

享保15年。不正を告発し藩を追われた瓜生新兵衛は、病死した愛妻の篠の遺言を守り、親友だった榊原采女を助けるために藩に戻る。采女は悪政を敷く家老を退け、藩を立て直そうと苦慮していたが…
時代劇ファンの私ですが、この映画…正直ちょっと、いや、かなりガッカリさせられました。びっくりするぐらいつまんなかった。主演の岡田准一と西島秀俊が、ひたすらカッコつけてるだけ、みたいな映画でした。確かに二人ともすごくカッコよかった。それは否定しません。二人のファンなら大満足でしょう。でも、そんなにファンじゃない私のような者からすると、見た目が美しいグラスに入っていたのはワインではなくサイダーだった、みたいな映画でした。四季おりおりの情景が美しく撮られていて、ロケ地やセットにもこだわりとお金がかけられていたのですが、そういう映像的、美術的な方面に重点を置き過ぎていたきらいが。霧雨にけぶる竹藪で剣の稽古をする新兵衛、しんしんと粉雪が降る中、まるで太極拳のように剣の稽古をする新兵衛と義弟の藤吾、散り椿の前で剣を交える新兵衛と采女etc.美しいシーンにしたい心意気は評価したいのですが、あまりにも作りこみ感が強く不自然で、どう?美しいでしょ?美意識高いでしょ?と圧のような押し付けがましさが鬱陶しくも滑稽でした。

話のスケールが小さすぎるのも、私にはキツかった。田舎の藩のお家騒動なんて、ちっちゃい!セコい!天下騒乱、天皇家や将軍家が血で血を洗う骨肉の権力闘争と権謀術数、な時代劇が好きなの!そして、お涙ちょだいのベタベタしいくせにキレイキレイな純愛とか、私にはオェー!でした。新兵衛が藩に戻ってきた理由が、しょーもな!なんですよ。もっと武士らしく志が高いのかと思ってた。日本の武士が、しかもいい年したおじさんおばさんが、好きだの嫌いだの片想いだのと、トホホすぎるわ~。男尊女卑が当たり前だった当時の封建社会で、あんな人間関係、夫婦関係ないわ~。退屈なポリティカルコレクトネス時代劇だった。BSで再放送されてる「暴れん坊将軍」のほうが、すべての点においてはるかに面白いです。こんなキレイキレイで薄い小さい時代劇を観た後は、ド派手でスケールのデカいトンデモな「柳生一族の陰謀」とか口直しに観たくなります。
新兵衛も采女も、周囲の男女も、みんな欠点がなく高潔で清廉すぎてつまんなかった。人間ってやっぱ、ダークな面や毒、歪みがあるほうが魅力的です。悪役の家老も、セコくてアホなだけ。水戸黄門の悪代官レベル。もっとカリスマなラスボスっぽくしてほしかった。奥田瑛二、ミスキャストすぎるわ。軽すぎるでしょ。もっと重厚で貫禄ある俳優にしてほしかった。

新兵衛役の岡田准一、久々に見ました。すっかり某事務所の映画スターなのに、いまだにV6としてアイドル仕事もさせられてるのが気の毒。岡田くんも、もうアラフォーなんですね~。隔世やわ~。今でもイケメンですが、すっかりおじさんになったわ~。おじさんなのに、成熟した男の魅力がなく、いまだに若い男のつもり風なのが、やはり某事務所タレントというか。すごいチビで、女優より小さい!ガッチリした体格と端正で濃ゆい顔は好き。濃すぎて江戸時代の武士には適してないけど。あの大女優

藤吾役は、池松壮亮。

最近は、どよよ~んとした虚無的な若者役ばかりだった壮亮くんが、こざっぱりとした真面目な青年役、しかも時代劇、ということで、いまだに大河ドラマ「義経」での源頼朝役の彼を忘れられない私としては、すごく期待してたんです。でも…どよよ~んを演じ過ぎたせいが、時代劇でも何だかどよよ~んでした。頼朝の彼は、まだ中学生とは思えぬ凛々しさだったのに。この映画の壮亮くんには、若者らしい生気や溌剌さ、蒼さがまったくなかった。台詞はアンニュイというか棒読みで、声も疲れ果てた中年男みたいだった。無精ひげのない顔は、まるで子どもみたいな幼さでしたが。壮亮くんと西島さんとのツーショットは、「MOZU」のデジャヴでした。