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マット・リドレー『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史(下)』

2011-02-08 16:40:00 | ノンジャンル
 永田洋子死刑囚が亡くなったという記事を見ました。享年65歳だったそうです。連合赤軍事件で同士を総括の名のもと、次々と惨殺していった狂気の女性でした。晩年は記憶を喪失する恐怖にさらされ、生き地獄のようだったと聞いていましたが、無邪気な面も残っていたようです。彼女が死刑にならずに亡くなったことを重く受け止めたいと思います。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、マット・リドレーの'10年作品『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史(下)』を読みました。
 第5章の後半では、都市への住民の移動は、都市の方が田舎に比べ生活レベルが高いために起こり、また都市の住民の方が自然の生態系に与える影響も小さいことが語られます。第6章では、人口増加率が漸減傾向にあり、2075年の92億人で人口はピークを迎え、世界を永遠に養える見込みが大いにあることが述べられ、第7章では、人はすべての仕事を自分の筋肉を使って自分でやっていた時代から始まって、やがて一部の人が他人に仕事をやらせる時代になり、その後エネルギー源は人間から動物、動物から水、水から風、風から化石燃料と移っていき、人ひとりが他人のためにできる仕事量は、動物や機械によって増幅されていったことが、第8章では、イノベーションが生産効率を上げ続けてきたことが、第9章では、いつの時代にも根拠のない悲観主義が横行してきたことが、第10章では、現在主たる悲観論の種となっているアフリカと化石燃料による地球温暖化がこれといった根拠を持っていないことが語られ、第11章では、プロローグで語られた考え方がもう一度繰り返されます。
 事実を根拠に述べられていく論理構成は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』と同じでしたが、今回も未知の事実に多く触れることができ、現在は過去に比べて比較にならないほど裕福であることを知り、環境問題についての持論を考え直す必要があることを感じました。コーヒーショップにある異なるサイズの紙コップの蓋は皆同じ大きさである、などという卑近な未知のことも多く、また「ロシアの泥棒政治家」のように、単語によって現在の政治・社会状況を直裁に批評する点なども面白いと思いました。多くの人に読んでもらい、感想を聞きたくなる、重要な本だと思います。誰にも読みやすい文体ですので、まだの方は是非お読みください。なお、もっと詳しい内容について、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Studies」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。