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青山真治監督『EUREKA ユリイカ』その2

2013-06-19 06:36:00 | ノンジャンル
 今週の月曜日に行った、あつぎ革新懇主催の講演と懇談のつどい『自由民権運動史への招待』で小池事務局長さんにいただいた「全国革新懇ニュース」2013.6月号の巻頭インタビューの中で、昨年まで朝日新聞の文芸時評を担当され、現在も同紙の紙面審議会委員を務めてられる文芸評論家・斎藤美奈子さんが「話のできる友だちがいることは、どんなに人生の助けになるか。おかしいと思うことがあったときに、正論を話す友だちが一人でもいることは本当に大事です」と述べていました。強く同感した次第です。

 さて、昨日の続きです。
 バスに走り込んだ刑事は、犯人を背後から撃ちます。崩れ落ちた犯人は座席にしがみつき、後部座席の少女と少年を見つめると、拳銃を持つ左手を上げていきます。刑事に再度撃たれて死ぬ犯人。犯人を射殺した刑事は、少年と少女を睨みます。
 パトカーの中でオーバーを羽織りながら寒がる沢井。救急車の音がして、画面を横切っていきます。運転手の荒い息。犯人を撃った刑事が近寄って来て、沢井を覗くと、沢井は息を増々荒げて、頭を両手で抱えます。
 輪転機で印刷される新聞。“運転手と兄弟は無事”“犯人は以前身元不明”の字幕。
 “2年後”の字幕。兄妹の母は、父に殴られてから、浮気をしに家を出るようになります。父もある日、車を田んぼに突っ込ませ、事故死してしまいます。4人分の墳墓を作る兄妹。父の死により多額の保険金を手にした2人は自転車で買い物に行き、その後、彼らは学校にも行かず、2人での生活を始めます。一方、久しぶりに実家に帰った沢井は、親戚に現場の仕事を紹介してもらいます。
 やがて沢井の周辺で連続殺人事件が起き、沢井はその容疑者として一時警察に拘留されます。 バスジャック事件のPTSDに悩まされる沢井と兄妹。やがて彼らは沢井の運転するバスで、旅に出て、やがて兄が殺人を犯していたことが明らかになり、そして最後には、少女と沢井は帰還を果たします。

 題名の「ユリイカ」とは、アルキメデスが“アルキメデスの原理”を発見した時に叫んだと言われる言葉で、「見つけた!」とか「これだ!」といったような意味なのだそうです。
 セピア色の画面は、限り無く白黒画面に近く、見事な“ショット”とその連鎖は、まさしく“映画”そのものでした。迫真に満ちた演出(画面上の動き、暴力的な音)も、目を見張るものがあったと思います。
 冒頭のバスジャックの部分が約30分で描かれ、その後の約3時間は、バスジャックで生き残った3人のその後が描かれています。
 冒頭で出てくる1両編成の電車がムルナウの『サンライズ』での路面電車を想起させたり、拘留された沢井が壁をノックする場面は明らかにブレッソンの『抵抗』へのオマージュであったり、アルバート・アイラーの演奏を効果的に使っていたり、と見どころは満載でした。青山監督の作品は、これまで『サッド・ヴァケーション』、『レイクサイド・マーダーケース』、『東京公園』と見てきましたが、私にとってはこの『EURIKA ユリイカ』が断然のナンバーワンとなり、蓮實先生門下の映画監督としては、万田邦敏さんと青山真治さんが私にとっての両巨頭といった感じにもなりましたが、皆さんはいかがお考えになっているのでしょうか?

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto