「対テロ戦争」の誤り 米国の地位低下
国際戦略研が「概観」を発表
【ロンドン=岡崎衆史】
英国の有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は18日、世界の安全保障情勢
を分析した「2008年版戦略概観」を発表し、「対テロ戦争」の誤りで米国の国際的地
位が低下し、同盟国も含めた米国離れが進み、世界が多極化しているとの見方を示
しました。
概観は、米国の国際的地位は対テロ戦争開始後の「過去8年にわたって低下した」
とし、特に2003年のイラク戦争後の影響力の失墜は「異常な大きさ」だと強調しまし
た。
概観は、米ブッシュ政権が9・11同時テロへの対応策として「対テロ戦争」を掲げた
ことは、「問題の本質と対処の仕方を誤った」と指摘。その結果、米国に集まった同
情が、「その行動への嫌悪、発言への不信に置き換わった」と分析しました。
米国の影響力低下は、
(1)北大西洋条約機構(NATO)加盟国が米国が支持するグルジアとウクライナのN
ATO加盟を拒否し、アフガニスタンでの武力偏重の対応を拒絶していること
(2)湾岸、アラブ諸国が経済、安保分野で米国以外の国とも関係を強化しつつあるこ
と
(3)アジア諸国での米国を含まない「東アジア首脳会議」の存在
(4)中南米での米国の影響力の消滅―など、NATO同盟国や伝統的に影響力の強
い地域を含む世界で進んでいると述べています。
IISSのチップマン所長は発表の記者会見で、欧州、中東、アジアなどの各国は、
米国に向かって自ら提言していくことが重要だと語りました。
大切な現状認識です。
アメリカべったりでは世界から孤立します。