増村保造監督の'58年作品『巨人と玩具』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
道を埋める出勤者の波の中を歩く、新入社員の西(川口浩)。始業サイレン。専務(山茶花究)は窓からその様子を見て「皆、キャラメルの顔に見える。売上が下がってきているのは分かってる。一番の責任は宣伝部長にある。(と言って、宣伝部長(信欣三)に目をやる。)大衆がいる限り、キャラメルは売れる。他社は新製品を続々と打ってきてる」と機関銃のように早口に言います。胃薬を飲む宣伝部長。彼はキャラメルの売上が伸びなくなった頃から胃を悪くしたと言います。そこへやって来た宣伝課長の合田(高松英郎)は、くわえたタバコにライターで火をつけようとしますが、なかなかライターの火がつきません。なかなかつかないライターのアップに、工場でキャラメルが作られて行く様子が二重写しになります。店でキャラメルを買う子供の映像になって、ようやく二重写しが終わり、ライターに火がつきます。専務は「何かパーッとした懸賞のアイディアはないのか?」とまた宣伝部長に迫ると、宣伝部長は胃の辺りを押さえて、体を折ります。
宣伝部。「もしもし、新日本広告さん? あ、こちらワールドの宣伝。困るね、おたくでやったネオン、切れてるんだよ、品川の‥‥」と電話で言う古株社員。「近頃、キャラメル1つ売るのも骨だね」「大衆はどんどん先を行き、取り残されるのは我々メーカーさ」「会社の首脳部はヒステリーを起こしてるみたいだね」「大体、係累会社はダメだね。重役が皆、社長の親戚なんて会社は」「俺たち、血のつながりのない社員は、いくら頑張っても出生できないって訳だな」(と言った社員は玩具を手で弄びます。)「ウチの部長ね。首にならないでしょ。社長のまたいとこだからですよ」。西が「しかし実際は課長が部長の代わりに‥‥」と言うと、古株社員が西の発言を遮り、「課長は38歳。この会社では異例の出世です。その理由、分かりますか? 課長が部長の娘を奥さんにもらったからです」。課長が現れると、それまで雑談にふけっていた社員たちが自分の懸賞のアイディアを売り込み始めます。課長は西に「君は学生時代にラグビーやってたんだって?」と言い、西が「そうです。フォワードでした」と答えると、「僕はハーフバックだ。下の喫茶店にお茶、飲みに行こうか?」と課長は言って、西とその場を去ります。「入社1週間で課長とお茶飲めるとはね。あ~あ、俺もやっときゃよかったな、ラグビー」と言う古株社員。
「特売の懸賞のいいアイディアはないかい? 何か新鮮なのが」と言う課長に、「しかし懸賞をつけてまで、キャラメルを売らなきゃならないんですか? 外国じゃそんなこと、聞いたこともありません。もしキャラメルが本当に大衆の‥‥」と西が言うのを課長は西の背後から銃を突き付けて、「手を挙げろ! (びっくりする西を見て)ハハハハ、アメリカ製だよ。(と、オモチャの銃を見せ)よくできてるだろ?」。2人は喫茶店に着きます。「僕らは人間がひしめく日本にいるんだ。すべてが競争。血みどろの戦いだ」「しかし‥‥」「しかし、じゃない。まごまごしてると、競争相手の会社につぶされるぞ。ひと粒でも多くキャラメルを売った方が勝ち。君、女、好きか?」「ええ、好きです」「あの子、どう思う?」喫茶店のウインドウの中に飾られているメニューを食い入るように見て、微笑む娘(野添ひとみ)。「カッパみたいですね」「呼んでこい」「ここにですか?」「早く!」。西は強引に娘を誘おうとしますが、西のことを不審に思う娘に警官を呼ばれてしまい、退散します。テーブルに戻ると、課長は消えていて、間もなく娘と一緒に現れます。女優の整形の話で娘を釣る課長。「今度、映画の試写会の切符を送りましょう」と言って、娘の住所も聞き出します。課長は西にチョコの詰め合わせを買いに行かせると、娘は調子に乗って「映画の次に好きなのは自動車。だからタクシー会社で働くことにしたの」と言って、今の職場への不満を口にします。「もう辞めちゃったけど、1人イカすの、いたんだ。(チョコを買ってきた西を見て)似てんだ、それが。歩き方までそっくり」と言います。西が「何ですか?」と言うと、娘は課長に何か耳打ちし、「秘密よ!」と言います。娘がチョコを持って去った後、課長は「あの子はいける。カメラテストだ」と西に言います。(明日へ続きます‥‥)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
道を埋める出勤者の波の中を歩く、新入社員の西(川口浩)。始業サイレン。専務(山茶花究)は窓からその様子を見て「皆、キャラメルの顔に見える。売上が下がってきているのは分かってる。一番の責任は宣伝部長にある。(と言って、宣伝部長(信欣三)に目をやる。)大衆がいる限り、キャラメルは売れる。他社は新製品を続々と打ってきてる」と機関銃のように早口に言います。胃薬を飲む宣伝部長。彼はキャラメルの売上が伸びなくなった頃から胃を悪くしたと言います。そこへやって来た宣伝課長の合田(高松英郎)は、くわえたタバコにライターで火をつけようとしますが、なかなかライターの火がつきません。なかなかつかないライターのアップに、工場でキャラメルが作られて行く様子が二重写しになります。店でキャラメルを買う子供の映像になって、ようやく二重写しが終わり、ライターに火がつきます。専務は「何かパーッとした懸賞のアイディアはないのか?」とまた宣伝部長に迫ると、宣伝部長は胃の辺りを押さえて、体を折ります。
宣伝部。「もしもし、新日本広告さん? あ、こちらワールドの宣伝。困るね、おたくでやったネオン、切れてるんだよ、品川の‥‥」と電話で言う古株社員。「近頃、キャラメル1つ売るのも骨だね」「大衆はどんどん先を行き、取り残されるのは我々メーカーさ」「会社の首脳部はヒステリーを起こしてるみたいだね」「大体、係累会社はダメだね。重役が皆、社長の親戚なんて会社は」「俺たち、血のつながりのない社員は、いくら頑張っても出生できないって訳だな」(と言った社員は玩具を手で弄びます。)「ウチの部長ね。首にならないでしょ。社長のまたいとこだからですよ」。西が「しかし実際は課長が部長の代わりに‥‥」と言うと、古株社員が西の発言を遮り、「課長は38歳。この会社では異例の出世です。その理由、分かりますか? 課長が部長の娘を奥さんにもらったからです」。課長が現れると、それまで雑談にふけっていた社員たちが自分の懸賞のアイディアを売り込み始めます。課長は西に「君は学生時代にラグビーやってたんだって?」と言い、西が「そうです。フォワードでした」と答えると、「僕はハーフバックだ。下の喫茶店にお茶、飲みに行こうか?」と課長は言って、西とその場を去ります。「入社1週間で課長とお茶飲めるとはね。あ~あ、俺もやっときゃよかったな、ラグビー」と言う古株社員。
「特売の懸賞のいいアイディアはないかい? 何か新鮮なのが」と言う課長に、「しかし懸賞をつけてまで、キャラメルを売らなきゃならないんですか? 外国じゃそんなこと、聞いたこともありません。もしキャラメルが本当に大衆の‥‥」と西が言うのを課長は西の背後から銃を突き付けて、「手を挙げろ! (びっくりする西を見て)ハハハハ、アメリカ製だよ。(と、オモチャの銃を見せ)よくできてるだろ?」。2人は喫茶店に着きます。「僕らは人間がひしめく日本にいるんだ。すべてが競争。血みどろの戦いだ」「しかし‥‥」「しかし、じゃない。まごまごしてると、競争相手の会社につぶされるぞ。ひと粒でも多くキャラメルを売った方が勝ち。君、女、好きか?」「ええ、好きです」「あの子、どう思う?」喫茶店のウインドウの中に飾られているメニューを食い入るように見て、微笑む娘(野添ひとみ)。「カッパみたいですね」「呼んでこい」「ここにですか?」「早く!」。西は強引に娘を誘おうとしますが、西のことを不審に思う娘に警官を呼ばれてしまい、退散します。テーブルに戻ると、課長は消えていて、間もなく娘と一緒に現れます。女優の整形の話で娘を釣る課長。「今度、映画の試写会の切符を送りましょう」と言って、娘の住所も聞き出します。課長は西にチョコの詰め合わせを買いに行かせると、娘は調子に乗って「映画の次に好きなのは自動車。だからタクシー会社で働くことにしたの」と言って、今の職場への不満を口にします。「もう辞めちゃったけど、1人イカすの、いたんだ。(チョコを買ってきた西を見て)似てんだ、それが。歩き方までそっくり」と言います。西が「何ですか?」と言うと、娘は課長に何か耳打ちし、「秘密よ!」と言います。娘がチョコを持って去った後、課長は「あの子はいける。カメラテストだ」と西に言います。(明日へ続きます‥‥)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)