交流戦が始まって、オリックス・バファローズが憎き阪神タイガースに連勝してやれやれというところであるが、ええ加減に連休中の豊橋・天浜線行きのことも進めなければ・・・。
天浜線のイベントである天竜二俣駅構内と転車台などの見学を終え、昼食を済ませたところで、しばらくこの町を歩くことにする。天竜川、そして周りは山に囲まれた町であるが、ここも現在は浜松市天竜区、政令指定都市の一角である。有名な美術館もあるそうだが、中を鑑賞しようとまでは思わず、町歩きである。
かつては天竜川の水流も生かした木材と養蚕の扱いで栄えた二俣。ここから天竜川をさかのぼって飯田線の中部天竜までの鉄道路線の計画もあったという。そのこともあってか、古くから開けた街づくりが行われたようである。ただ産業構造の変化にともない二俣もぽっかりと穴が開いたのか、現在では廃れたような、それでいて懐かしいような、そんな感じの町並みができているように思う。
当初は鉄道遺産だけ見て次に行こうかと思っていたが、駅前の案内板を見て歩こうと思った次第。予備知識も何もないところである。
商店街を歩く。休日とあってシャッターを下ろしているところもあれば、古いタイプのスーパーマーケット、昔ながらの看板や建屋を残した商店など、なかなか味わい深いところ。こうした昭和建築に詳しい人にとってはたまらないところかもしれない。二俣自体、全国的に取り立てて有名なところではないだろうが、天浜線にやってきて途中下車してぶらぶら歩くのも面白いだろう。
それにしても、商店街にはライダー風の人が目につく。交通の要衝だからだろうか。ただそれにしても多い。そう思ってしばらく歩くと、昔の蔵が建つその前の広場に、バイクがズラリと並ぶ。
それも大型のものではなく、いわゆるカブ系のもの。一昔前の出前や商売風につくられたものや、パッと見た目自転車とさほど変わらないようなスリムなものとか、小回りが利き実用性に富んだバイクの数々である。大勢のバイク好きの人たちが広場にいるが、鉄道系を追いかける人に比べて明らかに雰囲気が違う。
それはさておき、この二俣にこれだけのカブが集まっているのはなぜか。連休中のイベントということはあるが、それは広場から少し行ったところにある旧二俣町役場を利用した建物に行けばわかる。ここは現在「本田宗一郎ものづくり伝承館」となっている。
本田宗一郎。そう、あのHONDAの創業者である。松下やソニーなどと並び、ものづくり大国の日本にあって、その経営手腕が群を抜いていたという氏の出身がこの天竜ということで、その顕彰のために運営されているのが伝承館である。
元祖のスーパーカブの展示を中心に、世界のカーレースにその技術をもって打って出た様子なども紹介されていた。先ほど見学した旧国鉄二俣線の鉄道歴史館にあった鉄道技術とは全く別の方向に、洗練された技術を世に送り出したHONDAの素晴らしさがよくわかるところである。それにしても、やっぱり訪れる客層が違い、ふらりと訪れた私が何だか場違いなヤツのようにも思える・・・。
ここを折り返しにして天竜二俣駅に戻る。かつて中部天竜を目指して走り出した路線の一部が残されており、片面ホームの一部が残されていたり、往年の気動車やなぜか寝台車も地元NPOの手で保存、メンテナンスされている。やはり鉄道には鉄道ならではの良さがある。この集落全体で、鉄道とバイクという往年の交通機関を地元の大切なものとして残し、アピールしようということが現れているように思う。