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神代辰巳監督『恋人たちは濡れた』その6

2015-10-02 05:32:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 劇場に着き、「降りろよ。ただいまー」「お帰り」。青年、劇場内に自転車を置き、中へ走っていく。それを覗く着物姿の女。車停まる。緑の女の弾くギター。飛ぶ海鳥の巣のある岩場。ズームダウン。客席に上がっていく女。ギターを持つ青年に「どこ行くの? どこ行くのよ?」「すいません。やっぱし」「やっぱし何よ。出て行こうって言うの?」。客「うるせえぞ!」。「嫌」「すいません。しょうがないんです。もう約束通り1週間はいたし」「約束なんかしないわ」。客「どこだと思ってるんだ!」。「……約束なんかじゃないの」「すいません」。青年、出ていく。「行かないでよ。(客の指笛。)お願いだから。あたしはどうなるの? ……よ!」。青年、走って逃げる。女、追いかける。「待って」。中心街。車が追い越す。泣きながら走る女は、やがてスピードを落とす。
 「国はどこ~よと~尋ねて訊け~ば~♪(車のフロントから前方)あわ~れ~なる~か~や~♪へそ~穴~黒き~♪(運転する男)国は~うち~また~ふんど~し~おもり~♪なんぼ~村~にて~チンポ~と~言うて~♪お~それ~おおくも~もったいなくも~♪(隣の緑の女、青年見つめる)あま~の岩戸の~岩~より~始め~♪亭主大事に~曇らせ~たまい~♪ 正露丸飲もうかな。下痢しそうだよ。(青年、正露丸飲む。流れる車窓の風景。)お~なが~とな~りの~お~ばい穴は~♪かわい~から~るる~愛嬌持ちて~♪(狭い商店街をハシゴを持って歩く女。)世間の~つき~あい~慰みごと~よ~♪目にした度の~お役の~他に~♪(女、自然のトンネル抜ける。)夜ごと~夜ごとに~その身にあかさ~♪くれたつ~から明け六つ~までも♪どうたら~ばたらと~裏門叩く~♪わしもたまげて~覗いて~みれば~♪(ハシゴを持って階段を登る女。)光る頭を~ぶらぶら~さげて~♪坊主頭に~当て~♪」。青年、ギターで『麦と兵隊』をつまびく。女、巨大な石碑にハシゴをかけて登っていき、布をハシゴに結びつけ、首を吊るが、布が伸び、死にきれない。海鳥の群れ、飛び立つ。
 緑の女「さよ~な~ら~さよな~ら~♪たっしゃでい~て~ね~♪」。バス停。青年「さよなら」。緑の女、歌い続ける。青年、来たバスに乗り込む。緑の女、歌うリズムを速め、バスに。男「この野郎。何だってんだよ」。バスを車で追う。
 バスの中。「衝動的だね。次で降りましょうよ」「知らねえよ、俺は」「彼、どこまでも追いかけてくるわよ」。男「……、ヨーコ、てめえ、(窓からバスに向かって果物を次々に投げつけ)どうしたんだ。何なんだよ。この野郎、この」。果物がバスのリアガラスにぶつかるのを最後席で無表情に見る女。やがて笑い、バスの中で何か話し出す。
 俯瞰。お経。砂山で3人、馬跳び。女、少しずつ服を脱いでいき、やがて全裸に。「いかがでしょうか?」と男に言い、青年を飛び越し「ミツオさん、いかがでしょうか?」と男を跳ぶ。青年「お前、やってやれよ」男「バカ、お前にそんなこと言われることねえよ」「バカ野郎、分かってねえなあ。かわいそうだよ。惚れてるじゃないか?(女に)寒いじゃない?寒いじゃない?」。3人、馬跳び続ける。青年、男を見る。男も少しずつ服を脱ぎ、女と寝る。女、よがりだす。青年も服脱ぎ、座って2人を見ていると「嫌。ねえ、カツ助けて。ねえ、嫌なの。カツ、嫌。放してよ。(抵抗する女)放してって」。観念して抵抗止め、またよがりだす。ギター。女、次第に大声に。
 緑の女「そちらさんこそ、お控なすって。お控なすって」と仁義を切る。「お控なすって。お控なすって」「手前、新参者です。あんさんからの、さっそくのお控、ありがとうさんにござんす。え、ミツオさんへ。カツさんへ。手前駆け出しの三下です。仁義上下間違えましたら、お許しください。手前生国と発しますところ、関東です。関東、関東と申しましても、いささか広うござんす。波の発する豪州は勝浦の浜辺で産湯をつかい、月の砂漠で化粧して、花も恥じらう22歳。姓は安藤、名はヨーコ。生まれついての器量よし。熱い血潮を胸に秘め、軒下三寸借り受けてのご挨拶。イトーさんも、カツさんも、……どっちも、どっちも、どっちも、どっちも、……万端よろしゅうお頼み申します」。緑の女、青年のこぐ自転車の荷台に乗る。青年「金もらって人刺して来たんだよ」とポケットから紙幣の束を出す。「何よ、それ。それいくら? 20万ぐらい?」「まあな」「たったそれだけえ。それだけで人殺すの?」「金の問題じゃねえよ」「何の問題なの?」「うるせえなあ」。遠くに男。「ホントはよ、俺だってあんたとしたいんだよ」「ホント?」「だけどな」「だけど何よ」。男、青年を刺す。ギターのジャランという音。自転車に乗ったまま海に入っていく2人。2人が浮き沈みしている姿で、映画は終わります。

 絵沢萌子演じる映画館の女の震えるような喘ぎ声が印象的で、歌が効果的に使われていました。暗い画面のシーンも見事だったと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/