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黒部ルート公募見学会(6)~高熱隧道を走る上部軌道・路線編

2011-11-04 | 鉄道[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、上部軌道などと呼ばれる関電上部専用鉄道の車両に関して取り上げましたが、今日はその続編として、乗車列車の停車した各停留所の様子などを取り上げたいと思います。

黒部第4水力発電所(くろよん)~欅平上部間を走る上部軌道では、関電関係者や黒部ルート公募見学会参加者を乗せた客貨混合列車は、両端の駅の他にくろよんから900m程進んだ所に位置し、上部軌道で唯一トンネルから顔を出す箇所でもある仙人谷停車場にも停車しますので、停車する停車場は合計3箇所になります。


MAKIKYUが参加した黒部ダム出発コースの黒部ルート公募見学会では、くろよんで発電所設備を見学した後、黒部第4発電所停車場から上部軌道に乗車する事になりますが、この停車場は上部軌道では唯一、車両のドア高さに合わせたホームが設けられています。

また上部軌道の列車は先日の記事で取り上げましたが、バッテリー式機関車が客車などを牽引する動力集中方式を採用しており、最後尾客車からの推進運転にも対応していませんので、機回し線も設けられています。

駅構内の軌道は機回し線部分も含め、全て路面電車の併用軌道の如く舗装されているのが特徴で、お陰で公募見学会参加時にはホームから軌道へ降り、停車中の列車脇を歩いたり、一般人はなかなか乗車機会のない上部軌道列車との記念撮影をする事も容易です。


そして黒部川第4発電所停車場から仙人谷方は、駅構内を出るとトンネル高さがかなり低くなっており、一般の旅客用鉄道とは大きく異なる関電の事業用設備ならではと言う雰囲気です。

以前有名な年末の紅白歌合戦で、くろよんからの生中継を行った某アーティストも、正確な出演場所はくろよんの発電所内ではなく、この上部軌道を仙人谷方に少し進み、トンネルが少し広くなっている所(100m位との事です)だったという話を聞いたものでした。

くろよん~仙人谷までの区間は、くろよん建設に伴って昭和30年代に建設が進められた区間で、1kmもない距離ですので、大した速度は出さない上部軌道の列車でも、あっという間に仙人谷停車場に到着となります。

仙人谷停車場は黒部川の橋脚上に位置し、列車の交換設備や側線などは存在しない棒線駅となっていますが、冬場の厳しい環境もあってか頭上は覆われ、側面も塞げる様になっており、このお陰で黒部峡谷鉄道本線(下部軌道)が一部軌道撤去・運休となる冬季でも、上部軌道は通年運行が可能になっています。


この停車場内も路面電車の併用軌道の如く足元が平滑となっており、関電関係者だけでなく一般人(専ら黒部ルート公募見学会参加者)の便宜を図っている事が伺えます。


ただホームの設置は無く、車両と停車場内に段差が発生するために、その気になれば何とか乗降できる高低差とはいえ、公募見学会参加者の乗降に際しては踏み台(ステップ)が用意され、これは欅平上部停車場でも同様です。

また黒部ルート公募見学会参加者の訪問を想定してか、ご丁寧にも駅名表や時刻表が掲げられており、日本国内の旅客営業を行っている下手なローカル線の小駅よりもずっと立派な雰囲気です。


時刻表を見ると上部軌道の列車は、MAKIKYUが乗車した8列車を含め定期列車だけで4往復、不定期列車も含めると6往復運行しており、インクラインに比べると運行頻度は低いものの、旅客営業を行っている鉄道でも、もっと運行本数の少ない路線が幾つも存在しますので、一般人が足を踏み入れるのはかなり困難な地を走る事を考えると、結構な本数が走っていると言えます。

 
ここで公募見学会参加者は一旦列車を下車し、黒部川にかかる橋梁上の仙人谷停車場から、黒部ルート公募見学会への参加を除くと、余程手馴れた登山家や関電関係者でもないとなかなか見る事ができない秘境にある仙人谷ダムや、周囲の峡谷景観を堪能し、カメラにその様子を収める事ができますが、MAKIKYUの公募見学会参加時にはあいにくの天候だったのは残念な限りでした。

そして仙人谷停車場を出発すると、欅平上部までの間はずっとトンネル内を走行し、途中に側線が設けられ、外へ抜ける横坑のある幾つかの停車場は全て通過しますが、この区間は戦時中の電源開発に伴って建設された区間で、素堀りとなっている箇所も多数見受けられます。

仙人谷停車場の欅平上部方は、有名な高熱隧道区間となっており、建設当時は約160℃もあったとの事で、建設にはかなりの困難を極め、厳冬の時期でも作業員に黒部川の冷たい水を掛けながら作業し、ダイナマイトの自然発火・爆発などで多数の死者が発生した事でも有名な区間です。


列車が仙人谷停車場に停車している際にも、欅平上部方のトンネルは硫黄の匂いと生暖かい湯気が出ており、硫黄の影響で金属の侵蝕劣化が著しい事が、上部軌道が電化できずにバッテリー式機関車を使用している大きな要因となっています。

この高熱隧道区間では軌道劣化が猛烈な勢いで進むために、2年程度で取替えを余儀なくされるほか、上部軌道の車両も寿命は15年程度との事で、一般の鉄道車両に比べると寿命は随分短いものです。

列車がこの高熱隧道区間に差し掛かると、客車は耐熱仕様になっているものの、関電の案内員が敢えて客車のドアを開け、高熱隧道に関して案内する事もあって、車内には温泉地に居るかの如く硫黄の匂いが充満してきます。

温度と湿度の高さもあって窓ガラスも曇り、上部軌道の客車名物とも言える車内外双方のガラスを拭き取れる手動式ワイパーの出番となります。

高熱隧道区間では現在、導水管が敷設されている事もあって、建設当時の超高温よりはずっとマシな状況になっていますが、今日でも平均で約40℃程度、MAKIKYUが公募見学会に参加した際には天候不順で湿度が高い事もあってか、関電関係者によると45℃程度はあるのでは…という話でした。


この高熱隧道を過ぎた後は、ずっと真っ暗なトンネル内を走り続けて欅平上部停車場に到着となりますが、欅平上部では欅平下部停車場との間を往来する車両運搬対応の巨大エレベーターが存在する他、上部軌道の客車や貨車の留置箇所も設けられています。


そのため乗降用ホームと機回し線のみで、比較的シンプルな配線となっている黒部川第4発電所停車場に比べると、駅構内の配線は複雑なものになっていますが、この駅構内も一般人の利用を想定し、足元は路面電車の併用軌道の如く平滑となっています。

欅平上部駅に到着した後は、一旦停車場から外に出て周囲の山並みを眺められる箇所へ案内され、その後巨大エレベーターに乗って欅平下部へ向かう事になりますが、この続きは近日中に追って別記事として取り上げたいと思います。