


江戸幕府によるキリシタン弾圧が熾烈を極めていた17世紀の日本。神父ロドリゴとガルペは、弾圧に屈し棄教したと噂される師のフェレイラに会うため、日本人の漂流者キチジローの案内で不法入国し、長崎でキリシタンたちに匿われるが…
2017年最初の劇場鑑賞映画。巨匠マーティン・スコセッシ監督が、長い年月をかけて愛読書である遠藤周作の小説「沈黙」を映画化。日本が舞台、日本人の人気俳優が出ていることでも話題に。
それにしても。完成にこぎつけるまで、ずいぶん時間がかかったものですね~。ずいぶん前に初めて製作のニュースが伝わった時は、ダニエル・デイ・ルイス、ガエル・ガルシア・ベルナル、ベニチオ・デル・トロなど豪華キャストが発表されましたが、それから二転三転して彼らは降板、製作も中止になったり、スコ爺も別の映画を撮ったり、もう立ち消えになったのかな?と残念に思ったてたら、忘れた頃に撮影スタート。映画ファンはすっかり諦めてたけど、スコ爺は諦めてなかった!執念で完成させた、スコ爺渾身の力作。期待してた以上に力強く美しく、そしてホラーな作品でした。

これって、ホントにハリウッド映画なの?信じられないほど、リアルで美しい日本と日本人でした。最近の邦画やNHKの大河ドラマのほうが、よっぽど変で間違いだらけな時代劇ですよ。江戸時代の農民や武士が、私よりも上手な英語(劇中ではポルトガル語、ということになってます)を喋るのは、まあ仕方ないとして、ハリウッド映画の日本&日本人は変、というお約束を見事に裏切ってます。

それにしても。これまで色んな国の色んな宗教き○がい映画やドラマを観てきましたが、この作品が最強最狂かも。キリシタンたちの信仰心の強さに圧倒される、ていうか、ゾっとさせられます。これでもかー!!とばかりに弾圧されるのですが、誰ひとり屈しないんですよ。目を覆いたくなるような残虐で非道な拷問、処刑にも怯まず、むしろ幸せそうに恍惚と苦しみや死を受け入れる様子は、敬虔というより病的なドMに思えて仕方なかった。まさに神さまなんかいない!な地獄なのに、神さまを疑わないキリシタンたち。宗教、信仰ってほんと解からんわ~。解からんほうが幸せかも…

手を変え品を変えな拷問、処刑のオンパレードに、もうヤメテー!!



宗教、信仰はもうヤバすぎるとしか思わなかったけど、日本、日本人の描写には感銘を受けました。生き地獄の中にあっても失わない、日本人の優しさ慎ましさ、そして心の強さが気高く描かれていて、スコ爺の日本リスペクトを感じました。同じアジアでも、某ニーハオ大国や某南北半島の人たちとは、やはり気質、美質が違うことを描いてくれてるようでした。

興味深かったのは、ロドリゴ神父と奉行側のやりとりを見ていて、現代社会、世界と何となくカブってしまったこと。これしかない!絶対信じなきゃダメ!とキリスト教を独善的に押し付けてくる異国の神父を、奉行側は冷静に穏やかに理をもって諭すところが、なかなか説得力があって印象的でした。なので、非道なのに悪人には全然見えませんでした。むしろ、日本を支配しようとする異人から、日本の美しい文化や価値観を守ろうと戦い勝利した正義の味方にさえ思えてしまった。自国を守るため外国人を排斥しようとするところは、トランプさんと同じ。だけど、拝金主義者トランプさんには感じられない理性と高潔さ、誇り高さが奉行側にはありました。
この映画、キャストも素晴らしい!主役のロドリゴ神父役は、新作「ハクソー・リッジ」で今年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされてるアンドリュー・ガーフィールド。

「ドリームホーム 99%を操る男たち」でも思ったけど、どんどんいい男になっていってるガーくん。役者としても絶好調アゲアゲ状態。試練の中で信仰心と絶望に激しく揺れる若き神父を、入魂の熱演。真面目でストイックそうなガーくんに、神父役はすごく似合います。あんなイケメン神父に私も懺悔したい~♡でもガーくん、ボロボロの日本人キリシタンに比べて、こざっぱりしすぎてたような。ズタボロ感が希薄。着物姿も、フツーに東京を歩いてるオサレ外人に見えた。
ガルペ神父役のアダム・ドライヴァー、フェレイラ神父役のリーアム・ニーソンも好演。彼ら以上に、日本人俳優たちの熱演が光ってました。その中ではやはり何と言っても、キチジロー役の窪塚洋介。

ヨースケ、美味しい役もらいましたね~。チョコマカと忙しく動き回り、ロドリゴ神父をイラっとさせるキチジローが笑えた。保身のため仲間や神父を裏切っては、罪深い俺をお赦しくだせえ~!告解を~!と神父に取りすがり、また裏切り、そしてまた…の繰り返しで、ほとんどお笑いキャラになってました。神出鬼没で神父をストーカーするのも笑えたわ。ヨースケ、今でも可愛い!
その他、塚本晋也監督が、俳優以上の名演で瞠目。いちばん英語の台詞が多かったのは、通辞役の浅野忠信?奉行のイノウエ様役、イッセー尾形は何だかコントみたいだった。大好きな加瀬亮も出てましたが、チョコっとだけで、しかも可哀想すぎる末路


この映画、映像も素晴らしく、オスカーの主要部門では完全無視されたけど、撮影賞だけは候補入りしてます。ここ日本?!なシーンもあって、どこでロケしたんだろと不思議に思い調べたら、どうやら台湾で撮影したようです。


↑ついにオスカー初候補!「ソーシャル・ネットワーク」でノミネートを期待されながら落選しガッカリ、も懐かしい思い出。ゴールデングローブ賞では、元カノのエマ・ストーンの受賞に歓喜し、隣席のライアン・レイノルズとブチューっとキス!が話題になりましたね~。どんどんいい男、いい役者になっていくガーくんの今後がますます楽しみ
