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熊切和嘉監督『海炭市叙景』

2011-02-15 07:18:00 | ノンジャンル
 熊切和嘉監督の'10年作品『海炭市叙景』を川崎アートセンターで見ました。函館がモデルになった架空都市「海炭市」を舞台にした5話のオムニバスです。
 小学校の授業風景。造船所で事故があり、井川という少女がすぐ帰宅するように教師に言われ、廊下には年上の男の子が待っています。場面は変わり、朝早く起きて二人して家を出る若い男女。男は造船所で働き、進水式で大喜びしますが、ほどなく会社のリストラが発表され、組合がストの突入するも、退職金にわずかな上積みを得て執行部が挫折し、男は早期退職に追い込まれます。大晦日の夜、幼い日に二人で遊んだ手製のゴムボートのところで出会う二人。男が誘ってロープウェイで見晴らし台に行き、二人で初日の出を見ますが、帰りは一人分だけしかロープウェイ代がなくなり、男は自分は歩いて帰ると言って、無理矢理女を一人で乗せます。下のロープウェイ乗り場で、いつまでも待つ女は、見かねて声をかけた店員に借金を申し込みます。タイトル。商業施設予定地に一人で住む老女の元に市役所職員が引越しの説得をしに行きますが、追い返されます。やがて老女の飼い猫は姿を消し、老女は外に出て、空しく飼い猫の名前を呼びます。プロパンガス会社を父から譲られた目黒は、新たに浄水器の売り込みを始めますが、うまく行きません。塾をさぼってプラネタリウムに通う息子は後妻からDVを受け、それを知った目黒は妻に暴力を振るいますが、妻の元同級生と目黒が浮気をしているのを知っている妻は自分を幸せにしろと言い返します。ある日、目黒は代金を払わないやくざの元に行きますが、過ってガスボンベを足に落としてしまい、やくざからもらったバンドエイドをつぶれた足に貼ります。帰宅すると息子はまた傷ついて泣いており、目黒は祖父の元に行こうと言います。プラネタリウムを一人で運営している男(小林薫)は、夜の仕事をしている妻(南果歩)とすれ違いの生活をしていて、高校生の息子にも口を聞いてもらえません。妻が客とタクシーに乗っているのを見た男は車で後を追おうとしますが、車を雪に突っ込ませてしまい、車中で泣き出します。路面電車の運転手は、浄水器を売りに東京から来た若い男を見つけると、彼をじっと見つめます。若い男はホテルを出たところを女に誘われスナックに連れていかれますが、そこのママに罵倒され、ママに逆らって飲ませろと言う酔客とともに店を出ていきます。路面電車に乗るプラネタリウムの男とその妻、そして目黒と息子。その前を横切る造船所の男と女は、電車が通り過ぎると幼い男女となっています。浄水器の男が墓参りをして帰ろうとすると、これから墓参りをしようという路面電車の運転手である父に出会います。バスの中で二人は並んで座っていますが、若い男は家には寄らず明日東京へ帰ると言います。重機が周囲を整地している中、一軒家の前で日向ぼっこをする老女の元に猫が帰ってきます。若い男がフェリーに乗ると、井川が初日の出を見た後、すべって転落死したというニュースが聞こえています。甲板から吹雪を通して町を見る若い男。フェイドアウトして、映画は終わります。
 徹底して縦の構図が使われ、平面的な画面になるとドラマが始まるという面白い映画でした。最後に5つの話がまとまっていく構成も楽しめましたし、素人が演じた老女を始めとして、いい顔に出会えた映画でもありました。寒い風景を見たい方には特にオススメです。