清水宏監督『踊子』

　先日WOWOWで放映されたグラミー賞授賞式では、老いたボブ・ディランに対して、「永遠に若くかっこいい」ミック・ジャガーのパフォーマンスが白眉でした。また、昨年亡くなったミュージシャンの紹介の中にジェリー・ラファティの名前があり、一瞬『ベイカー・ストリート』の音楽が流れました。イントロでのかっこいいブラスが印象的な素敵な曲で、私はこの一曲のためにアルバムを買った憶えがあります。ご冥福をお祈りいたします。

　さて、清水宏監督の'57年作品『踊子』を、スカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
　浅草のレビューのダンサーをしている花枝（淡島千景）と夫の楽士（船越英二）の元に、花枝の妹チヨミ（京マチ子）が上京してきます。彼女は花枝の振付けをしている田村（田中春男）の元でダンサーの見習いをしているうちに、彼と肉体関係になり、またチヨミから金を預かった夫も彼女と肉体関係を持ちます。田村は夫にチヨミに盗み癖があることを伝え、夫は彼女を注意しようとしますが、彼女の魅力に負けて注意できません。チヨミはいきなり主役級でデビューすると、彼女を見つめる夫を見て、花枝は不信感をつのらせます。彼らの住むアパートで盗難が起き、夫は夜中に秘かにチヨミのバッグから盗難品を持ち主に返しますが、それをチヨミに見つかってしまいます。翌日夫はチヨミに盗みをもうしないように言うと、チヨミは夫の子を妊娠したので金が欲しくてやったと言い返します。田村からも自分の子をチヨミが妊娠したと告げられた夫は、花枝からチヨミとの仲を責められ、花枝は自分に子供ができないことを悔しがります。中絶をするにはもう遅いと行く先々の医者にチヨミが言われると、花枝は自分が子供を育てると言います。娘が産まれると、チヨミは花枝に子供を預けて芸者になってしまい、しばらくすると今度は妾になります。ダンサー生活に飽き飽きした花枝と夫は田舎に引っ込み、花枝は保母になりますが、そこへ妾の地位も失ったチヨミが訪れてくるのでした。
　風景シーンにゆるやかな横移動が盛んに使われていましたが、主要人物が登場すると途端にカメラは動きを失い、初期の無声映画のように、まるで舞台劇を見ているかのような退屈な画面構成となっていました。画面は異様に暗いのも印象的でした。京マチ子の下品（？）な踊りを見られるのも見どころです。