昨年11月に運行を開始したばかりの東京メトロ千代田線用の最新型車両・16000系は、昨年MAKIKYUは姿を見ただけで乗車する機会がなかったのですが、3日にようやく乗車機会に恵まれ、今年初の幸運を手にした様にも感じたものでした。
この16000系は試運転の姿を「MAKIKYUのページ」でも一度取り上げた他、元旦の記事でも今月限りで6両編成は全て引退となる小田急5000形と共に、記事中の写真でも取り上げるなど、車両の外観に関しては既に「MAKIKYUのページ」でも2回程登場していますので、今日は乗車した車内の様子を取り上げたいと思います。
16000系はJR線にも直通運転を行う地下鉄車両だけあり、20m4ドア・ロングシートの一般的な通勤型仕様の車内となっており、車内案内表示装置としてLCDモニターを装備するといった点は、如何にも最近の通勤型車両といった様相です。
また最近の首都圏における通勤車両では、比較的低コストでシンプルな構造の車両が導入される事が多く、外観をはじめ、車内も割合質素な雰囲気を感じる車両が多くなっています。
16000系も日立製作所アルミ製標準仕様車両の一派と言える車両ですので、この傾向は強く見られ、関西の一部鉄道で導入されている新型車両の様な豪華さは感じられず、首都圏では比較的高級感のある車両を導入していた旧営団地下鉄の様な雰囲気もありませんので、新生東京メトロが旧営団とは車両方針が変わった事を意識させられるものです。
特に車内側面の化粧板を見渡すと、形式毎によって異なる凝った印象の化粧板を採用していた営団地下鉄時代の各車両に比べ、白系無地の化粧板などは対照的で、随分シンプルな印象を受けます。
天井の蛍光灯もグローブ(カバー)はなく、勿論間接照明でもありませんので、これは首都圏では一般的とはいえ、関西の車両などに比べると…といった所ですが、天井を見渡すと蛍光灯の配列や取り付け部、空調吹出口などが上手くデザインされ、シンプルながらも千代田線に乗り入れる他社最新型車をはじめとする「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」の様な貧相な印象を受けない辺りは好印象が持てます。
そして車端部の貫通路や、座席脇の仕切りなどにガラスを多用しているのも大きな特徴で、ガラスを多用した車両間貫通路の脇は、16000系の内装で基調としている濃い青色のラインがデザインされ、化粧板自体は非常にシンプルな雰囲気ながらも、このラインが良いアクセントになっている様に感じられたものです。
座席脇の仕切りも、他車両ではなかなか見かけない独特なモノとなっており、標準仕様車をベースとしたシンプルな造りながらも、「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」の大半の如く「何処へ行っても同じ様な車両ばかり」といった雰囲気ではなく、16000系ならではの独自性が感じられる点は高評価できる所です。
そのため16000系は豪華さこそなくシンプルな印象を受け、天井回りなどに過剰な装飾をした感のある同社副都心線用10000系程の様な凝り様(これは評価が大きく分かれるかと思いますが、MAKIKYUとしてはイマイチと感じています)も見られませんが、近年の低コスト車両では貧相な印象が否めない車両も多い中で、独自色を打ち出しつつ機能美を考えた車両と言う印象を受けたものでした。
それに加えデザイン面などでは評判は悪くないものの、座席の評判が芳しくなく、早くも座席交換を行う事になった副都心線用10000系の失敗を踏まえてか、座席も固めながらクッションの厚みがあり、不自然な着座体制を余儀なくされる事がない点も評価すべきと感じています。
この16000系はメカニズム面でも、起動時などに独特な音を発する全密閉型同期電動機を採用し、台車も敢えてボルスタ付きとしているなど、この記事で言及している事だけに留まらず、内装や外観だけに留まらない様々な特徴が見られるのも特徴で、旧営団とは随分異なる東京メトロの車両設計も、この16000系で完成形に大分近づいたのでは…と感じたものでした。
最近の首都圏では「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」などの低コスト型車両が多く導入され、最新型車両よりもそれ以前の車両や、路線によっては代替対象となる古参車両の方が良いのでは…と感じる事も少なくなく、内外共に貧相な印象が否めない車両の増殖にはウンザリしていますが、この16000系は豪華さこそなくてもコスト面と共にデザイン性なども考慮されており、最近の首都圏通勤車両にしてはかなりの完成度を誇ると感じたものです。
この日は千代田線内で16000系の他に、「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」の総本家とも言うべき会社の最新型車両にも乗車したのですが、同年代の車両ながらも出来栄えの差は非常に大きく感じ、この事は千代田線の東側を走る他社線とは直通運転開始時点から相変わらずの様です。
(しかも陳腐極まりない千代田線直通開始時の車両が、地下鉄乗り入れ離脱から25年以上を経た今日でも、一部は様々な改造を経てJR他線区でまだ走り続け、先月MAKIKYUもこの車両に乗車機会がありましたが、新型導入で203系ですら淘汰される今日でもまだ走り続けるのは皮肉なもので、そろそろこの車両の代替話が出てこないのかも気になるものです)
時代の趨勢や通勤型車両に求められる特性などを考えると、特に首都圏においては低コスト型車両の導入が進むと思いますが、首都圏では16000系が直通運行を行う千代田線の乗り入れ事業者をはじめ、各事業者において16000系に刺激され、低コスト型車両でももう少しデザイン性を考慮した車両を導入して頂ければ…と感じたものでした。