フリオ・リャマーレスの'85年作品『狼たちの月』を読みました。
「第一部 1937年」ラミート、その弟フアン、ヒルド、そしてぼくアンヘルの4人は反フランコ軍の残党として、山岳地帯を点々と移動していた。ぼくは家に戻り妹のフアナに、今夜お父さんと会いたいと伝えてほしいと言った。その晩、指定した場所に行くと、フアナしかいず、お父さんは今日の午後連行されたと言う。翌朝釈放されたお父さんに会いに行くと、お父さんは自分が何をされたのかについては口を閉ざし、ぼくに金を渡し、しばらく廃坑に身を隠すように言った。数日後、ラミーロとヒルドは物資調達のため、ヒルドの家に向かった。ヒルドは長い間妻のリーチに会っていなかったし、生まれた息子の顔もまだ見ていなかった。フアンは自分だけがまだ山を降りていないということで、母さんに会いに行くことになった。しかしフアンは1日経っても戻ってこなかった。われわれは粉引きのトマスを訪ね、フアンのことを尋ねたが、何も聞いていないと言う。トマスはフアンの実家を訪ねると、実家にもフアンは来なかったということだった。3人は次の目的地に向けて山の開けたところに出たとたんに、至近距離からの一斉射撃がはじまった。3人はラミーロの投げた2発の手榴弾によって何とか逃げ出すことに成功したが、ぼくは膝を撃たれた。
「第二部 1939年」われわれはバス強盗を行なった。もちろん支援者から何も取らずに。父は裏のくぐり戸をあけておいてくれた。父に呼ばれて部屋に入ると、暴力を受けた妹の姿があった。ぼくは裏切り者のギリェルモに、ぼくの妹にまた同じことをすれば、誰かが死ぬことになると軍曹に伝えろと言った。ヒルドとぼくは冬に備えて商店を襲撃した。客は4人いたが、一人が拳銃を抜く仕草を見せたので、ぼくはその男を射殺した。リーチがヒルドに会いたいと言っているというので、われわれはヒルドの父親の旧友の駅長に相談すると、われわれはお尋ね者になっていて1人5万ペセータスの賞金がかかっていうと言う。そこで駅長は15万ペセータス用意できれば、われわれをフランスへ亡命させてやると言った。ラミーロは金の当てがあると言い、鉱山主のドン・ホセを誘拐し、身代金二十万ペセータスを要求した。指定時間に車で現れたドン・ホセの妻はヒルドの命令に従って金の入った袋を投げて寄越したが、その瞬間に地面に身を投げ出し、ヒルドに向かって銃を撃ち始めた。車とわれわれとの間で銃撃戦が起き、しばらくして静寂が訪れた。ドン・ホセの妻と思われたのは、変装した治安警備隊員で、ヒルドを殺されたラミートはドン・ホセをその場で射殺した。
「第三部 1943年」ラミーロは久しぶりに母と会っていた。母は様々なものをラミーロに用意してくれていた。われわれは司祭のドン・マヌエルをフアンを密告したとして処刑しようとしたが、ラミートは最後には許した。そして味方になってくれる羊飼いらと連絡を取り合い、その合間にぼくは農婦の妻に誘惑されてセックスしたりもしたが、次第に治安警備隊に包囲され、再びラミートの手榴弾と牛の暴走を使い、敵の包囲を突破した。それ以降、ラミートとぼくは洞窟にずっと隠れる生活が始まった。やがてラミートが裸足で歩いて足を怪我し、破傷風となった。ぼくはこれまで何度かラミートとベッドをともにしているティーナの元へラミートを運び、助けを求め、医者のフェリックス先生の元を訪ねたが、先生はもう引退したと診察を拒否し、アルコールだけを渡してくれた。ぼくがティーナの小屋に戻ると、そこは既に治安警備隊に包囲され、小屋は燃えていた。そしてしばらくして2発の銃声が轟いた。
「第四部 1946年」ぼくは1人で洞窟に隠れていた。ラ・リェラの祭に出ていったこともあったが、ぼくに気づいたのは十年前に踊ったことがあるマルティーナだけで、彼女はすぐに夫と踊り出した。死を迎えた父に会いに行くと、妹から「出ていって」と言われた。リーナは温かく迎えてくれたが、洞窟に戻ると、既に治安警備隊に発見され、燃やされていた。その後、二日二晩の嵐を屋外でやりすごし、やがて実家のヤギ小屋に掘った地下の穴の中で一日中を過ごすことになった。しかし生き埋めになったまま死を待つしかない日々に耐えきれず、ある日、国境越えに必要なものを持って、無人駅から列車に乗るのだった。
隠喩を多様した自然描写が、散文詩的な色調を文章に与えていました。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
「第一部 1937年」ラミート、その弟フアン、ヒルド、そしてぼくアンヘルの4人は反フランコ軍の残党として、山岳地帯を点々と移動していた。ぼくは家に戻り妹のフアナに、今夜お父さんと会いたいと伝えてほしいと言った。その晩、指定した場所に行くと、フアナしかいず、お父さんは今日の午後連行されたと言う。翌朝釈放されたお父さんに会いに行くと、お父さんは自分が何をされたのかについては口を閉ざし、ぼくに金を渡し、しばらく廃坑に身を隠すように言った。数日後、ラミーロとヒルドは物資調達のため、ヒルドの家に向かった。ヒルドは長い間妻のリーチに会っていなかったし、生まれた息子の顔もまだ見ていなかった。フアンは自分だけがまだ山を降りていないということで、母さんに会いに行くことになった。しかしフアンは1日経っても戻ってこなかった。われわれは粉引きのトマスを訪ね、フアンのことを尋ねたが、何も聞いていないと言う。トマスはフアンの実家を訪ねると、実家にもフアンは来なかったということだった。3人は次の目的地に向けて山の開けたところに出たとたんに、至近距離からの一斉射撃がはじまった。3人はラミーロの投げた2発の手榴弾によって何とか逃げ出すことに成功したが、ぼくは膝を撃たれた。
「第二部 1939年」われわれはバス強盗を行なった。もちろん支援者から何も取らずに。父は裏のくぐり戸をあけておいてくれた。父に呼ばれて部屋に入ると、暴力を受けた妹の姿があった。ぼくは裏切り者のギリェルモに、ぼくの妹にまた同じことをすれば、誰かが死ぬことになると軍曹に伝えろと言った。ヒルドとぼくは冬に備えて商店を襲撃した。客は4人いたが、一人が拳銃を抜く仕草を見せたので、ぼくはその男を射殺した。リーチがヒルドに会いたいと言っているというので、われわれはヒルドの父親の旧友の駅長に相談すると、われわれはお尋ね者になっていて1人5万ペセータスの賞金がかかっていうと言う。そこで駅長は15万ペセータス用意できれば、われわれをフランスへ亡命させてやると言った。ラミーロは金の当てがあると言い、鉱山主のドン・ホセを誘拐し、身代金二十万ペセータスを要求した。指定時間に車で現れたドン・ホセの妻はヒルドの命令に従って金の入った袋を投げて寄越したが、その瞬間に地面に身を投げ出し、ヒルドに向かって銃を撃ち始めた。車とわれわれとの間で銃撃戦が起き、しばらくして静寂が訪れた。ドン・ホセの妻と思われたのは、変装した治安警備隊員で、ヒルドを殺されたラミートはドン・ホセをその場で射殺した。
「第三部 1943年」ラミーロは久しぶりに母と会っていた。母は様々なものをラミーロに用意してくれていた。われわれは司祭のドン・マヌエルをフアンを密告したとして処刑しようとしたが、ラミートは最後には許した。そして味方になってくれる羊飼いらと連絡を取り合い、その合間にぼくは農婦の妻に誘惑されてセックスしたりもしたが、次第に治安警備隊に包囲され、再びラミートの手榴弾と牛の暴走を使い、敵の包囲を突破した。それ以降、ラミートとぼくは洞窟にずっと隠れる生活が始まった。やがてラミートが裸足で歩いて足を怪我し、破傷風となった。ぼくはこれまで何度かラミートとベッドをともにしているティーナの元へラミートを運び、助けを求め、医者のフェリックス先生の元を訪ねたが、先生はもう引退したと診察を拒否し、アルコールだけを渡してくれた。ぼくがティーナの小屋に戻ると、そこは既に治安警備隊に包囲され、小屋は燃えていた。そしてしばらくして2発の銃声が轟いた。
「第四部 1946年」ぼくは1人で洞窟に隠れていた。ラ・リェラの祭に出ていったこともあったが、ぼくに気づいたのは十年前に踊ったことがあるマルティーナだけで、彼女はすぐに夫と踊り出した。死を迎えた父に会いに行くと、妹から「出ていって」と言われた。リーナは温かく迎えてくれたが、洞窟に戻ると、既に治安警備隊に発見され、燃やされていた。その後、二日二晩の嵐を屋外でやりすごし、やがて実家のヤギ小屋に掘った地下の穴の中で一日中を過ごすことになった。しかし生き埋めになったまま死を待つしかない日々に耐えきれず、ある日、国境越えに必要なものを持って、無人駅から列車に乗るのだった。
隠喩を多様した自然描写が、散文詩的な色調を文章に与えていました。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)