まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

運命の旅は道連れ

2023-10-27 | ドイツ、オーストリア映画
 「ボイジャー」
 国連のエンジニアとして世界各国に赴いているアメリカ人のフェイバーは、ニューヨークからフランスまでの船旅で若く美しいドイツ人の娘エリザベスと出会う。恋に落ちた二人は、エリザベスの母がいるギリシャまで旅を続けるが…

 すごく好きな恋愛映画。運命と禁断の恋なんだけど、全然ドロドロでもなく変にドラマティックな悲劇仕立てもしてない、清々しい感じさえする年の差ラブストーリーです。こんな恋に憧れるわ~と、旅をするとこの映画を思い出します。静かな雰囲気と流れの中に、どこか奇異で冷徹なもの、知的で文学的な台詞やモノローグなど、フツーの恋愛映画とはかなり一線を画してる作風は、さすが世紀の怪作「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフ監督の作品。ブリキの太鼓ほどトンデモぶっとびではなく、とても観やすい映画になってるので、クセの強い映画が苦手な方にもお勧めできます。

 運命の出会い…まさしくこの映画の二人がそれ。こんなこと、ありえない!からこそ、甘美な夢となって観る者を酔わせます。運命とか悲恋とか、何だか韓流っぽいけど全然違います。ヨーロッパの香り高い洗練と知性に満ちてます。それにしても。二人を他人として出会わせて恋に落ちさせるなんて、神さまは何て残酷なんでしょう。フェイバーがフツーのおっさんで、エリザベスがブスだったら、恋に落ちずにすんだだろうに。二人を結びつける魅力が不幸と悲劇を招き寄せるのですが、二人の恋があまりも優しく輝いてるので、私の目には奇跡のような恋に映ってしまいました。魅力がないおかげで愛にも恋にも無縁な人間(わしのことですね)のほうが、よっぽど不幸で悲劇的だと思います。

 甘美だけど禁断の恋は、もちろんハッピーエンドになるはずもなく、悲しい結末になるのですが。それさえも、ああこれでよかったんだよな、と安堵させる終わり方。エリザベスが真実を知らずにすんだのは、神さまが最後にくれたせめてもの慈悲でした。もし彼女が知ったら、夢のような恋の物語が一気に、シビアで破滅的な現実世界に陥ってしまってたでしょうから。
 エリザベス役のジュリー・デルピーが、か、可愛い!う、美しい!まるでイタリアの名画から抜け出した天使のような可憐さ、清冽さ!

 デルピー嬢、当時22歳。まぶしいほどの若さで光り輝いてます。抜けるような白い肌、波打つ長いブロンド、清らかな透明感、生活感のないブルジョア感、こんな女優さん今いないですね~。天使みたいな汚れない美しさに加え、エリザベスの闊達で颯爽とした性格や言動には、フェイバーじゃなくても男ならみんな心を奪われるわ。可愛いけど男に媚び媚びなカワイイコぶりっことは真逆な、聡明でドライでクールな女の子なところも、若かりし頃から才媛の誉高かったデルピー嬢らしいヒロインでした。若いのに喫煙が絵になるところも、フランス人女優って感じでカッコいい。そういえば彼女の代表作である「恋人までの距離」も、運命の出会いと恋の話でしたね。神秘的な美しさと行動的な現代女性のたくましさを併せ持つ女優さんです。

 フェイバー役は、作家としても高名だった故サム・シェパード。もう見るからに孤高のインテリって感じな風貌。シャープでシブいイケオジなんだけど、ちょっと顔が鋭すぎて怖く見えることも。グラサンしてたら、某事務所の今は亡き社長に似て見えることがあって戦慄。フェイバーの元恋人でエリザベスの母役を、ドイツの名女優バーバラ・スコヴァが好演してました。
 ラブストーリーを美しく演出する旅先の風景も、この映画の魅力です。冒頭の飛行機が不時着する南米の砂漠、メキシコの奥地、ニューヨーク⇒フランスの船旅(してみたい!)、パリから車でドライブするイタリアとギリシャ。旅心をくすぐられます。

 
コメント (2)
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