まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

スネに傷ある女だけれど

2010-04-15 | フランス、ベルギー映画
 何につけ流行に乗れない私ですが、先取りしなくていいものはしっかり最先端をイっちゃいます。まだ四月半ばだというのに、もう五月病に罹っちゃってるし...
 すご~く何もかもがしんどい、めんどいです...そんな自分に自己嫌悪で、ますます鬱々した気分に。来週、職場の小旅行があるのですが、無理してカラ元気を出してる自分の姿を想像しただけで、もう倒れそうなほど疲労感が...
 今年は例年以上に五月病がキツいなあ。何かパーっと明るくなれる秘訣があれば、乞御教示!

 「ずっとあなたを愛してる」
 ずっと前から観たかったフランス映画。作家のポール・クローデルの初監督作品。
 15年の刑期を終えて出所したジュリエットは、妹であるレアの家に身を寄せる。ジュリエットの閉ざされていた心は、レアとその家族、友人たちとのふれあいで、しだいに開かれてゆくが...
 なかなか心にしみる佳作でした。静かで淡々としているけど、緊張感や謎に満ちていて惹きこまれました。ジュリエットがどんな罪を犯したのか、なぜ犯したのかをなかなか明かさないところも、巧い演出と脚本でした。
 ヒロインのジュリエットが、興味深いキャラでした。日本だったら、大罪を犯した翳と苦悩を引きずった、重くて暗い女として描かれるんだろうけど、ジュリエットはクールというかドライというか、涙もほとんど見せないし、無表情で寡黙。周囲にも観客にも、同情や理解を求めるような言動など、いっさいしません。でも、深い井戸のような孤独と悲しみの中にいる女だということは、痛いほど感じさせてくれます。言葉や表情にも出せないほどの悲しい傷を背負った女。泣いたりわめいたり、他人や自分を責めたりするエネルギーさえ涸れ果ててしまったんだな~と、痛ましくなりました。
 愛を恐れ避けようとしながら、しだいに戸惑いつつも愛を受け入れ、愛によって生きる歓びを蘇らせるジュリエットの、悲しみの闇から希望と再生の光の中へ出てくる姿が、静かに温かく描かれています。ジュリエットの犯した罪は、ほんと悲惨で恐ろしいものなのですが、ベタベタお涙ちょうだいな悲劇ではなく、こんな悲しみや痛みでさえも耐えられる、癒してあげることができる、という人間の強さと優しさがテーマみたいだったのが良かったです。
 
 でも。ジュリエットは悲劇的だけど幸せでもあるな~とも思った。レアやその家族、刑事やレアの同僚男性など、優しい人たちに支えられ見守ってもらえて。それに、知的で美人、というところも得してるよな~と思った。ジュリエットがもし、親身な身寄りもないバカでブスな女だったら、岩井志麻子や桐野夏生の小説みたいな内容になってただろうし現実だと、再犯か野垂れ死にだよな~
 あと、懲役15年は重過ぎるのでは?とも。ジュリエットが完黙を貫いたとはいえ、よく調べれば動機は判明して、情状酌量になるはずの事件だもん。
 ジュリエット役は、英国人だけど最近はフランスで活躍しているクリスティン・スコット・トーマス。やつれて枯れて美人にした桜井よしこ?に見えた。代表作の「イングリッシュ・ペイシェント」より、今回の彼女のほうが秀逸だった。クールで知的なところがカッコいい。化粧っけのない顔が、リアルだけどナチュラルでした。
 献身的で慈愛に満ちたレア役のエルザ・ジルベルスタインが、好感度の高い好演。レアのキャラ同様、優しくて誠実そうなエルザさんの見た目も好き。おばさんなのに、今でも可愛い(ちょっと広末涼子、シアーシャ・ローナン似?)。彼女みたいなお姉さん、欲しいな~。それにしても、クリスティンおばさまとエルザさん、姉妹役なのに似てなさすぎ。
 はじめはジュリエットを胡散臭く思い警戒してたけど、だんだん家族として義姉を受け入れるようになるレアの夫も、おしゃまで賢いレアのベトナム人養女も、痴呆症で口がきけないけどニコニコしてるレアの舅も、ジュリエットに好意を寄せる刑事やレアの同僚男性など、脇役も印象的でした。
コメント (7)
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