まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

空が落ちる、男たちも落ちる

2013-01-08 | イギリス、アイルランド映画
 「スカイフォール」
 007最新作を、やっとこさ観に行くことができました
 トルコで任務中に負傷し行方をくらませたジェームズ・ボンドは、MI6本部がサイバーテロリストによって爆破されたことを知り、ロンドンに戻り職務復帰する。テロリストの首領シルヴァを捕えることに成功するボンドだったが…
 期待以上の面白さでした!私、正直言うと昔の007はあんまし好きじゃなかったんですよね。歴代のボンド役の俳優がみんなタイプじゃなかった、というのが最大の理由なのですが。ウブで潔癖なネンネだった私には、必要以上に男の匂いを放出させた、濃ゆいけどチャラいエロオヤヂにしかボンドが見えなかった。見てるだけで、ポマードや男性用香水がキツくにおってきて咽そうになった。近未来的なものやファンタジーが苦手な私には、ボンドの秘密兵器もありえなさすぎて納得できなかった。当然ながら、セクシーなボンドガールなんかどうでもよかった。でも…
 ダニエル・クレイグがボンド役となってからは、今までとはまったく別の007に生まれ変わってしまった。まず、ベットリ湿った脂っぽさや濃さがない、薄くて乾いたストイックな新ボンドの風貌に好感。そして、おかしな秘密兵器に頼らない、自分の肉体を最大の武器してズタズタボロボロになって闘う姿は、スマートなスパイではなく不屈のソルジャーみたいでカッコいい。ボンドガールも単なるセクシー要員ではなく、精神的な結びつきが強い相手になっているし。ボンドも話も、かなりシリアスで骨太になったのは、私のような新たなファンを多くっ買う得した勝因になっているのではないでしょうか。
 今回も、とにかくダニエル・クレイグがカッコよすぎ!顔だけだと、ジョニーやブラピ、クルーニー兄貴より年下とは思えないほど、老けたおじいさん顔、そして猿顔なんですが、どんなイケメンや美男よりも男前なる素敵な、そして稀有なマジックを彼はもってるんですよね。こんな動きが何でできるの?!と驚愕、そして陶然となってしまうほど、ハードで峻厳で生々しいアクション。とにかく、ダニエル・クレイグのボンドは極力おのれの体を酷使して闘うため、その激しすぎる満身創痍な肉弾戦の迫力に圧倒されます。ダニエル・クレイグがこれまた、ほんとにケンカ強そうなんだよ。わしでも勝てそうな若い男優のヌルいケンカシーンとは、わけがちがうのです。ここ確実にスタントだな、と失笑するようなシーンがほとんどないですよね。屋根の上のバイク疾走シーンとか、上海でのエレベーターのシーンとか、上手に撮影してましたよね。
 ダニエル・クレイグのボンド、無表情に近いのも好き。漢(おとこ)はやたら笑ったり泣いたりしないもの。ちょっと日本の侍スピリットの持ち主っぽいところも好きです。そして、かつてのボンドと違い、女にニヤけたり軽くないところも。据え膳食わねばな軽薄で自信たっぷりなタイプじゃなくて、ちょっと不器用で真面目なアプローチが可愛くもあって。ダニエル・クレイグのボンドだけですよね、ヤリ逃げしなさそうなのは。

 もちろん、おおっと思わず感嘆の声が出てしまう、その美しい肉体もダニエル・クレイグの魅力。前回の「慰めの報酬」で脱ぎ惜しんでた(?)お詫びのつもりなのか、今回は必要以上にサービス脱ぎしてました。ほんと、どんだけ鍛えてるんだ!美しいけどエロくはないので、鑑賞しやすいダニエル・クレイグの裸です。彼のピチピチプリっとしたケツも好きです。
 私がダニエル・クレイグ最大の魅力だと思ってるのは、彼の見事なファッションの着こなし。フォーマルなスーツ、タキシード、コート、カジュアルなセーター、手袋、浮浪者っぽいヨレヨレ服でさえ、ほんと惚れ惚れしてまうセンスのよさ、カッコよさあれって、ダニエル・クレイグだから似合うのであって、ジョニーやブラピが着ても絶対にあんなエレガントさは出ないと思う。今回特に素敵だなあと溜息だったのは、上海のホテルのラウンジで独りで飲んでるシーンのセーターと、カジノに乗り込む船上のシーンのタキシード。ああ~究極のブリティッシュコンサバ。トム・フォードのデザインを最高に見せることができる男は、やはりダニエル・クレイグで間違いない!by 長井秀和(古っ)でも、鍛えすぎのせいか、何着てもピッチピチパッツンパッツンなのが、ちょっと気になる。
 世界各国を舞台にボンドが闘うのがシリーズの見どころでもあるのですが、今回はロンドンがメインステージになってたのが私には嬉しかったです。雨にけぶる沈鬱なムードも趣深かったです。憧れの街ロンドンが、めちゃくちゃにされまくってます。一般人、いっぱい死んだだろうなあ。特に唖然となった、ていうか、ハチャメチャすぎて笑ってしまったが、地下鉄がボンドに!のシーン。こういう映画を観て最近いちばん気になるのは、ほとんどモブ扱いな一般人の存在です。主人公が敵を追うために一般人の車を奪うってのは、もう当たり前みたいになってるけど…実際あんなことされたら、ワタシ的には自殺ものですよぉ~最終決戦地となったスコットランドの、荒涼とした風景も美しく撮られていていました。

 ダニエル・クレイグ版007は、いちおう国家陰謀とか巨悪組織と闘う筋書になってはいるけど、かなり個人的な愛憎や怨恨がらみで動いてる、のも特徴でしょうか。今回は、ボンドの上司Mをめぐる復讐物語でした。ということで、ほとんどヒロインになっていたM女史。ボンドガールみたいに水着になったらどうしよう!と戦々恐々でしたボンドとシルヴァにとってMは、冷酷な鬼母みたいな存在だったのでしょうか。二人とも、彼女のこと思いきりクソババ呼ばわりしてましたね(笑)。怖い、憎い、でも認めてほしい愛してほしい絶対的な支配者のような母。ほんとは可哀想な女、情は失ってない女、なんて陳腐なキャラにMをしてなかったのも秀逸でした。ジュディ・デンチの冷厳な鬼女ぶりがもう見られないのは、かなり残念です。でも、潔くカッコいい退場でした。

 シルヴァ役は、「ノーカントリー」でオスカーを受賞したハビエル・バルデム。おハビの、ちょっと肩の力の抜けた楽しそうな怪演、金髪とデカい顔もインパクトあり。緊縛したボンドの胸元を、指でまさぐるところが怪しかったです。それにしても。シルヴァの部下たちは、何で彼に絶対服従だったのでしょうか。シルヴァの超個人的な私怨を晴らすために、なぜ命を賭けて闘ってたのか。彼らもMに怨みがあったのでしょうか?仮面ライダーのショッカーみたいな使い捨て雑魚扱いで可哀想だった。
 ダニエル・クレイグ版007は、悪役にヨーロッパの実力派男優を起用する傾向があるみたいなので、その点でも次回が楽しみに。デンマーク(「カジノ・ロワイヤル」のマッツ・ミケルセン)、フランス(「慰めの報酬」のマチュー・アマルリック)、スペイン(おハビ)ときたから、次は…?
 スコットランドのボンドの生家を管理してる爺さん役で、名優アルバート・フィニーが登場。この映画が他のアクション映画と一線を画した高級感を醸してるのは、デンチ女史とかフィニー御大みたいな重鎮が出演しているからでしょう。
 アデルの歌う主題歌がバックに流れるオープニングクレジットも、おとなのムードいっぱいで何度も観たくなるハイクオリティさです。

 ↑Mからボンドへと受け継がれた、この置物…可愛い!ほしい!
 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする