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黒部ルート公募見学会(7)~欅平上部駅と車載エレベーター・専用列車

2011-11-09 | 鉄道[北陸]

MAKIKYUが先月参加した関西電力の黒部ルート公募見学会では、先日取り上げた高熱隧道を走る上部軌道に欅平上部駅まで乗車した後、停車場のすぐそばにある展望台に案内され、僅かな時間だけながらも、一般人が足を運ぶのは容易でない欅平上部からの山並を堪能する事が出来ます。


MAKIKYUが見学会に参加した日は、雨が降る生憎の天候だった事もあって、余り良い展望は堪能できなかったのは惜しい限りですが、関電関係者以外の一般人がこの様な所に足を運べるだけでも相当贅沢な話です。

ただ黒部ルート公募見学会では、黒部トンネル内の専用バスを除き、関西電力が通常事業用に定期運行している交通機関を乗り継いで利用する事もあってか、この展望台での見学時間はかなり限られてしまうのが惜しい限りで、すぐに欅平下部駅へ向かうエレベーターに案内されます。


このエレベーターは、黒部峡谷鉄道の終点・欅平駅と、仙人谷や黒部第4水力発電所(くろよん)の間の標高差が200m以上あり、そのまま鉄道を敷設するのは難しい事から、欅平駅近くの欅平下部駅から上部軌道の起点となる欅平上部駅間を結ぶために建設されたもので、荷物用の巨大エレベーターと、併設して人員用のエレベーターの2基が設置されています。

荷物用のエレベーター内には線路幅762mmの軌道が敷設され、上部軌道の車両1両を運搬可能な造りとなっており、国内最大規模のエレベーター(比較的最近まで日本一・現在でも国内2番目)としても知られていますが、この設備を昭和10年代の上部軌道建設時に造り上げ、今日まで健在と言うのは大したものです。

上部軌道の車両は車両限界の関係でかなり小柄とはいえ、鉄道車両1両を運べるエレベーターというのは、日本中を探しても他にどれだけあるのか…という代物で、くろよんの巨大なペルトン風車の輸送には耐えられないとはいえ、見学会参加者(MAKIKYUの参加日は29名)と関電の案内員を一度に輸送できる輸送力を誇ることから、見学会参加者は人員用ではなく、この荷物用エレベーターに案内されます。


このエレベーターでの移動時間は約2分程で、エレベーター内には非常時に備えて脱出用の足掛けが付いているのも特徴的でした。


欅平下部駅に着くと、ここは黒部峡谷鉄道の欅平駅構内と言っても過言ではないのですが、短い距離ながらも徒歩での移動ではなく、欅平駅へ移動する専用列車が仕立てられており、この列車に僅かな時間だけ乗車して、黒部ルート公募見学会はお開きとなります。

この専用列車は関電関係者用客車1両と、見学会参加者用客車2両に、上部軌道~下部軌道(黒部峡谷鉄道本線)間を直通する貨車1両を混成した混合列車で、客車は黒部名物のトロッコや狭い特別客車ではなく、転換式クロスシートを装備したリラックス客車タイプでした。


牽引機関車も凸型の古参電機という豪華版で、おまけに欅平下部駅を出てすぐにスイッチバックするなど、僅かな乗車時間の列車ながらも注目の存在です。

この専用列車で欅平駅に到着し、改札前で関電案内員の方から挨拶があった後、貸与ヘルメットを返却して見学会は終了となりました。

黒部ルート公募見学会は一般人の立入が制限される特殊な区域を駆け抜けるだけあって、団体行動となり見学時間も制限されるのは惜しい限りでしたが、様々な事業用交通機関への乗車は非常に希少で、MAKIKYUの様な乗り物好きの参加も多いとの事でした。

乗り物だけでなく、滅多に足を運べないくろよんの発電所内見学や、高熱隧道の異様な雰囲気を堪能できたのも貴重な体験で、遠方から足を運ぶ甲斐のある、非常に充実した見学会だったと感じています。

またこの見学会に参加すれば、殆どの乗客は来た道を返すしかないといっても過言ではない黒部峡谷鉄道を、全線片道だけ利用し、黒部ダム方の交通機関と合わせて周遊ルートを構成できる点も注目です。

黒部ルート公募見学会は毎年恒例になっているとはいえ、当選・参加は年に1回だけと限られており、それも抽選で当たった場合だけで日時も限られるなど、なかなか簡単に参加できるものではありませんが、機会があればまた来年以降も参加したいと感じたもので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も興味がありましたら、是非黒部ルート公募見学会への応募を検討してみては如何でしょうか?