昨夜はエアコンの意地悪から避難するべく、わたしは一階のお客部屋で寝た。
朝、旦那が入ってきていきなり、「海に行こ!」と明るく宣った。
確信犯なのであった。
わたしは起き抜けに何か言われると、あまり考えること無く(というかボケまくっているので)、「まあええけど」と答えてしまう癖がある。
それでも旦那は一瞬ひるんだようだ。だって、わたしが海に行ってもいいなんて言う確率は、いくら寝ボケていてもいいとこ半々だろうと思っていたからだ。
とにかく、行くと決めたのだから、起きてまだ意識もはっきりしていないのに、とりあえず日焼け止めを塗った。
タオルや道中の食べ物飲み物は、旦那がせっせとかき集めてくれた。
A子から教えてもらったUV90などという、とんでもない数字の日焼け止めクリームを買いに近くのCVSに寄り、その間に旦那は、隣のダンキンドーナツに入り、アイスコーヒーとオールドファッションのドーナツを買った。
とりあえず今日は、いきなりの海行きなので、普通にドライブして45分ぐらいの所にあるビーチに行くことにした。
ナビに行き先を入れ、いざいざ出発!
あれ?ちょっと、ガソリンめちゃ少ないやん!
まあ、あそこまでぐらいやったら多分大丈夫……やと思う。
うちって、こういうパターン、多過ぎひん?
(聞いてないふり)
そしてそれはやってきた。
見渡す限りの大渋滞。そりゃそうでしょ。休日の、暑くてたまらない晴天の、あんまり早く無い朝なんだから。
で、ガスは?
や、やばいかも……。
気温103℉(39.5℃)の中、エアコンを止めて窓を開け、じりじりと歩くような速さで進む車は、瞬く間に動くスティームサウナと化した。
「いやあ、一足お先にビーチだぜぃ~」とやせ我慢を言いながら、せっせと日焼け止めクリームを塗りっこする健気な夫婦を、気でも狂ったか?と眺めている周りの方々。
いえね、わたし達だってね、好きでこんなことやってんじゃありませんよ!いくら自業自得だからって、こんな暑い思いしたくなんかないですよ!
少しでも下りっぽい道になるとニュートラルに入れたり、最寄りのガソリンスタンドをナビで探したり、いよいよ事態は緊迫してきた。
いくらなんでも、イカ焼きを焼いて周りに売って歩けそうなぐらい熱い鉄板(車体ですね)を押して、この渋滞の道を進むのはいやだ!絶対に!
やっとのことでガソリンスタンドを見つけ、ホッと一安心。ねえ、学ぼうよ、わたし達。そして向上しようよ
当たり前だけど、すごく混んでいた。結局45分で済むはずの所に3時間かけて着き、初めての場所なのでどこに駐車するのがいいのかわからないままどんどん海に近づいて行き、このままだと駐車料金ぼったくられるんちゃう~と心配していると、あらあら、ビーチ直前のロータリーに無料の駐車場があって、そこにポッカリ一台分空いていた。ラッキー!
熱で身体がおかしくなっていたので、ひとまずボードワーク沿いにあるレストランに入り、そこでひと涼み。
水着を着ていたので、行くのを我慢していたおしっこも無事終了。でも、女性ならわかってくれると思うけど、めんどっちぃよね~あれ!
浜辺をパノラマで眺めながらいただいた、『よく我慢したで賞』牡蠣のいろいろセットと白ワイン。
だいぶ気分も落ち着き、よし、ちょっくら泳ぐべか、という気力も出てきたので、ビーチに降りようと思ったのだけど、待てよ、ビーチタグいくらなん?
ニュージャージーは海沿いに南下している州なので、そりゃもういろんなビーチがあるのだけど、大抵は5ドル前後のタグを買って初めて浜辺に降りられる。
そんなに長居するつもりはないのに、5ドルとか払うの損だよな~と、検問所に降りる直前のボードの上で躊躇していると、海から上がって来たマッチョな男性が、「あ、これ、よかったらあげる」と言って、自分達のタグをわたし達にくれた?!ありがとぉ~!!
こんなのです。
さすがに今日のビーチは混んでいた。
ボードワークの板の下が陰になっていてわたし向きだったので、そこにビーチタオルを敷いて早速昼寝開始!
ププッ!なんじゃなんじゃ?
いきなりの砂攻撃に飛び起きると、横の旦那が上を指差した。
「だってほら、あの板の隙間から、上を歩いてる人のサンダルについた砂が落ちてくるねん」……なるほどごもっとも!
まあ、砂ぐらい大した問題ではないではないか!帽子を顔に被せて再び昼寝開始。
ふと目が覚めると、旦那は一足先に泳ぎに行っていた。
どちらかが残って荷物の見張りをしなければならないので、次はわたしだとせっせと用意しているところに、旦那が戻ってきた。
が……、なんだか様子がおかしい……
「どないしたん?」
「肩、外れた」
なんとかして自分で治そうとする鍼師のプライドも空しく、試してみてはククゥ~ッと身体をくの字に折って苦しむ旦那。
痛みに苦しみながら「引っ張って引っ張って!!」と叫ぶので、慌てて手首を持って引っ張ろうとするのだけど、おたがい日焼け止めクリームを塗りたくってあるので、ヌルヌルして引っ張りにくいのなんのって。うなぎの綱引きか!などとひとりでツッコンでみる。こういう時こそユーモアは大事なのであ~る!
「ライフセイバーのお兄ちゃんに頼んでみたら?」
「いや、もう人を呼んでもらうように頼んである」
そしてどんどん人が寄ってきてくれた。
こういうジープや、砂浜用の巨大タイヤのはまったバイクに乗って、次々と人がやって来てくれるのだけど、誰ひとり治せる人がおらず……。
最後にやって来てくれた整体師さんにも、浜辺で治療はできないからとすげも無く断られ、その間にもまた痛みに襲われた旦那から「引っ張って」とせがまれたので引っ張ると、「そんなことはしてはいかぁ~ん!」と思いっきり叱られた……ほんなら、あんたがなんとかしたってよぉ~!
送ってあげよう、という皆さんの気持ちだけありがたくいただき、自分達で近所の病院に行き、救急で診てもらうことにした。
こんな時にまで写真を撮ろうとするわたしのことを、やれやれ……と言わんばかりに首を振りながら病院に向かう旦那。右肩の下がり具合が哀愁を誘う。
「海に入って一番最初の波にやられた。タイミングが悪かったのか、いろんな角度に揉まれた挙げ句、砂地にしこたま打ち付けられた」
旦那が事故の様子を説明すると、病院のスタッフは皆、「この病院には毎日、あなたのような人がやってきます」と気の毒そうに慰めてくれた。
そんなふうに慰められてもなあ……
例のごとく散々待たされ、診てくれた見習い女医さんの説明はあんまりよくわからず、とりあえずレントゲンを撮ってもらい、様子を見ることに。
帰りの運転はもちろんわたしが担当した。幸いなことに、渋滞はそれほど酷くなかった。でも、また痛みが戻ってきたらどうしようかと心配しながらの運転は、なかなかに気疲れのするものだった。
家に着いて記念写真。これは旦那からのサービス。今日はいったい何しに海に行ったん??のわたしへのお詫びの印らしい。
そしてきわめつけはこれ。本邦初公開!病院がくれた旦那のレントゲン写真の写し。今時は、レントゲン写真もCDに入れてくれる。時代は変わった。
それにしても、こんなセクシーな旦那は見たことが無い!
なんて……ふざけている場合ではない。どうやら米国には、海の中に、必殺仕置き人が潜んでいるようだ。
しかし……旦那はいったい、どんなことをしでかしてお仕置きをされることになったのか……。
朝、旦那が入ってきていきなり、「海に行こ!」と明るく宣った。
確信犯なのであった。
わたしは起き抜けに何か言われると、あまり考えること無く(というかボケまくっているので)、「まあええけど」と答えてしまう癖がある。
それでも旦那は一瞬ひるんだようだ。だって、わたしが海に行ってもいいなんて言う確率は、いくら寝ボケていてもいいとこ半々だろうと思っていたからだ。
とにかく、行くと決めたのだから、起きてまだ意識もはっきりしていないのに、とりあえず日焼け止めを塗った。
タオルや道中の食べ物飲み物は、旦那がせっせとかき集めてくれた。
A子から教えてもらったUV90などという、とんでもない数字の日焼け止めクリームを買いに近くのCVSに寄り、その間に旦那は、隣のダンキンドーナツに入り、アイスコーヒーとオールドファッションのドーナツを買った。
とりあえず今日は、いきなりの海行きなので、普通にドライブして45分ぐらいの所にあるビーチに行くことにした。
ナビに行き先を入れ、いざいざ出発!
あれ?ちょっと、ガソリンめちゃ少ないやん!
まあ、あそこまでぐらいやったら多分大丈夫……やと思う。
うちって、こういうパターン、多過ぎひん?
(聞いてないふり)
そしてそれはやってきた。
見渡す限りの大渋滞。そりゃそうでしょ。休日の、暑くてたまらない晴天の、あんまり早く無い朝なんだから。
で、ガスは?
や、やばいかも……。
気温103℉(39.5℃)の中、エアコンを止めて窓を開け、じりじりと歩くような速さで進む車は、瞬く間に動くスティームサウナと化した。
「いやあ、一足お先にビーチだぜぃ~」とやせ我慢を言いながら、せっせと日焼け止めクリームを塗りっこする健気な夫婦を、気でも狂ったか?と眺めている周りの方々。
いえね、わたし達だってね、好きでこんなことやってんじゃありませんよ!いくら自業自得だからって、こんな暑い思いしたくなんかないですよ!
少しでも下りっぽい道になるとニュートラルに入れたり、最寄りのガソリンスタンドをナビで探したり、いよいよ事態は緊迫してきた。
いくらなんでも、イカ焼きを焼いて周りに売って歩けそうなぐらい熱い鉄板(車体ですね)を押して、この渋滞の道を進むのはいやだ!絶対に!
やっとのことでガソリンスタンドを見つけ、ホッと一安心。ねえ、学ぼうよ、わたし達。そして向上しようよ
当たり前だけど、すごく混んでいた。結局45分で済むはずの所に3時間かけて着き、初めての場所なのでどこに駐車するのがいいのかわからないままどんどん海に近づいて行き、このままだと駐車料金ぼったくられるんちゃう~と心配していると、あらあら、ビーチ直前のロータリーに無料の駐車場があって、そこにポッカリ一台分空いていた。ラッキー!
熱で身体がおかしくなっていたので、ひとまずボードワーク沿いにあるレストランに入り、そこでひと涼み。
水着を着ていたので、行くのを我慢していたおしっこも無事終了。でも、女性ならわかってくれると思うけど、めんどっちぃよね~あれ!
浜辺をパノラマで眺めながらいただいた、『よく我慢したで賞』牡蠣のいろいろセットと白ワイン。
だいぶ気分も落ち着き、よし、ちょっくら泳ぐべか、という気力も出てきたので、ビーチに降りようと思ったのだけど、待てよ、ビーチタグいくらなん?
ニュージャージーは海沿いに南下している州なので、そりゃもういろんなビーチがあるのだけど、大抵は5ドル前後のタグを買って初めて浜辺に降りられる。
そんなに長居するつもりはないのに、5ドルとか払うの損だよな~と、検問所に降りる直前のボードの上で躊躇していると、海から上がって来たマッチョな男性が、「あ、これ、よかったらあげる」と言って、自分達のタグをわたし達にくれた?!ありがとぉ~!!
こんなのです。
さすがに今日のビーチは混んでいた。
ボードワークの板の下が陰になっていてわたし向きだったので、そこにビーチタオルを敷いて早速昼寝開始!
ププッ!なんじゃなんじゃ?
いきなりの砂攻撃に飛び起きると、横の旦那が上を指差した。
「だってほら、あの板の隙間から、上を歩いてる人のサンダルについた砂が落ちてくるねん」……なるほどごもっとも!
まあ、砂ぐらい大した問題ではないではないか!帽子を顔に被せて再び昼寝開始。
ふと目が覚めると、旦那は一足先に泳ぎに行っていた。
どちらかが残って荷物の見張りをしなければならないので、次はわたしだとせっせと用意しているところに、旦那が戻ってきた。
が……、なんだか様子がおかしい……
「どないしたん?」
「肩、外れた」
なんとかして自分で治そうとする鍼師のプライドも空しく、試してみてはククゥ~ッと身体をくの字に折って苦しむ旦那。
痛みに苦しみながら「引っ張って引っ張って!!」と叫ぶので、慌てて手首を持って引っ張ろうとするのだけど、おたがい日焼け止めクリームを塗りたくってあるので、ヌルヌルして引っ張りにくいのなんのって。うなぎの綱引きか!などとひとりでツッコンでみる。こういう時こそユーモアは大事なのであ~る!
「ライフセイバーのお兄ちゃんに頼んでみたら?」
「いや、もう人を呼んでもらうように頼んである」
そしてどんどん人が寄ってきてくれた。
こういうジープや、砂浜用の巨大タイヤのはまったバイクに乗って、次々と人がやって来てくれるのだけど、誰ひとり治せる人がおらず……。
最後にやって来てくれた整体師さんにも、浜辺で治療はできないからとすげも無く断られ、その間にもまた痛みに襲われた旦那から「引っ張って」とせがまれたので引っ張ると、「そんなことはしてはいかぁ~ん!」と思いっきり叱られた……ほんなら、あんたがなんとかしたってよぉ~!
送ってあげよう、という皆さんの気持ちだけありがたくいただき、自分達で近所の病院に行き、救急で診てもらうことにした。
こんな時にまで写真を撮ろうとするわたしのことを、やれやれ……と言わんばかりに首を振りながら病院に向かう旦那。右肩の下がり具合が哀愁を誘う。
「海に入って一番最初の波にやられた。タイミングが悪かったのか、いろんな角度に揉まれた挙げ句、砂地にしこたま打ち付けられた」
旦那が事故の様子を説明すると、病院のスタッフは皆、「この病院には毎日、あなたのような人がやってきます」と気の毒そうに慰めてくれた。
そんなふうに慰められてもなあ……
例のごとく散々待たされ、診てくれた見習い女医さんの説明はあんまりよくわからず、とりあえずレントゲンを撮ってもらい、様子を見ることに。
帰りの運転はもちろんわたしが担当した。幸いなことに、渋滞はそれほど酷くなかった。でも、また痛みが戻ってきたらどうしようかと心配しながらの運転は、なかなかに気疲れのするものだった。
家に着いて記念写真。これは旦那からのサービス。今日はいったい何しに海に行ったん??のわたしへのお詫びの印らしい。
そしてきわめつけはこれ。本邦初公開!病院がくれた旦那のレントゲン写真の写し。今時は、レントゲン写真もCDに入れてくれる。時代は変わった。
それにしても、こんなセクシーな旦那は見たことが無い!
なんて……ふざけている場合ではない。どうやら米国には、海の中に、必殺仕置き人が潜んでいるようだ。
しかし……旦那はいったい、どんなことをしでかしてお仕置きをされることになったのか……。