アッバス・キアロスタミ監督・原案の'10年作品『トスカーナの贋作』をWOWOWシネマで見ました。本年度の外国語エッセイ賞最優秀賞を著書『贋作』で受賞したイギリス出身のジェームズ(ウィリアム・シメル)と、留守がちの夫とわがままな息子との生活に疲れ気味のその妻(ジュリエット・ビノシュ)がトスカーナ地方のルチニャーノで15周年の結婚記念日を過ごすのを淡々を描いた映画でしたが、終始会話を続けながら、仲直りしたり喧嘩したりする二人を見ているのは少し退屈で、絵画を思わせる柔らかく陰影に富んだルカ・ビガッツィの撮影で救われたような気がしました。
さて、朝日新聞で紹介されていた、かじいたかしさんの'11年作品『僕の妹は漢字が読める』を読みました。
23世紀の高校一年生・ギンは、小説家をめざしていますが、この時代の本格文学は美少女のパンチラ、ヌードが頻出する「萌え」系のもので、漢字も文学だけでなく世間から消えてしまっています。ギンは血のつながりのない1才下の妹で、漢字が読めるクロハとともに、尊敬する作家・オオダイラに会うため上京しますが、ロリコンのオオダイラはギンに10才の妹・ミルがいることを知ると、是非会いたいと言い出します。ミルを連れてクロハとともに再度オオダイラの家を訪れたギンは、そこでタイムスリップしてしまい、他の3人とともに20世紀の奥多摩にやってきます。そこにはギンが小説家をめざすきっかけとなった小説『おにいちゃんのあかちゃんうみたい』の主人公にソックリなユズが待っていて、彼らの世話をしてくれるようになります。ユズが慕っていた兄は既に亡くなっていて、彼女は彼がほしがっていた「おっぱいマウス」を手に入れるために、ギンらと秋葉原に出かけますが、23世紀に比べてまだ「萌え」文化が発達していないそこでは、それを手に入れることができません。やがて「萌え文化を広めてほしい」と願っていたユズの兄の遺志を継ぐために、ギンとクロハはユズの通う高校に通い出します。ユズは他の4人の協力を得て小説『あにマジまにあ』を書き上げ、それを文芸部に広めてもらおうとしますが、文芸部の部長からは「こんな軽薄なものは小説ではない」と拒まれてしまいます。ユズは『あにマジまにあ』を宝物箱に入れますが、その後、再びタイムスリップが起きて、ギンらはユズを置いて23世紀に戻ってきます。しかし、外に出た彼らは、漢字だらけで「萌え」系が消えているのに気付き、やがてそれは、「萌え」系文化を形作るきっかけとなった『おにあか』の元ネタである『あにマジまにあ』が何者かによって21世紀に盗まれたことが原因であることが分かります。ミルが持っていたマシュマロがタイムスリップを起こすことを知った彼らは、21世紀からやってきたユズを加えて、元の世界に23世紀を戻すため、再び21世紀に旅立つのでした。
典型的な成長物語なのですが、オオダイラが書く作中小説が何といっても衝撃的でした。引用すると(ただし改行は無視しています)「でたひと→きよし きよし『おくれちゃうにょ』 どうがサイトみてたら ねぼすけ←だめっこ いきなりちこくは やばっ こうえんぬけたら おなのことごっつん☆ きよし『うあっ』 おなのこ『みゃあっ』 わわわ でんぐりがえっておぱんちゅ きらり☆ きらっ きらっ きらり☆ おぱんちゅ→おそらいろ きよしっこ てれっこ おなのこ『いたいたいた』 きよし『おててどうぞ』 おなのこ びっくり おなのこ『お、おにいにゃん』 きよし『えっ』 きよしっこはひとりっこよ? いもうとなしにょ おなのこ『いたいた』 おなのこおしりごつんした きよし『ぺろぺろすりゅ?』 なめなめしたら なおるはず おなのこ『やっ』 きよしっこ がくり きよしっこ ぺろぺろしたいの←かんがえちゅ◎ おしり ぺろぺろ ぺろっ ぺろっ ぺろり☆」。考えてみると、これはほとんど幼児語であることに気付きました。また作中に親を始め大人が全く出て来ない(オオダイラも途中で少女に変身してしまう!)のも特徴的だったと思います。初めて読む「萌え」系小説でした。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
さて、朝日新聞で紹介されていた、かじいたかしさんの'11年作品『僕の妹は漢字が読める』を読みました。
23世紀の高校一年生・ギンは、小説家をめざしていますが、この時代の本格文学は美少女のパンチラ、ヌードが頻出する「萌え」系のもので、漢字も文学だけでなく世間から消えてしまっています。ギンは血のつながりのない1才下の妹で、漢字が読めるクロハとともに、尊敬する作家・オオダイラに会うため上京しますが、ロリコンのオオダイラはギンに10才の妹・ミルがいることを知ると、是非会いたいと言い出します。ミルを連れてクロハとともに再度オオダイラの家を訪れたギンは、そこでタイムスリップしてしまい、他の3人とともに20世紀の奥多摩にやってきます。そこにはギンが小説家をめざすきっかけとなった小説『おにいちゃんのあかちゃんうみたい』の主人公にソックリなユズが待っていて、彼らの世話をしてくれるようになります。ユズが慕っていた兄は既に亡くなっていて、彼女は彼がほしがっていた「おっぱいマウス」を手に入れるために、ギンらと秋葉原に出かけますが、23世紀に比べてまだ「萌え」文化が発達していないそこでは、それを手に入れることができません。やがて「萌え文化を広めてほしい」と願っていたユズの兄の遺志を継ぐために、ギンとクロハはユズの通う高校に通い出します。ユズは他の4人の協力を得て小説『あにマジまにあ』を書き上げ、それを文芸部に広めてもらおうとしますが、文芸部の部長からは「こんな軽薄なものは小説ではない」と拒まれてしまいます。ユズは『あにマジまにあ』を宝物箱に入れますが、その後、再びタイムスリップが起きて、ギンらはユズを置いて23世紀に戻ってきます。しかし、外に出た彼らは、漢字だらけで「萌え」系が消えているのに気付き、やがてそれは、「萌え」系文化を形作るきっかけとなった『おにあか』の元ネタである『あにマジまにあ』が何者かによって21世紀に盗まれたことが原因であることが分かります。ミルが持っていたマシュマロがタイムスリップを起こすことを知った彼らは、21世紀からやってきたユズを加えて、元の世界に23世紀を戻すため、再び21世紀に旅立つのでした。
典型的な成長物語なのですが、オオダイラが書く作中小説が何といっても衝撃的でした。引用すると(ただし改行は無視しています)「でたひと→きよし きよし『おくれちゃうにょ』 どうがサイトみてたら ねぼすけ←だめっこ いきなりちこくは やばっ こうえんぬけたら おなのことごっつん☆ きよし『うあっ』 おなのこ『みゃあっ』 わわわ でんぐりがえっておぱんちゅ きらり☆ きらっ きらっ きらり☆ おぱんちゅ→おそらいろ きよしっこ てれっこ おなのこ『いたいたいた』 きよし『おててどうぞ』 おなのこ びっくり おなのこ『お、おにいにゃん』 きよし『えっ』 きよしっこはひとりっこよ? いもうとなしにょ おなのこ『いたいた』 おなのこおしりごつんした きよし『ぺろぺろすりゅ?』 なめなめしたら なおるはず おなのこ『やっ』 きよしっこ がくり きよしっこ ぺろぺろしたいの←かんがえちゅ◎ おしり ぺろぺろ ぺろっ ぺろっ ぺろり☆」。考えてみると、これはほとんど幼児語であることに気付きました。また作中に親を始め大人が全く出て来ない(オオダイラも途中で少女に変身してしまう!)のも特徴的だったと思います。初めて読む「萌え」系小説でした。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)