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高橋秀実『はい、泳げません』

2008-09-26 18:17:10 | ノンジャンル
 高橋秀行さんが推薦する高橋秀実さんの'05年作品「はい、泳げません」を読みました。
 著者は子供の頃からプールが怖くて仕方がなく、泳げるようになって人生が変わったという友人の勧めで、スイミングスクールに通うことになります。コーチは「水をかくな、水を押さえろ」「浮こうとするな。浮いてくるのを待て、死体と同じように」などとむちゃなことを言います。息継ぎの方法を教えてくれないので質問すると「苦しいのを我慢しろ、呼吸しようと考えるな」とまたむちゃなことを言われます。そして著者は段々泳げるようになっていくのですが、何かを習得する度に嬉しくなって立ち、コーチから怒られます。コーチは小さい頃から泳がされてきたので、泳ぐのは嫌いなのだと言います。泳ぐのでいいことは、泳いでる最中に思いっきり泣けることだとも。アドバイスに従って骨盤の位置を変えずに泳ぐと、楽々50m泳げ、コーチに「泳げる人」として認定され、これから人に見せびらかすためにどんどん泳いでほしいと言われるのでした。
 泳げなかった著者が泳げるようになるまでのことを書いて1册の本にしてしまうことがすごいと思いました。内容もとても面白く、特にいろんな理由で著者がすぐに立ってしまうところがつぼに入ってしまい、ついつい笑ってしまいました。文体もこれまで読んだ「素晴らしきラジオ体操」「からくり民主主義」とは違ってユーモラスで、宮田珠己さんの文体と甲乙つけがたい面白さでした。他の本にないこの本の特徴は、1章ごとに高橋さんを実際にコーチした高橋佳さんの一言が添えられていることです。高橋佳コーチのレッスンはとても変わっていて、段階を踏んでバタ足、息継ぎのように習得させるのではなく、泳ぎ全体に対してその日ごとにテーマを決めて教えていくというもので、この本も高橋コーチがいなければ面白さが激減していたと思います。そうした点でも著者は出会いの才能を持っているのでは、と思いました。まだ読んでいない方、文句無しにオススメです。なお、詳細は「Farorite Books」の「高橋秀実『はい、泳げません』」に掲載しておきましたので、是非ご覧ください。