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『文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船』

2012-03-03 09:15:00 | ノンジャンル
 岡野宏文さんと豊崎由美さんの共著『読まずに小説書けますか』の151ページで紹介されている、ちくま文庫の『文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船』を読みました。小川未明氏が1905年から1925年の間に書いた33の短編を収めた本です。
 収められている短編は『過ぎた春の記憶』『百合の花』『稚子ケ淵』『嵐の夜』『越後の冬』『迷い路』『不思議な鳥』『黄色い晩』『櫛』『抜髪』『老婆』『点』『凍える女』『蝋人形』『赤い蝋燭と人魚』『黒い旗物語』『黒い人と赤い橇』『金の輪』『白い門のある家』『薔薇と巫女』『幽霊船』『暗い空』『捕らわれ人』『森の暗き夜』『扉』『悪魔』『森の妖怪』『僧』『日没の幻影』『北の冬』『面影』『夜の喜び』『貸間を探したとき』です。
 『赤い蝋燭と人魚』は、人間界で育ってほしいと人魚が陸で産んだ娘が、子のない老夫婦によって育てられ、その夫婦が商う蝋燭に娘が赤い絵の具で絵を描くと、その蝋燭をお宮にあげて、その燃えさしを持って海に出ると、どんなに海が荒れても船が災難に会わないという噂が広まり、老夫婦の商売は繁盛しますが、南国から来た香具師に老夫婦が騙されて、娘をその香具師に売ってしまうと、娘を乗せた香具師の船が大嵐に会って転覆し、また娘が残した真っ赤な蝋燭を人魚の母が老夫婦から買い取ると、その後、その村から船が出る度に海が大荒れになり、やがてその村は滅びてしまったという話。
 『点』は、子供に算数を教えてくれる温和な牧師が、ある日突然豹変して冷酷になり、信者の娘の遺体を、頭に釘を打ち込むなどして十字架に磔にしたりしますが、最後には悟りを開き、唯一残った算数の生徒に3万6千の点を黒板に書かせ、その1点1点が一日であり、それが人生なのだと教えるという話。
 しかし、まともな起承転結があるのは、これらの短編ぐらいで、標題作でもある『幽霊船』があてどもないイメージが連続するものだったり、『過ぎた春の記憶』が、かくれんぼうで古井戸に隠れただけの理由で子供が命を落とす話だったり、『越後の冬』が、帰りが遅い母を迎えに行った子供が、雪の中で線路に沿って歩いているうちに豪雪で足元が分からなくなり、列車に轢かれてしまう話だったり、と導入から極端なエンディングへとつながるものも多く、玉石混交であるように感じましたが、一方どれにも北国での嵐が恐怖の対象として使われていて、そこには一貫性を感じることができました。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/