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特別党学校交流会  下

2007-11-12 | 市民のくらしのなかで

 

    綱領の立場で日本と世界を見る

 

 

                 特別党学校交流会

 

           不破哲三社研所長の発言<下>

 

世界の流れはどの方向にむかっているか

 第三の問題は、その活力ある世界の活力ある動きが、大局的にみてどの方向に向かっているのか、「資本主義万歳」の方向を向いているのか、資本主義をのりこえた新しい社会、社会主義・共産主義の探究の方向を向いているのか、という問題です。

 党綱領の最後の第十七節の次の文章を思い出してください。

 「社会主義・共産主義への前進の方向を探究することは、日本だけの問題ではない。

 二一世紀の世界は、発達した資本主義諸国での経済的・政治的矛盾と人民の運動のなかからも、資本主義から離脱した国ぐにでの社会主義への独自の道を探究する努力のなかからも、政治的独立をかちとりながら資本主義の枠内では経済的発展の前途を開きえないでいるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの広範な国ぐにの人民の運動のなかからも、資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている」。

 私たちがこの文章を書いた時点では、たとえば、アジア・アフリカ・ラテンアメリカで社会主義をめざす新しい旗があげられたという事実はまだ目撃しておらず、その展望を二一世紀の大きな予想として書いたのでした。ところが、綱領のこの予想が、いまではすでに、かなりの程度まで現実になりつつある、と言えるのです。

 それはどこでか、というと、ラテンアメリカです。私たちは、この綱領を決めた二〇〇四年の党大会で、出席していただいたベネズエラの大使からチャベス大統領の本『ベネズエラ革命』(日本語版)を贈られました。私は、その本を読んではじめてラテンアメリカですすんでいる大変革の実態を知り、大会の閉会あいさつのなかで、「いまこの大陸に新しい激動の時代がはじまりつつある」という「つよい予感」を述べたのでした。

 ところが、それから四年近くたって、ラテンアメリカの変革は、次々と新しい国をとらえて広がりつつあります。昨日の新聞には、中米のグアテマラで新しい左派政権――「中道左派」政権と言われます――が生まれました。グアテマラは、第二次世界大戦後、早い時期に民主政権が生まれたが、アメリカに支援された反革命軍の攻撃で打倒されたところです。五十数年ぶりの左派政権の復活です。

 そして、そのラテンアメリカの変革のなかで、いくつかの国で社会主義の旗がかかげられはじめたのです。

ラテンアメリカの変革の息吹

ベネズエラで

 ベネズエラでは、民族的、民主的な革命の発展のなかで、チャベス大統領が、これからの国づくりを、社会主義の方向ですすめようじゃないか、という呼びかけを発しはじめたのです。最初のよびかけは二〇〇四年十二月ごろにおこなわれました。

 その時から、チャベス大統領が、これまで世界には社会主義はなかった、ソ連にあったのは社会主義ではなく、「社会主義の退廃」だったといって、変質し挫折したソ連の「社会主義」を問題にしない態度をとり、新しい社会主義を探究する立場を強調していたことは、私たちが注目した点でした。

 そのベネズエラで、ベネズエラ的社会主義の建設は、いまではこの国の公式の大方針になっていて、国づくりにかかわるさまざまな建設計画が、下からのイニシアチブで活発にすすめられているようです。そのやり方はたいへん独創的で、地域住民が自分で計画をたてて、その計画を評議会という地方組織に提出する、それが有意義で価値ありと認められると、国やその他の基金から必要な資金が融資として提供され、計画の進行が始まる、というやり方です。この仕組みで、農業の共同農場づくりや協同組合的な工場づくり、あるいは地域の文化事業の推進などさまざまな活動が、「ソシャリスモ(社会主義)」の名前のもと、住民の無数の組織によってすすめられているとのことです。

 まだ目標とする社会主義の中身は確立していないし、全国的な設計図もないのですが、資本主義ではダメだ、資本主義をのりこえた新しい社会を下からの力でつくるという大方針で、国民総がかりの国づくりがすでに始まっている、というのが、ベネズエラの社会主義運動の面白いところです。

ボリビアで

 次に、ベネズエラの南側でも、新しい社会主義の国づくりが始まっています。ボリビアという国です。ここでは、一昨年の十二月の選挙で、モラレスという大統領が当選し、昨年一月に新政権をつくったのですが、この人は先住民のインディオ出身なのです。

 インディオとは、ヨーロッパ人による侵略が始まる前に、南北アメリカ大陸で生活していた先住民のことで、有名なインカやマヤ、アステカの古代文明はすべてインディオの祖先たちがつくりあげたものでした。一六世紀に侵入してきたヨーロッパ人により絶滅され、残った人びとも長期にわたって社会の底辺での生活を余儀なくされてきました。そのインディオ出身の政治家が政権の中心にすわったというのは、ラテンアメリカの政治史のなかではじめての、画期的なできごとでした。

 ボリビアは西隣のペルーの南部とあわせて、昔インカ国が栄えた地域でした。いまの人口構成でも、インディオ55%、メスティソ(先住民と白人の混血)35%、白人10%で、インディオが多数を占めているとのことです。この人たちが、選挙権はもってはいるが、国会などのある地域への立ち入りが禁止されているなど、たいへんな差別を受けていたのです。その国に、大統領をはじめ閣僚の六人までをインディオが占めるという新政権が誕生したのですから、ボリビアにとっては、天地がひっくり返るような大変革だったでしょう。

 私は先日、その革命の様子を取材した映画をビデオで見たのですが、政権につくまえのインディオ住民のデモ隊の光景では、「プロレタリア・インカ革命」と書いたプラカードが高々とかかげられていました。まさに底辺に生きていたインディオが革命の大きな力をなしていたことを、まざまざと印象づけられる光景でした。

 このボリビアでも、資本主義モデルはだめだ、社会主義に向かって進もうという流れが、いま革命の中心になりつつある、といわれます。

 その大統領が、九月二十六日に、国連に出席して総会で演説しました。

 「先住民として、ボリビア史上最も軽蔑(けいべつ)され、嫌悪され、さげすまれてきた階層から生まれた私たちが、わが愛するボリビアを変革するために、史上はじめて国のかじ取りとなっている」。

 こう語りはじめたモラレス大統領は、IMFの押しつけ、少数者による資源の独占、地球温暖化の深刻さ、軍拡競争と大量殺りくなどを、資本主義の経済モデルがうみだしたものとして告発します。そして最後に、その演説を次の言葉で結びました。

 「こうした経済モデルを変えて資本主義を一掃することが重要だということを、みなさんに訴えたい」。

 国連総会で「資本主義の一掃を訴えた」国家元首は、いまだかつていなかったと思いますが、この声が、アメリカ資本主義と真っ正面から対決しているラテンアメリカの一角からあげられた、ということは、たいへん深い意味があると思います。

ブラジルで

 ブラジルは、一億八千万をこえる人口をもつラテンアメリカ第一の大国ですが、ここもルラ大統領の左派政権が成立してすでにほぼ五年になります。

 この八月~九月、政権党のブラジル労働党からの招待で緒方靖夫副委員長が党大会に出席しました。この政権自身は、社会主義という目標をかかげてはいないのですが、大会では、三つのテーマが議論になって、第一のテーマが「社会主義」だったと聞きました。ここでも、新しい国づくりを問題にするとき、自分たちの国民的体験からいっても、資本主義の道では国の発展の進路は開けない、社会主義の道を探究しようではないか、という気運が大きな流れになっているのだと思います。

 もちろん、これらの国ではまだ社会主義の目標やその路線が確立しているわけではありません。いまやられている具体的なプロジェクトにも、当然、成功もあれば失敗もあるでしょう。しかし、これらの動きは、資本主義の世界的な矛盾がこれだけ深刻になっているもとで、社会主義の目標が、世界の人びとをひきつける新しい力をもちつつあることを、生きた姿であらわしています。私たち自身が、まさにこういう激動と変革の世界に生きているのです。

 以上、綱領の世界論にふくまれている三つの視点を説明しました。日々の国際ニュースに接するときこれらの視点をいつも頭において、この日本での私たちの活動と激動する世界の流れとの関連をつかむ一助にしていただければありがたい、と思います。

 (おわり)

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