まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

愛と死のオートクチュール

2018-11-28 | 北米映画 15~21
 寒くなりましたね~。皆さまも冬の準備は抜かりないことでしょうか。
 職場では、プランターで慎ましく野菜を育ててます。この夏は、災害でそれどころではなくなり、せっかくのトマトやキュウリもほとんど収穫できなかったのですが、この秋はダメモトで植えたキャベツの苗が想定外に立派になって、みんなで驚喜してます。

 お好み焼きにでも使おうと話し合ってます。小さく鈴なりになるというキャベツも育ててるのですが、こっちは虫食いだらけこないだの朝、でっかいナメクジがいて悲鳴を上げてしまいました。

 種から育てたハボタンやパンジーも、すくすくと育ってます。野菜作りやガーデニングって、素敵なコミュニケーションの手段になるんですね~。職場だけでなく、近隣のおばさまやおばあさまと楽しくお話する機会が増えたり。花咲く春が待ち遠しいです(^^♪

 「ファントム・スレッド」
 50年代のロンドン。オートクチュールの仕立て屋レイノルズは、ウェイトレスのアルマを見初め、彼女をモデルに新作を発表し続ける。レイノルズを愛するあまり、アルマは彼の規則正しい生活、そして心を乱し始めるが…
 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」などの鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督作。3度のオスカーに輝く現代最高の名優、ダニエル・デイ・ルイスの引退作です。この作品でもオスカーにノミネートされました。あらためて引退が惜しまれます。世の中には、引退してほしい、すべき老害がはびこっているというのに。まだまだ活躍してほしい、活躍できるのに、もったいない。でも、輝かしいキャリアも栄光も未練なく捨て去ってしまえるなんて、DDLらしいカッコよさではあります。

 若い頃から、すべてにおいて特別な存在、最高級の俳優だったDDLの多くない出演作には駄作がほとんどなく、彼の演技も心に残るものばかり。「眺めのいい部屋」「マイ・ビューティフル・ランドレット」「マイ・レフト・フット」そして何といってもmy best of DDLといえばの「存在の耐えられない軽さ」…どの作品のDDLも、本当に素晴らしかった。その美しさ、気高さ、神秘性、演技への厳しさで、生ける伝説となった不世出の名優DDLですが、最後の主演作でもその比類なき魅力を遺憾なく発揮していました。

 DDLももちろん年をとって、すっかり枯れた初老となりましたが、老いさらばえた爺臭は全然なし。かといっていつまでも若いつもりな若作りがイタい爺などではない。男って、いや、人間って、本当の魅力はいつかは褪せて衰える若さや見た目の美しさではなく、知性とか教養とかエレガンスといった内面の美しさなんだな~と、この映画のDDLを見てあらためて思いました。イギリスのロイヤルファミリーにもない高貴さ、優美さにうっとり。どんなに演技力が高くても、どんなに努力しても、DDLの持つ貴族的な雰囲気だけは、絶対にハリウッドスターが得られない魅力です。

 見た目と雰囲気だけでなく、声や細かい挙措まで美しく、ほんと神さまが人間に姿を変えて現れるならこんな感じ、な優雅さ、神々しさなのですが、優しそうで物静かなのに近寄りがたい威や厳しさを醸しているところもまた、凡百の俳優にはないDDLの魅力でしょうか。この映画のレイノルズも、内面が複雑すぎ、暗闇を抱えすぎで、観客からの気安い共感とか好感など冷たく拒絶しているかのようなキャラ、そして演技なのです。DDLじゃなかったら、単なるイヤ~なめんどくさい爺になってたところです。

 地位、名誉、才能、金、美貌、すべてに恵まれてるようで、いちばん大事なものが欠けてるようなレイノルズ、痛ましくもヤバい人でした。私はあんな人とは1時間も一緒にいられません。神経質すぎ、屈折しすぎでしょ。自己中心的すぎ、こだわりが強すぎて、ちょっと発達障害っぽかった。天才と呼ばれる人の多くがアスペルガーだとも言われるけど…よっぽど我慢強い人、もしくはドMな人でないと、レイノルズとは暮らせません。対するアルマも、かなり変人。どんなにはねつけられても、レイノルズを自分のものにしようと、彼の気持ちなど忖度なしで強引・無謀な手段に出るウザくてヤバい女。いやがらせ?と思えるほど、レイノルズの調和のとれた厳格な生活ペースをかき乱そうとするところが、レイノルズじゃなくてもイラっとします。めんどくさい者同士、悪い意味でお似合いのカップルでしたが。二人が行きついた愛の形は、私のような健全な凡人からすると気持ち悪いだけです。まあ、他人に迷惑かけないのならどう愛し合おうと自由、勝手にやってなさい!ですが

 アルマよりも、レイノルズの姉シリルのほうが魅力的でした。ありがちな意地悪小姑ではなく、冷たくて厳しいけど、ん?いい人?優しい?と思わせる言動が、カッコいい大人の女性って感じでした。めんどくさいレイノルズとアルマに振り回されることもなく、クールに淡々と、でも堂々と構えてる姿も素敵でした。演じてるレスリー・マンヴィルのクールでエレガントな美熟女ぶり、ああいう女性に憧れるわ~。アカデミー助演女優賞にノミネートされた彼女、授賞式でも印象的な美しさでした。彼女、ゲイリー・オールドマンの元嫁だとか。ゲイリーおじさんのオスカー主演男優賞受賞を目の前にして、どんな思いだったことでしょうか。オスカーといえば、この作品は衣装賞を受賞しました。ハリウッドセレブや韓国成金の悪趣味なファッションと違い、シンプルだけど洗練された高雅なドレスの数々も目に楽しいです。実際の英国王室の方々も、この映画みたいなファッションにすればいいのに。

 ↑世界一美しい、お似合いのカップルでしたわ~…DDLの後継者的俳優の登場が待たれます
コメント (8)
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