚位置は真ん中辺りと言う事もあって、通路側の座席だけが極端に外れと感じる「SL人吉」号の座席に比べると、座席位置による格差は軽減されています。
4人掛けのボックス席などは、定期運転の普通列車にも関わらず、「いさぶろう」号・「しんぺい」号では指定席となっており、乗車券の他に指定席券が別途必要になります。
MAKIKYUも以前に一度「いさぶろう」号に乗車した際には、指定席券を購入して乗車したものの、座席のグレードや乗車区間を考えると、余程の混雑時以外は別途指定席券を購入する程の価値はあるのか…と感じてしまったもので、「いさぶろう」号・「しんぺい」号の指定席料金は、設備に対する付加価値よりも、超閑散区間の維持貢献費用と考えた方が良いかもしれません。
また「いさぶろう」号・「しんぺい」号ではほぼ全席が指定席とはいえ、定期運転の普通列車扱いで、それも「いさぶろう」号・「しんぺい」号は列車本数が極めて少ない区間に設定されている事もあり、地元住民の利便性などを考慮して、完全な「全車指定席」ではなく、JR九州の観光列車らしく車内随所に設けられたフリースペースへの立席乗車などの形で、普通乗車券のみでの利用も可能となっています。
普通乗車券のみで「いさぶろう」号・「しんぺい」号を利用する場合も、僅かながら座席が用意されており、キハ140形(吉松寄り先頭車)の吉松方にある木製ベンチは地元客優先の案内が行われているものの、ここは座席位置的には最高なのでは…と感じるものです。
(その代わり「木製ベンチ」だけあって座り心地はおススメできるものではなく、長時間乗車には不適なのは言うまでもない事です)
2両目・3両目の改造車(キハ47形)にも、ロングシート配置の自由席が僅か(1両当り1桁の座席数)に設けられており、こちらは利用した事がないものの、2両目の改造車の座席は余り感心できる雰囲気ではないと感じたものです。
しかしながら最近登場した3両目の改造車で、車椅子対応トイレ近くに設置された座席は、この列車をはじめ、最近のJR九州各種列車などを手がけている某デザイナーが絡んだ車両でよく見られるタイプの座席が装備され、足元が伸ばせる事などを考えると、かえって指定席よりも良いのでは…と感じてしまった程です。
指定席券なしで「いさぶろう」号・「しんぺい」号に乗車する場合、キハ140形の吉松方木製ベンチと並び、ここも狙い目かと思いますが、3両フル編成で運転する場合は良いとしても、車両検査などで減車となった場合、この車両が連結されない可能性もありますので要注意です。
またキハ40系列の気動車を改造した「いさぶろう・しんぺい」号用改造車は、車両基地が熊本にある事もあって、「いさぶろう」号・「しんぺい」号以外に、肥薩線八代~人吉間の普通列車1往復にも充当されています。
(鹿児島本線の熊本~八代間が回送扱いなのは惜しい限りです)
MAKIKYUが今回この「いさぶろう・しんぺい」号用改造車に乗車したのは、行程の関係で人吉以南まで足を伸ばす事がなかった事もあり、観光列車「いさぶろう」号・「しんぺい」号ではなく、こちらの普通列車だったのですが、この普通列車は「いさぶろう」号・「しんぺい」号とは異なり、全車自由席となっています。
そのためこちらは客室乗務員の乗務などはないのですが、MAKIKYUが乗車したのは土曜日の朝という事もあり、1両だけの客扱いでも座席は埋まらない程閑散としており、大勢の乗客で賑わう観光列車とは対照的な雰囲気でした。
(勿論客扱いは3両全てで行っていましたが、最後尾1両は途中駅でドアカットを行っていました)
「いさぶろう・しんぺい」号用改造車の乗り心地を堪能するだけならば、「いさぶろう」号・「しんぺい」号に乗車するよりも、八代~人吉間の普通列車で、こちらも絶景と言える球磨川沿いの景色を眺めながら…と感じたものです。
普通乗車券のみで乗車できる全車自由席の普通列車(勿論割安な「旅名人の九州満喫きっぷ」や、「青春18きっぷ」(期間限定)でもOKです)であれば、指定席料金を支払うには…と感じる「いさぶろう・しんぺい」号用改造車もなかなか良いと感じたものです。
しかしながら朝の人吉へ向かう「いさぶろう・しんぺい」号用改造車を充当した普通列車は運転時刻が早く、接続の関係もあって熊本市内からでも乗車は少々厳しいと感じてしまうのは難点です。
MAKIKYUはこの列車への乗車狙いも兼ねて、八代市内に宿を確保した程(八代の隣駅至近には比較的割安で快適に過ごせるホテルがありますので、八代発の「いさぶろう・しんぺい」号用改造車を充当した普通列車の乗車を予定しているのであればおススメです)ですが、夕方の八代行き普通列車であれば、日の長い時期なら球磨川沿いの車窓も楽しめ、機会があればこちらの列車にも…と感じたものでした。