先の24日に仙台市内で行われた東北楽天の日本一パレード。沿道には20万人以上の人たちが集まり、東北の地に初めて日本一をもたらした選手たちの勇姿に感動する姿がニュースで放映されていた。あの震災から2年8ヶ月が経過しているが、まだまだ復興とは程遠く苦しんでいる人たちが多い中、東北に勇気と希望をもたらした楽天の優勝。鶴岡監督の悲願の日本一を受けての御堂筋パレード、広島の初優勝で、被爆の後遺症で亡くなった人の遺影を掲げる人もいた平和大通りのパレードと並ぶ、優勝パレードの名場面ではないだろうか。
さて、とは言うものの東日本沿岸を襲った津波の爪痕はまだまだ消えることがない。そればかりか、次は東海・東南海・南海トラフ巨大地震がいつ発生するか、その規模はどのくらいか、どのくらいの被害が出るのかということで戦々恐々である。中には、関西にもっとも被害をもたらすであろう南海トラフ巨大地震で、「大阪府の死者は最大13万人」という想定の発表もあった。
これを発表したのは大阪府の災害対策等の検討部会であるが、その部会長は河田惠昭という方。京都大学名誉教授、関西大学教授という一方で、神戸にある「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」の所長である。同センターは私の最近のライフワーク?の「関西私鉄サイコロしりとり」で回る中で訪ねたこともあり、震災についての総括を行っているスポットとして「神戸観光の一つに加えるべきだ」というような印象を持った。
河田氏については、先日大阪市内の防災に関する講演会を聴く機会があったのだが、津波の特性やら、それに対する大阪市街地の脆弱さ、津波被害を防ぐ、あるいは軽減するには何をしなければならないかということについて熱く語られていた。「死者13万人」というのは一見すれば学者の妄言のようにも思われるが、実際に話を聴いて見ると、確かに悪い条件が重なった場合はその数字になるのだろうが、阻害要因を一つずつ取り除けば被害は軽減できるということであった。ただ一方では、大阪の地形条件や最近の都市開発のやり方を見ると、どちらかと言えば「死者13万人」の公算のほうが高いという警鐘を鳴らしていた。最後は大阪市営地下鉄の民営化にも触れ、「今の黒字のうちに脆弱な、都市交通としての安全対策、防災対策をしなければならないのに、それをやらずに、人気取りだけのために初乗り運賃の値下げとか、果ては民営化というのは、絶対将来に禍根を残す」と力説していた。
予定の時間を大幅にオーバーしての講演であったが、あっという間の時間だった。帰りに「河田先生の著作を展示していますのでご覧ください」という案内で、テーブルに何冊か置いてあった著作を手にした中で出会ったのが、この『津波災害-減災社会を築く』(岩波新書版)である。
講演当日は著書の販売はなかったので、後日書店で入手した。内容は・・・講演で語っていたことをより詳細に、学術的に触れたものである。ただ、本書の奥付を見るに、これが出版されたのは2010年12月。ちょうど東日本大震災の4ヶ月前である。私が購入した一冊は2011年5月にして早くも6刷目というもの。おそらく震災を機に購入部数が大幅に伸びたのだろう。読んでみると正に震災被害を言い当てていた・・・と言って語弊があるなら、警鐘していたこと、震災発生で恐れていたことが現実になったと思わせるところが多かった。さすがに福島原発のことは想定していなかったとしても、津波の被害、なぜあれだけの犠牲者を出したかということについては、著者にすれば最悪のケースに振れた結果そのものである。講演の時に、私が訪ねた宮城の沿岸部の町の姿を思い出していたのだが、改めて防災、減災について考えさせられるところであった。
南海トラフ地震はいつ起こるかわからないが、近いうちに必ず起こると言われている。もっと広く、阪神・淡路大震災や東日本大震災の教訓を生かすためにも、官民挙げての防災・減災対策を進めるとともに、地域に住む人一人一人の防災意識を高めなければならないということを感じた。ちょっと今の政府の動きが震災への関心が薄いように思われ(そんな、秘密保護法案なんて絶対に今すぐ成立させなければならない、というほどのものでもないでしょう)、日本維新の会の大阪府政・市政もアテにならない(現場第一線の職員の皆さんは一生懸命頑張っていると思うが)、そんな中でどうすればいいか。私ももっと考えなければ・・・・。