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高橋秀実『素晴らしきラジオ体操』

2008-09-01 15:24:35 | ノンジャンル
 高野秀行さんが推薦していた、高橋秀実さんの'98年作品「素晴らしきラジオ体操」を読みました。
 先ず、毎朝皆とラジオ体操をしないと気持ちが悪い「ラジオ体操人」が全国に3000万人いて、都内だと266ケ所で行なわれ、中には地元だとプライベートが守られないため電車で通っている人までいて、会場に本家・分家の分類があることが語られます。
 そしてラジオ体操の魅力とは、力を入れる・抜くが連続されていて、運動にも連動性があり、皆との一体感が感じられるということが証言されます。
 そして歴史。最初は'25年にアメリカのメトロポリタン生命保険会社が、負のイメージを払拭し、加入者に長生きしてもらうために始めたもので、YMCAの宣教師が考えたハードな体操はあっと言う間に4000万人が行こなう事となります。日本では、川面凡児が考えた神道の天御中主太神の禊から始まり、それが高木男爵の国民運動となり、松元稲穂のラジオ体操の元になったヨイサとなって、アメリカに習い日本の生命保険を独占していた逓信省とNHKが戦前に始めたものが最初のラジオ体操になりました。
 放送直後から「ラジオ体操で病気が治った」という声が続々と寄せられ、生活が一変したとの声もあり、女性にとっても大股開きが堂々とできるという解放感が味わえるもでした。しかし統計では病気が悪化するケースもあったようです。ファシズムは国民の一体化のために利用し、戦後は「何かのためにやるのでなく、ただやってこそ真のラジオ体操人」との思想が広まり、身分の差なく誰もがやる「民主主義」の象徴として改訂版が放送されますが、運動の複雑さゆえに普及せず、放送は一旦中止、ラジオ体操人は地下に潜伏しますが、'51年に再改訂版が作られてからは大衆に受け入れられ、現在に至っています。
 一糸乱れず多くの人が動く様が恐れられてGHQに一時禁止されたりもしますが、朝鮮戦争が始まると、逆にその団結力が賞揚されてアメリカ軍への導入も試みられたりしたラジオ体操。この話を聞いてから、個人的にも興味が湧き、以前「ラヂオ体操のすべて」というCDも買ったりしました。ラジオ体操に関して真正面から論じた本はこの本が最初であると思います。高野さんの推薦書ということもあり、また始まりが現在ラジオ体操をしている人たちに関する面白いルポだったりしたので、もっと面白くなると思いきや、以外に真面目な本だったので、ちょっと期待外れの部分もありましたが、一気に読めてしまいました。エンタメ・ノンフのファンの方には特にオススメです。