まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

パパが美青年と…

2021-10-27 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 秋の夜長のアジアBL映画祭②
 「Bridge of Destiny」
 妻子と幸せに暮らしているクオンは、ある悲しい過去を秘めていた。それを知っているかのように振る舞い、自分に近づいてきた青年タンの存在がクオンを不安に陥れる。クオンにスキャンダラスな罠を仕掛けるタンの目的とは…
 タイ映画に続いて、ベトナム映画も初体験。フランスの植民地時代やベトナム戦争など、ベトナムを舞台にした映画は今までたくさん観てきましたが、全編ベトナム語によるベトナム人の映画は初めて。でも、この映画って何だか韓流ドラマっぽくて、目新しさがあまりありませんでした。設定的にはスキャンダラスなドロドロの愛憎劇なのですが、それとは真逆な韓流ラブコメテイストに当惑。クオンの家族や息子の友だちのやりとりがコミカルすぎて、暗く悲しい秘密や復讐とのギャップに違和感。コメディもシリアスも!と両方欲張ったけど巧くいかず、まるで水と油を混ぜてしまったようなチグハグさでした。

 ヘンなコミカル調がなければ、なかなか面白いBLサスペンス、BLミステリーなのですが。若い頃に悲劇的なBLを経験し、現在は幸せな家庭を築き良き夫、良き父親として生きてるクオンに忍び寄る、暗い過去の影…クオンに接近しハニートラップを仕掛ける謎の美青年、そして彼を操る病身の女…交錯する過去と現在がしだいにつながり、ドラマティックな展開で謎が解き明かされていくサスペンス部分と、クオンの若き日の悲しいBL部分も別の映画みたいなアンバランスさながら、どっちも面白く描かれていました。金持ちのお坊ちゃまと貧しい青年との身分違いの恋は甘く切なく、まさにBLの王道です。性愛シーンがソフトすぎなのが惜しい。東南アジアの湿った空気と肌ってエロティックなので、もうちょっと濃密で官能的にしてもよかったのでは。二人があまりイケメンじゃないのも減点ポイント。

 クオン一家を崩壊させようとする謎の女の目的、正体もホラーですが、さらに衝撃的すぎたのがある人物の正体。さすがの私も、えー!?ウソやろ?!とビックラこきまろでしたわ。かなりトリッキーで、そーきたか!と一本とられた感じ。そこまでして愛を貫くのかと、愛の力、愛の執念に戦慄な真実でした。雨降って地固まる的なハッピーエンドでしたが、私がクオンの息子ならショッキングすぎて受け入れがたいわ~。悪役なはずの謎の女がいちばん可哀想だった。

 クオン役の俳優は、眞島秀和+元エグザイルの松本利夫、みたいな顔?美男ではないけど、すごい肉体美でした。息子は韓流ドラマに出てきそうなメイク感濃厚なイケメン。謎の美青年タンは、若い頃の藤木直人っぽかったです。日本でリメイクするなら、クオンは青柳翔、息子は白洲迅、タンは金子大地、がいいかも。のどかで美しい田園や河など、田舎の風景はベトナムのイメージ通り。高層ビルが立ち並ぶ都会は何だかベトナムっぽくなくて、自分の先入観と無知さを痛感。屋台でフォー食べたい!ベトナムにも行ってみたいです。
 
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美男運転手の秘密

2021-10-24 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 秋の夜長のアジアBL映画祭①
 「Driver」
 青年実業家のテイが失踪し、妻のケイダは運転手のマックと共に夫を見つけ出そうとする。ケイダはテイがひそかに別荘を借りていたことを突き止めるが…
 初めてタイの映画を観ました。観慣れてる韓国映画や中国・香港映画とは、やはりテイストが違いますね。まず、普段ほとんど耳にすることがないタイ語が珍しく新鮮でした。タイ人も、さすが南国人というか、みんな濃ゆいですね~。近くの雑居ビルに住んでる東南アジア人の集団、何人か判らなかったのですが、きっとタイ人!とこの映画を観て思いました。タイは南国だけど、灼熱の暑さって感じではなさそうで、温暖そうで過ごしやすそう。国民性も、韓国人や中国人みたいにエキセントリックではなく穏やかそう。いつか行ってみたい国のひとつです。
 このタイ映画、なかなかの掘り出し物でした。正直あまり期待してなかったのですが、よくできた2時間ドラマみたいで面白かったです。失踪した夫を探す美しい妻、彼女に協力する美男の運転手は明らかにワケアリで、二人は一緒に行動するうちに惹かれ合い…みたいなありきたりな展開と思わせて、え?!なドンデン返しが2度、3度と。衝撃的でスキャンダラスな真実と人間関係が、伏線を回収しながら暴かれていくプロットは、ちょっと強引ではあったけど退屈を許しませんでした。

 サスペンスとしても上出来でしたが、何の予備知識もなく観た人を当惑させる要素が、この映画にはあります。それが見所でもあります。テイが利用していた高級スパの実態が判明してから、その要素が濃密になり始めます。まあ、感がいい人や腐女子なら、運転手のマックを一目見ただけで察知できるはず。感がそれほどよくない人や非腐女子でも、ヒロインに命じられてマックが別荘のプールに落ちていた鍵を拾うため全裸になるシーンなどで、ああそういうことかと気づくでしょう。事件は男と男の秘められた愛と欲望が引き起こしたものであることに。男色の情痴が渦巻く禁断の世界にヒロインが踏み込んでしまい…なはずだったのが、またもや意外な真相が!描かれる男色は、隠微でソフトにエロティック。そういうのが苦手な人には、あまりお勧めできません。

 主人公二人が濃ゆい美男美女!マック役の俳優は、韓流男優の誰かに似てるんだけど、誰なのか思い出せない美しい全裸や男色濡れ場など、サービス精神旺盛でした。日本でもBL映画やドラマが人気ですが、日本のイケメン俳優もあれぐらいはやってほしい。ケイダ役の女優は、松嶋菜々子を濃ゆくエロくした感じ?BLに女が絡むのは好きじゃないのですが、恐ろしくも悲しい本性を秘めたケイダのキャラは魅力的でした。残念だったのは、失踪したテイ。男も女も狂わせる“運命の男”な魅力が全然なかった。ただのヤリチンなゲス男だったし。北村一輝をゴリラ化したような見た目もちょっと。日本でリメイクするならマックは新田真剣佑、テイは鈴木亮平がいいかな。二人の濃密なBLシーンなんて、すごい話題になりそうですね(^^♪
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夫の愛人♂と…

2019-07-10 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「彼が愛したケーキ職人」
 ベルリンでカフェを経営するパティシエの青年トーマスは、妻子あるイスラエル人のオーレンと恋に落ちる。しかし、オーレンは帰国中に事故死。エルサレムに来たトーマスは、オーレンの妻アナトに近づくが… 
 最近は世界各国で意欲的な、社会派ドラマとしても人間ドラマとしてもラブストーリーとしても秀れたLGBT映画が製作されていますが、ライトなBL好きの腐女子にはちょっとしんどい作品も少なくない。腐が好きなのは、イケメン同士の萌える恋愛。ゲイの生きづらさ、彼らの暗くて重い現実を知りたいわけじゃないんです。この映画を観て、あらためてLGBT映画とBL映画って似て非なるもの、ということを思い知りました。腐にとってBLは甘美なファンタジー。そこに女は存在しないんです。存在してもいいけど、男たちの恋愛に絡むなど言語道断。女性も重要な存在になることには、どうしても抵抗感を覚えてしまいます。現実逃避できるファンタジーじゃなくなってしまう…

 それにしても、この映画。男女の関係が私からすると不可解かつ気持ち悪くて、ファンタジーどころかホラーでした。アナトの自分から離れようとしていた夫の突然死に狼狽する女心、そんな自分を静かに支えてくれる寡黙でミステリアスな青年に心惹かれる女心は、よくある話ながらも嫌いじゃない題材なのですが、やっぱそっちよりも男同士の愛の機微や葛藤に重きを置いてほしかったです。喪失感や後悔に苛まれているトーマスとアナトが、しだいに距離を縮めて親愛感情を抱くようになる、という展開も優しくホロ苦くていい感じだったのに、ああ、ダメよダメダメ!(古っ)何でセックスまで発展するかなあ?

 夫を失くしたばかりの女盛り未亡人アナトが、若い男にハアハアになるのは解かるけど、ゲイのトーマスが熟女とあんな簡単に寝るとか、ええ?!そんなんあり?!トーマスはバイセクシャルだったってこと?それまでのオーレンへの愛や追憶の切なさが、一瞬で崩壊しましたわ。あそこはやっぱ、ハアハア迫ってきたアナトを、やんわり拒絶して気まずくなりつつ、精神的な絆で結ばれた姉弟みたいな関係に落ち着く、が理想的でしたわ。トーマス、いったい何しにエルサレムまで来たんだよ?アナトには真実を告げようとする気振りはなかったし、あのままノンケとして平和に幸せに生きようとしたのなら、とんだ卑怯者です。そんなことができる心と体って不潔。甘美に哀切に描いたつもりだろうけど、かなり爛れた異常な男女関係でした。

 トーマス役のティム・カルコフは、大柄で色白で真面目そう、といういうドイツ男のイメージ通りな風貌。イケメンなんだけど、一歩間違えればデブなガチムチ体型で、ケーキ職人というよりラグビー選手みたいだった。やたら裸になるシーンあり。ムッチムチマッチョです。M字髪が気になった。
 トーマスが作るケーキやクッキーが美味しそうでした。黒い森の羊ケーキ、食べてみたくなりました。イスラエルの首都エルサレムが舞台の映画というのが珍しく、ユダヤ教の安息日などのしきたりや料理、飲食店の経営管理や外国人との関わりにおける禁止事項などが興味深かったです。イスラエルも昔から行ってみたい国のひとつ。トーマスに対するオーレンの兄の態度とか、イスラエル人にとってドイツ人は韓国における日本人、みたい感じなのでしょうか。
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妻が侵入された…

2019-01-11 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「セールスマン」
 国語教師のエマッドは、妻のラナと共に所属する劇団の舞台「セールスマンの死」の稽古に励んでいた。そんな中、エマッドが留守にしていた家に何者かが侵入し、ラナを暴行するという悲劇が起きてしまう。それを機に、夫婦の間や周囲の人々との間に亀裂が生じ始め…
 イランの名匠アスガー・ファルハディ監督が、「別離」に続いて2度目のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。ファルハディ監督作は、「ある過去の行方」しか観たことがなかったのですが、この作品も評判通りの秀作でした。人と人との間には、どんなに愛し合っていても、信じ合っていても、親しくしていても、埋めがたい溝があるんだな~と、繰り広げられるドラマに思い知らされてしまいました。平穏な人生を乱して砕く理不尽な暴力だけでなく、それによって炙りだされてしまう人間関係の脆さが恐ろしかったです。いかにも映画や小説のネタっぽい人間の心に潜む闇とか狂気とかいったものではなく、多くの善良な人々の無意識で何気ない言動に見え隠れする思慮のなさ、無神経さがリアルで胸がザワつきました。

 悪人よりも怖いのは、善人の悪意のないKYさ、無神経さです。犯人の顔が見たいとか何の気なしにラナに言う隣人とか、内密にしておくべきことと認識できずに周囲に吹聴する大家とか、基本的には親切で親身な人たちなので、怒ったり責めたりできないのが辛い。彼らへの困惑や瞋恚、傷ついた気持ちを抑え隠し、ストレスを募らせながらも円滑な人間関係を営む努力をするエマッドとラナが、痛々しくも歯がゆかったです。相手の気持ちよりも、自分の独りよがりな“優しさ”と“正しさ”を優先してるのかもしれない…と、我が身を顧みてゾっとしました。気をつけねば!

 ショッキングで激情的なシーンや、息をのむようなドラマティックな展開などはなく、終始淡々と静かに物語は進行するのですが、散りばめられた謎に先が読めず、気になってラストまで退屈しません。ラナに起こったことがはっきりしてないなど、説明をほとんどしてないところも想像をかきたてられます。説明しないけど、説明不足でわけがわからない映画じゃないんですよね~。最近の映画って、おしゃべりで頭が悪い男みたいに説明や自己主張が多いのでウンザリ。その点、この映画は寡黙だけど目ですべてを語れる静かで賢い男みたいです。伏線の張り方や小道具の使い方がさりげなくも巧みで、脚本がとにかく秀逸です。結局は善良すぎて泣き寝入りするしかない二人か、と思いきや、ラストに意外なドンデン返しがあって、苦く重い余韻を遺します。

 イランを舞台にした映画は滅多に観られないので貴重。宗教色と政治色がほとんどなく、日本や西洋とそんなに変わらない生活の描写に驚かされました。もっと抑圧された厳しい生活を余儀なくされてるのかと思い込んでました。ベールを被り、肌を露出しない女性の衣装はまさに中東ならではでしたが、男に絶対服従、隷属、みたいな虐げられてる様子も全然なく、言動も恋愛も自由そうだったのも意外でした。でも、住んでるビルがいきなり取り壊されたり、演劇の脚本に検閲が入る、といった描写はさりげなくあって、窮屈で不自由な社会は垣間見ることができました。
 
 エマッド役のシャバフ・ホセイニが、なかなかの男前でした。コリン・ファレル+ジェラルド・バトラー、みたいな感じ?優しそうで知的なところも魅力的。寛容で冷静な表面と、グツグツと怒りと猜疑に煮えてる内面のアンビヴァレント演技が素晴らしかったです。カンヌ映画祭男優賞受賞も納得。ラナ役のタラネ・アリドゥスティも美人。気丈に見えて不安定な女心を静かに力演してました。エマッド夫妻が立つ舞台劇「セールスマンの死」も、最初から最後までちゃんと観たくなりました。イランにも行ってみたくなりました。観光旅行記とか幾つか読んでみましたが、イメージしてるような不穏で危険な国ではなさそうです。

 ↑薄っぺらい塩イケメンより、濃ゆい中東イケメンのほうが美味しそう(^^♪シャバフ・ホセイニはファルハディ監督の「別離」にも出演してるらしいので、観るのが楽しみ
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母をたずねて1万キロ

2017-05-14 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「LION/ライオン 25年目のただいま」
 インドの貧困地で家族と暮らす5歳の少年サルーは、迷子になってしまい遠い町で保護され、養子としてオーストラリアに住む夫婦に引き取られる。成長したサルーは、微かな記憶を手がかりに、グーグルマップで生地と家族を探し出そうとするが…
 なぜタイトルが「ライオン」なのか、映画を観たら判ると聞いて楽しみにしていたのに、たまたま観たバラエティ番組で、ゴーリキあやめとお笑い芸人が得意げにネタばれしてたありえない~ふざけんな~
 とまあ、観る前にテンション下げられてしまいましたが、高く評価されたのも納得の佳作でした。私は冷血人間なので、涙までは流さないものの、ちょっとウルっとなりそうにはなりました。感動しやすい人は、きっと泣いちゃうと思います。悲劇をネタにしたお涙ちょうだいは苦手ですが、喜びと幸せで涙を誘う映画は好きです。
 この映画、実話を基にしているのだとか。世の中たくさんのウソみたいなホントの話が起きてはいますが、サルーの数奇な人生もまさに事実は映画よりも奇なり。グーグルで生まれ故郷を突き止めるというエピソードにも驚かされましたが、もっと信じがたかったのは、幼児が迷子になって家族と生き別れになって、インドからオーストラリアに流れていくという展開。あんなこと、ありえるんですね~。いくら何でも、日本では同じようなこと起きないと思うし。行方不明となった痴呆老人が、数年後に遠く離れた施設で発見されるってのは、たまにあるけど。子どもの場合は、事件事故に巻き込まれていないかぎり、どこかで保護されたらすぐに身元は判明するはずだし。汽車に閉じ込められたサルーが、何日も乗ったまま誰にも見つからないとか、衝撃的すぎました。駅であんな小さい子が独りでいたら、日本ならすぐに駅員やお巡りさんが保護するでしょう。でも、インド人は誰も気にせず無視、もしくは邪険に扱う。街をさまよった挙句、5歳の子がホームレス!しかも数か月も!でもあのインドの様子を見てたら、それもありえるんだろうな~と、日本との社会や生活の相違にカルチャーショックを受けました。

 それにしてもサルー、その心身のタフさに驚嘆!とても5歳児とは思えぬサバイバル力、冷静沈着っぷりでした。私なら、ぜったい精神的に異常をきたすわ。家族を恋慕いながらも、取り乱したりせず淡々と運命に逆らわないサルーの様子に、どうでもいいことで錯乱しかける自分が恥ずかしくなりました。危ない目にも遭ってたけど、うまくすり抜ける賢さ、勇気も大人顔負け。私なら確実に野垂れ死に、もしくは変質者の餌食か売り飛ばされるかです。タフで聡明だったからと同時に、運のよさのおかげで命を落とすこともなく、もっと過酷な運命をたどらずにもすんだサルーです。それにしても。「ムーンライト」のシャロンもでしたが、何の罪もないいたいけな子どもが非道い目に遭うのは、本当に悲しく憤りを覚えます。今もまだ、社会は子どもに冷たく害悪に満ちています。
 シャロンもサルーも、辛酸なめまくりの過酷な少年時代を余儀なくされましたが、一方では人一倍の優しさや愛にも恵まれてもいました。サルーを引き取って慈愛を注いだオーストラリア人夫婦も、まるで生き仏のような人たちでした。サルーは本当に幸運でしたよ。虐待する鬼畜のほうが、出くわす確率は高いですし。冷血人間の私は、愛する家族がいても貧しく絶望的な未来しか待ってないインドを忘れて、豊かで希望に満ちてるオーストラリアで躊躇なく生きることでしょうなのでグーグルで故郷探しもしませんサルーのように、自分だけが裕福に暮らしていることへの罪悪感は、おそらく感じないでしょう

 この映画を観て、私は中国残留孤児のことを思い出しました。ネットがある現代社会に生まれたことも、サルーには大きな幸運でした。
 サルー役は、アカデミー賞作品賞を受賞した「スラムドッグ$ミリオネア」が今はもう懐かしいデヴ・パテル。彼はこの映画での好演で、オスカーの助演男優賞にノミネートされました。

 スラムドッグではまだ少年だったパテルくんが、すっかり大人の男に成長!しかも、なかなかの男前になってる!たま~に、カープの野村祐輔に似て見えたのは私だけ?ノムスケを黒く濃ゆく精悍にした感じ?インド顔だけどインド臭がキツくないパテルくん。それは実際には彼がインド系イギリス人だからでしょうか。インドの濃さとイギリスの文化的なところが合わさった雰囲気が、サルー役に適してました。少年時代とは別人のような男くささ、マッチョなカラダがイケてました。ふたつの故郷の間で心が引き裂かれる繊細な演技にも惹きこまれます。どう考えても主演なんだけど、なぜ助演男優賞候補?オスカーってよくそういうこと、ありますよね。大人の事情?

 幼児サルー役の子役、サニー・パワールくんがミラクルな演技!恐ろしい子!めちゃ可愛いけど、日本の子役みたいな白々しさ、気持ち悪い媚がなく、ガキンチョなのに聡明そうで思慮深そうなところが驚異でした。
 サルーの養母スー役を、オーストラリア出身のニコール・キッドマンが好演。いつもの氷の美女なニコキさんではなく、優しいおばさんな彼女が新鮮でした。大物女優にありがちの悪目立ちに陥らず、押しつけがましい独りよがりな熱演ではなくて好感。実際にもニコキさん、大女優なのにいい人っぽいですよね。スーがなぜ養子をもらって愛を注ぐのか、その理由がスピリチュアルすぎて、ちょっと怖かった。神秘体験を語るシーンのニコキさんも薄っすらヤバい人っぽくて、やっぱフツーじゃないニコキさんでした。
 サルーの恋人役は、「キャロル」での好演も記憶に新しいルーニー・マーラ。彼女もニコキさん同様、私!私を見て!な演技ではなく、控えめで静かな力強さが心地よく印象的でした。
 本編終了後に、本物のサルーがスーを伴ってインドの実母を訪ねる実際の映像が。ここが一番グっとくる感動的なシーンかもしれません。
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阿鼻叫喚!地獄のジャングル人質生活

2013-09-01 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 September!早いもので、今日から9月。ようやく暑さも落ち着きそうな空気に、秋の気配を感じます。
 ところで。久々に出張で大阪に行ってきました~♪
 仕事を終え、帰りの高速バス(不景気で新幹線は使わせてもらえない)に乗るまで時間があったので、大学時代のダチに連絡して飯でも食おうかと一瞬だけ思って、気がつけば独り気ままにブラブラ。大阪、相変わらず人が多いなあ。そーいや前にTVで、阪急梅田駅の高架下にある美味しいパンケーキの店を紹介してたっけ。何か無性にパンケーキ食いたくなってきた。雑踏にまぎれながら、パンケーキの店【Butter】へ向かいました。
 お店はこじんまりしつつオシャレな感じで、店内は99%女子でほぼ満席。おしゃれ女子の集う場なの?!苦手…と怖気づきながらも、いったん入ったが最後、にこやかな女性店員に導かれるまま席へ。メニューを見ると、どれも美味しそう。“クレームブリュレ窯出しフレンチパンケーキ”すげー!と感嘆しつつ、たぶん全部食べきれないと断念し、結局“発酵バターの窯出しフレンチパンケーキ“とカフェオレをオーダーしました。

 お味は…もうここ以外のパンケーキは食べられない!とまでは絶品ではなく、フツーに美味しかったです。ちょっと高いとは思ったが。
 その後、小雨まじりの街ブラを楽しんで、映画を観て、そしてバスに乗り込んで帰路につきました。都会もいいけど、やっぱ地元がいちばん落ちつきますね。涼しくなったら、またブラっと独り旅でもしよっかな。

 「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」
 フィリピンのリゾート地パラワン島で、武装テロリスト集団が観光客を誘拐する。事件に巻き込まれたフランス人ソーシャルワーカー、テレーズも人質としてジャングルに連れ去られ、死と隣り合わせの過酷で絶望的な日々を強いられることに…
 実話を元にしたノンフィクション・フィクション映画。アメリカの同時多発テロとほぼ同時期に起きた、今なお未解決で謎が多くのこる誘拐事件の顛末を描いた作品です。
 もうこんな映画観ると、世界に安全な場所なんてどこにもないんだなあ、と恐怖と嘆きで暗澹となります。まさかリゾート地であんな恐ろしく理不尽な目に遭うなんて、いったい誰が予想できるでしょうか。何の罪もないのに、精神的肉体的苦痛を強いられる人質が、本当に可哀想。救出前に死んでしまった人質たち、あんな場所であんな死に方、その無念は察するに余りある。まさに犬死。何年か前にイラクで、危険勧告を受けながら居座ってテロに誘拐され、莫大な身代金を政府が払って解放された非営利団体の日本人たちが問題視され、“自己責任”という言葉が流行りましたが…この映画の人質は、それとは全然ちがいます。
 テロリストに脅されて言いなりになるしかなく、死のジャングルを延々と彷徨。疲労と絶望のあまり恐怖も怒りも意思も失くしていく人質たちの姿を、緊迫感あるリアルなドキュメンタリータッチで追っています。早く誰か助けてあげてー!という祈りと、何で救出してもらえないの?!というもどかしさに、歯ぎしりなしでは観られません。だって、決して他人事ではありませんから。9・11以後、どこにいたって私たちの身は安全ではなくなってますし。いきなり爆弾で殺されるのもイヤだけど、この映画のようにわけのわからないところへ拉致され、脅されてテロリストの勝手な主義や都合を押し付けられ、動物同様の生活を無理強いされるなんて、考えただけでも発狂しそうになります。

 それにしても人質の皆さん、よく気も狂いもせず耐えられたなあと、同情以上に感服。ジャングルの中で一年以上ですよ。心もカラダも私ならボロボロにコワレちゃうよ。さまよい潜伏するジャングルが、これまた地獄なんですよ。いきなりのスコール、川を渡ればヒルが吸い付き、足元にはサソリがカサカサうごめいてて、朝起きると全身にアリがたかってて、巨大なヘビが不気味に近づいてくる…そんなワイルドすぎる場所で野宿生活。一日たりとも無理です。ジャングルの自然の脅威のみならず、テロリストとフィリピン軍の銃撃戦が非道すぎる!これが最悪かもしれません。空から地上から、ジャングルだけでなく病人や妊婦のいる病院まで総攻撃。人質や国民の人命なんか、お構いなし。めんどいからまとめて片付けちゃえ!と言わんばかり。まさに悪夢の十字砲火!阿鼻叫喚の地獄絵図に慄然とせずにはいられません。一気呵成にテロ殲滅も、方法があまりにも乱暴で雑すぎる。今年1月にアルジェリアで、同じような事件が起きて日本人が無残な死を遂げたことも思い出されて…あらためて、これは決して絵空事じゃない、いつわが身に降りかかってもおかしくない災いなんだ、と肝に命じました。それにしても…フィリピン政府、よくこの映画の製作を許可したなあ。誘拐事件が早期解決しなかったのは、政府が無能だったからとしか思えないし。国民があまり動揺したり騒いだりしてなかったのも、何だか不可思議で怖かった。誘拐がビジネス化してしまい、もう珍しくもないことになってるからでしょうか。フィリピンも怖い国だ…とにもかくにも、テロは卑劣な犯罪、許すまじ!です。

 極限状態になると表出してしまう、人間の残酷さや醜さもイタい。人質の皆さんは概ね、冷静で忍耐強い人ばかりだったのですが、潜伏先の病院で、空腹のあまり入院患者の食事を奪ったりとか、私なら絶対しない!なんて言いきれない行為に胸苦しくなる。あと、いわゆるストックホルム症候群というのか、犯人と人質が寝食を共にしてるうちに共感や親愛を芽生えさせる現象。テロリストたちのほとんどが若者、あるいは少年で、中にはイケメンもいたりするので、人質の若い女の子といい感じ、なんてことにも。テロリストの連中は、狂信的な野蛮人なんだけど、たまに若者らしい朗らかさや気のよさを見せたり。やはり同じ人間、まったく分かり合えないわけではないのに、という微かな希望も抱かせてくれます。でも、やはりテロと人質、近づけたようで遠い関係でしかない。テレーズとテロの少年(ちょっと昔の池松壮亮似でカッコカワいい!)との交流が、微笑ましくも悲しかったです。 
 テレーズ役は、フランスの大女優イザベル・ユペール。

 泥まみれ、傷だらけになって人質を熱演してます。いつもは無表情で冷ややか、そしてエレガントでシックな彼女なので、怯え嘆き、絶叫号泣、怒りに燃える姿は、珍しく新鮮でもあります。人質の中ではテレーズいちばんクールで知的な感じがするためか、テロリストたちからも何となく一目置かれてるという設定は、イザベル・ユペールだから説得力があります。スッピンでシワも隠さず、痛ましいズタボロヨタヨタ演技は、まさに女優魂のなせるわざ。きれいなだけの吉永小百合とかは、ぜったいやらないでしょうし。それにしても、還暦にしてますます精力的なユペール女史。真の役者とは彼女のような人のことを言うんだろうなあ。CMで稼ぎたいから仕方なくドラマや映画に出てるような日本の“なんちゃって女優”と同業扱いするのは、彼女に失礼ですよね。ユニークで有意義な映画なら、監督のキャリアとか製作国の国籍は関係なし、安いギャラも過酷なロケも断る理由にならない、という彼女のスタンスはまさに女優の鑑。だからこそ、いろんな国の監督が彼女と仕事をしたがるんでしょう。事実、イザベル・ユペールが審査員長を務めた年のカンヌ映画祭で、監督賞を受賞したブリランテ・メンドーサ監督も、彼女にインスパイアされてテレーズ役を創作したのだとか。才能ある監督の創作意欲を刺激して、あなたのために脚本を書きました!どうか出演してください!と懇願させるのが、大女優の証し、条件なんですよね。韓国、フィリピンの次は、ぜひ日本映画に出てユペりん!しかし、彼女ほどの超大物を巧く使いこなす監督、日本にいるかな?ユペりんが興味をもってるらしい是枝監督よりも、園温子監督とかと組めば面白そうだが。

 楽しみにしてた「サスペリア」のリメイクは、どうやら頓挫しちゃったみたいで残念。「修道女」のリメイク“La religieuse”では、色き○がいの中年レズ尼さんを怪演してるユペりんです。予告編(こちら)の彼女、ヤバすぎ~早く観たい♪
 
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ワイン色のBL!

2012-10-26 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 秋深しタバコ吹かしてイモ蒸かし
 食欲の秋、芸術の秋、読書の秋、恋愛の秋etc.皆さまも秋を楽しんでおられることと存じます。
 私は平日休日に、ピーターと呉の野呂山にドライヴしました。紅葉にはまだ早かったのですが、小春日和の秋の山は空気もきれいで快適でした。楽しかったのは、山道を傍若無人に爆走できたことです。野呂山は、地元では有名な走り屋ご用達のコース。平日の昼間だったので、イカした頭文字D野郎どもはいませんでしたが、他の車をあまり気にせず疾走することができました。急カーブが怖くて面白かったです。何度もガードレールを突き破って崖下に転落しそうになりました。どうやら私、普段は臆病なくせに車に乗ると性格が豹変する危険なタイプらしいです。あの~運転かわっていいですかあ?と、ピーターに何度も言われてしまいました。
 野呂山の頂上にある野呂山高原ロッジで、名物の猪ハンバーグを食べました。猪肉は初めてだったのですが、正直あんまし美味しくなかった…びっ○りドンキーのハンバーグのほうが美味しいです。猪カレーを食べてたピーターも、もう二度と来ないと愚痴ってました。完食してたけど。
 それはそうと。去年退職して実家の家業を継いだSくんという子が、ピーターに最近ストーカーのようにつきまとってるらしいのです。毎日毎晩電話やメールがきて、遊びの誘いや相談事攻撃。メールを見せてもらったのですが、読む気も失せるようなものすごい長文で、しかも意味不明な内容。Sくんは今、どうやら情緒不安定らしいのです。しかも、金銭トラブルに直面してるらしい。そのトラブルの内情が、かなりヤバいにおいがするので、百戦錬磨なピーターもさすがにドン引きしてるのです。Sくんのトラブルについては、また今度お話したいと思います。どなたかに、よい知恵をさずけていただきたいので…

 「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」
 19世紀のフランス。ブルゴーニュ地方の農夫ソブランは、自らの手で最高のワインを造ることを夢見ていた。そんな彼の前に、天使が現れて…
 「クジラの島の少女」のニキ・カーロ監督作品。
 天使とか悪魔とか妖精さんとか、ファンタジーなキャラが出てくる映画が苦手な私ですが、この作品は思ってたほどそっち系の色は濃くなくて、意外すぎる方面で濃かったのが嬉しい驚きでした。
 何が濃かったのかといえば。私が三度の飯より好きなBLです可愛く逞しい農夫と美青年な天使が、女たちを巻き込んでドロドロな刃傷沙汰恋愛!ソブランと天使は、男同士の友情が強すぎ深すぎてちょっと危ない、というよくあるパターンな友情+α的もどかしいBLではなく、かなりガチなBLなのです。ソブランの前に半裸の男天使が現れた時点で、かなり場面は薔薇族色に染まっています。ここで一生涯会おうよ、と約束しあう男二人。妻に内緒で天使とイソイソと密会するソブランの姿は、後ろめたいけど自分を抑えられない隠微な情熱が感じられて、こっちまでドキドキします。末娘が病死して悲嘆に暮れるソブランを、優しく抱きしめる天使。そんな天使にキスを迫るソブラン。戸惑い逃げる天使ですが、ソブランに会うことは止められない。今度は自分の正体を知ったソブランに拒否られた天使のほうが、攻め態勢に入ったり。会いたくて会いたくて震える~♪西野カナも呆れるほど、誤解や駆け引きで盛り上がる男たち。そこに嫉妬に狂ったソブランの妻が、この泥棒猫!死ねー!!と天使に包丁振り回して襲いかかったり、恐ろしくも面白い修羅場が展開されるのです。泥棒猫が女でも人間でもなく、男で天使なところが特異です。とにかくソブランの、単なるヤリチン?と思えてしまうほどのモテ男っぷりが、この映画の主題っぽいです。

 ラブシーンがワイルドです。ソブランとその妻はほんと野生児で、彼らのアオカンや家での夫婦生活は、開放的で原始的な若々しさ、生命力にあふれてます。ソブランの屋外セックスでの腰の動き、高速&激しすぎて笑えました。麻○彰○も驚く空中浮遊なソブランと天使のラブシーンも、変で笑えます。
 この映画を観たのは、もちろん愛しのボーギャルソン二人、ジェレミー・レニエとギャスパー・ウリエルの競演作だからです♪

 ソブラン役のジェレミー・レニエ、男らしくて可愛い愛の妖精」と同じく農夫役なのですが、さらに逞しく頼もしい魅力を加えていて、ますますE男に。あんな農夫にいろんなところを耕されたい♪と思ってしまいます。ジェレミっちの肉体美も見ものです。それはそうと。ジェレミっちとガエル・ガルシア・ベルナルが、私の中ではスゴくカブるんですよね。顔もだけど、ガッチビ(ガッチリしたチビ)なところも似てる。金髪ジェレミっちは薄口で明るくてバカっぽくちょっぴりブサイク入ってて、黒髪ガエルっちは濃口で暗くて賢そうで端麗ですが。

 天使役のギャスパー・ウリエルは、エンジェルのくせに何か耽美的にエロいところがトレビアン。あんな天使が目の前に現れたら、エクスタシーで昇天希望です。ガチムチなジェレミーに対し、ギャス男の裸はイタリアの絵画から抜け出したような柔美さです。ちょっとアゴが尖りすぎて時おりヘンな顔に見える最近のギャス男ですが、美男子であることは間違いありません。優しそうで遠い瞳が好きです。
 ベルギー人のジェレミっちとフランス人のギャス男が、英語で演技してるところも新鮮な映画でした。ぜひフランス語での再共演を!
 ソブランの妻役は、ニキ・カーロ監督の「クジラの島の少女」でオスカーにノミネートされた、ケーシャ・キャッスル・ヒューズ。ワイルドで情念的な風貌とキャラは、なかなかインパクト大。脱ぎっぷりも良かったです。男爵夫人をジト~と睨む目つきや呪いの贈り物が怖いです。あまりにも少女っぽいので、成長した長女のほうが年上に見えました。
 男爵夫人役は、「マイレージ、マイライフ」でオスカーにノミネートされたヴェラ・ファーミガ。美人ですが、貴族っぽくなくて庶民的な親近感のもてる美しさ。手術シーンでヌードも披露。彼女の衣装が目に楽しいです。
 ブルゴーニュの美しい風景や、ワイン製造の過程なども興味深かったです。

 ↑ジェレミっち、いい感じに可愛いおっさん化してますよね

 ↑ギャス男、こーして見ればやっぱ稀有な美男ですよね。こんな外人、そのへん歩いてないもん

 ↑ホントにBLカップルだったら、どっちがタチでネコやろか。リバっぽいですね。
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自己責任!迷走危険地帯

2008-07-18 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「フリー・ゾーン 明日が見える場所」
 エルサレムで暮らすアメリカ人レベッカは婚約者と別れ、失意の中イスラエル人ハンナのタクシーに乗り込む。ビジネスのためヨルダンのフリー・ゾーン(自由貿易地帯)に行かねばならないハンナに、レベッカは同行するが...
 イスラエル映画を観たのは、これが初めて。中東問題・紛争って、ほんと複雑で根が深くて、私などチンプンカンプンに近い。最近は日本も平和とは言えない状況になってきてるけど、イスラエルや中東諸国に比べると、まだまだ安全な国だと思えます。
 イスラエルからヨルダンへ向かうレベッカとハンナの目を通して描かれる、物騒な様子と緊迫した空気は、まさに中東って感じです。国境の検問所の厳しさ、小さな村を襲う恐怖の焼き討ち、ラジオのテロ予報etc.ほんと日本に生まれてよかった、と痛感します。
 イスラエルやヨルダンの一般市民の生活風景など、普段なかなか目にすることが少ないシーンの数々に、ちょっとした観光気分が味わえます。漂う空気感も含めて、日本とは何もかもが違う異界のような地域なので、一度は訪ねてみたいものです。
 アメリカ人のレベッカ、イスラエル人のハンナ、ハンナのビジネス相手であるパレスチナ人のレイラ。3人の女性が、それぞれの国を象徴しているような役割を担っているのが、なかなか巧妙で面白いです。別に政治的なぶつかり合いをするわけではないけど、なにげないやりとりが3つの国の立場や主張を表しているように見える。国家とか民族とかが絡むと、憎悪や敵意が萌すイスラエルとパレスチナだけど、一人の人間、女性として向き合えば、解かり合えるし助け合うこともできる。お金のことで意見が食い違うハンナとレイラだけど、お互いに困ったことが起きれば、手を差し伸べ合うことができる二人。車の中で仲良く歌を歌ったり。国と国もこうあるべき、こうあってほしい、という理想や願いが、2人のやりとりにこめられているようです。でも、ラスト。レベッカの行動と、ハンナとレイラの争いの再燃は、アメリカへの痛烈な皮肉と中東和平への悲観・懐疑とも受け取れます。堂々巡り、エンドレスループな憎しみや争いの虚しさを訴える、映画の冒頭に流れる歌が耳に残ります。
 レベッカ役のナタリー・ポートマンは、イスラエル生まれだとか。ナタポー、相変わらず子供みたいですが、やっぱ美人ですよね。それに、見るからに賢そう。この映画に出たのも、私は知性派女優なの!と言わんばかりですが...
 ハンナ役のハンナ・ラズロは、この映画でカンヌ映画祭女優賞を受賞。イスラエルでは人気のコメディエンヌだとか。演技も風貌の、気風のいいオバチャンって感じで、いい味だしてます。レイラ役のヒアム・アッバスも好演。
 
 
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雷神の子テムジン

2008-04-04 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 先日、久々に試写会に行きました。
 時間があったので、ドトールでカフェタイム。店の男の子が、めっちゃイケメンでした~!コーヒーより彼を注文したかったです♪
 で、試写会の会場。何だか妙に年配男性が多かった。スポンサーがお酒の会社だったから?私の隣席のお爺さん、加齢臭が強烈で...前方席に座ってた爺さん、すごい大声(しかも、よく通る声!)で、ずっと独り言。隣の席にいた若い男性が、うんざりしたみたいで空席に逃げた。さすがに放ってはおけなかったのか、係員が丁重に注意してた。それでもクシャミや咳払い、上映中は大イビキ!何なの、あんた!何しに来たの?!誰かが送りこんだイヤガラセ工作員としか思えませんでした。こんなエチケットブレイカー、なかなかいないよなあと、ヘンな意味で感心した私です。
 次は「NEXT ネクスト」と「砂時計」の試写会、当たってほしいなあ。
 
 「モンゴル」
 今年のアカデミー賞外国語映画賞の候補になったカザフスタン映画。主演が浅野忠信だったこともあり、日本でも話題に。
 モンゴルの英雄チンギス・ハーンの、波乱万丈な闘いの半生を描いた叙事映画。いや~期待してたより、面白かったです!さすがオスカー候補になるだけあって。スケールの大きいスペクタクルだけど、シーンや映像の細部に独創的なところもあって、ハリウッドの大味なビッグバジェット映画とは、やっぱ違います。2時間で終わるのもgood!最近、やたら長い映画が多いもんね。
 主人公テムジン(後のチンギス・ハーン)の、精神的にも肉体的にも艱難辛苦に満ちた過酷な運命が、痛々しくもパワフルです。ほんと、よく生きてるなあ!と感心するばかり。そのサバイバル力、その生命力、人間離れしています。まさに生き神のごとし。神に選ばれし英雄は、天と人、時代に味方されているんですね。
    
 テムジンやサブキャラも、特に個性的ってわけではない。テムジンは典型的な“人格者のカリスマHERO”だし(もうちょっと破天荒な男にしても良かったのでは)、周囲の敵・味方も、日本の戦国武将ドラマに出てくるキャラっぽい。テムジンの奥さんは、なかなかユニークなキャラでしたが。愛する夫と子供を守るためには、ためらわず何でもやる、な潔い捨て身が悲壮かつ豪快。生き抜くこと、闘いに勝つこと優先なので、細かいことに拘泥しない野性の大らかさが、彼らの魅力ではあります。
 荒々しい戦闘シーンも、ド迫力。でも、この映画で最も素晴らしいのは、やっぱ壮大かつ神秘的な大自然と天候の描写でしょう。テムジンよりも主役っぽい。圧倒され、魅了されます。砂漠や高原の広大さ、暑さ寒さの苛烈さを擬似体験できる、みたいな。でもホント、真の美しさって、人間の手を加えることのできない神の領域のような厳しい場所にしかないんだなあって思った。小さく狭い便利な都会の街や、パラダイスちっくな楽園では、心揺さぶるような美を感じることはないですよね。
 テムジンの願いを聞き届ける神の化身として登場する、狼と雷が神話的でスピリチュアルな存在感。ラスト近くの最終決戦シーン、激しい雷鳴と雷光を背にする馬上のテムジンは、敵も味方も畏れおののき平伏するのも分かるほど、ほんと雷神そのもののようなカッコよさです。
 テムジンを熱演した浅野忠信、ほんと頑張ってます!感服した!全編モンゴル語ってのが、まずスゴい。風貌も、そりゃ仮病モンゴル人横綱とかに比べると、やっぱ日本人って感じですが、目が細いところとか、あまり違和感はなかった。超人的だけど、すごく優しくもある素敵な英雄を演じてました。
 浅野忠信の映画って観たことなかったので、ワタシ的には映画俳優というよりCMタレントって感じだった彼。いい役者じゃん!と感嘆したし、TVでインタビューされてた素の彼も、飾らない優しそうな男性で、いい感じ。なので、さっそく彼のフィルモグラフィを調べたのですが...うう~ん、いっぱいあるけど、観たい作品が全然ない。やっぱ基本的に、私は単館系の邦画が苦手みたいです。
 それにしても。同じチンギス・ハーン映画でも...反町隆史のほうは去年の邦画ワーストと嘲笑され、浅野忠信のほうはオスカー候補。差がつきすぎ。CHARAの高笑い、松嶋なな子のヒステリーが聞こえてきそうです。
 この映画、ちょうど日本でいうと鎌倉時代が始まった頃の話ってのも、興味深かったです。あと、屋外でちぎって食べる肉が、妙に美味そうだった。
         
 浅野さんも、“オスカーに関わったことがある日本人俳優”の看板で、一発屋の歌手が唯一の大ヒット曲でアチコチ営業してる、みたいな同じ事務所の後輩・菊池リン子みたいになるのでしょうか?リン子は「バベル」以降、女優として活躍してるの?外国から有名な映画スターや監督が来ると、必ず日本代表女優みたいな顔で現れ、一緒に仕事しましょう♪なんてオネダリしてるけど...
 
 
 
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ガイPのGスポット☆

2007-07-12 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 戦慄!ご近所事件簿(前編)
 実家の二件隣に住む独身男性T氏(52、3歳ぐらい。老母と二人暮し)。以前から、その不審な挙動が怪しまれ、近所から恐れられています。
 野良猫に残飯をやっているので、近所の庭はネコだらけで糞尿まみれ。野良猫は無責任に可愛がるのに、犬を飼っている近所には、うるさい!とか電柱で尿させるな!とかクレームを。真夜中に、何の目的なのか、うろうろ徘徊しているのも、不気味がられています。私が受験生の頃、夜中に勉強してると、かすかに気配を感じてそっと窓から外をのぞいてみると、暗闇の中、T氏がデカいキャリーバッグをひきずって歩いてたり、立ち止まって隣の家をじっと見上げてたり。ゾゾゾ!
 最近では、近所の自転車のタイヤがパンクさせられてたり、壁に赤いスプレーかけられてたり。ポストにネコのフンを入れられていたり。私のバイクも、シートを2回も切り裂かれました。目撃者も証拠もないけど(数年前隣町で、生ゴミを庭に放り投げられて困っていた家が密かにつけた防犯カメラに、ゴミ袋を持って門前をウロついているT氏が写っていたので、警察沙汰になったらしい。その家とT氏とは、前に金銭的なトラブルがあったとか)99%彼の仕業だと、みんなひそかに確信しています。いつか、尻尾を掴んでやる!
 ゆうべ母から聞いた、つい先日また男性が起こした異様な行動とは...
 続く。

 「第一容疑者 最終章」
 久々に我が愛しのガイ・ピアースに逢いたくなったので、旧作をレンタル店で探し出し、鑑賞。
 敏腕おんな刑事が、麻薬密売組織に探りを入れるため、さびれた漁港町にやってくるが...
 タイトルは同じですが、ヘレン・ミレンのジェーン・テニスン警視ものとは別物です。まったく関係ない各国のB級サスペンスを、勝手にシリーズものみたいにしているシリーズ?これは、オーストラリアのTV映画みたいです。
 あいや~!!ガイピー、めっちゃカッコ可愛いやんけ~!ああ~やっぱ彼はE男!しばらく逢わない間、忘れかけてた愛が今、再燃!
 町はずれに住む謎のイカしたアメリカ人サーファー、その実態は...な役のガイピー。まるで彼が主役みたいな触れ込みですが、それは詐欺に近い。バリバリの脇役です。中盤までは、あんまり出番もないし。でも、男前~「L.A.コンフィデンシャル」と同じ年の作品なので、まだちょっと若く、ひげヅラでも分かるツルリンコ肌!いつもダボダボな服を着てるのも可愛い。ちょっと小柄なのもキュート。ちっこいけど、すげー肉体美。俺の肉体を見よー!な脱ぎ男ガイピーですが、この作品ではシャワールームから出てくるシーンだけ、チョコっとサービスショット。OH!やっぱセクシイナイスバディ!眼福眼福♪ワイルド&シャープな猿男ガイピー、my 理想型男前です。
 って、ガイピーのことばっかじゃん!ですが、それだけの作品だもん!内容は、ほとんど火サス。男勝りというより、アバズレでヒステリックで自己チューなヒロイン(ジュリエット・ビノシュ似。顔が、です)の潜入捜査も、ユルユルで緊張感ゼロ。同じチープさでも、ド派手でエロい日本のVシネマサスペンスのほうが、面白い。せめてガイピーとヒロインが、とってつけたようでもいいから、エロい関係になってたら、まだ楽しめただろうに。ガイピーのムダ使いが悲しい。
 ガイピー、いっぱい新作あるみたいだけど、ぜんぜん日本に来ないなあ~何でもいいので、公開されないかなあ。
    
 ↑誰が何と言おうと、私には極上の男前に見えるのです...
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