しんぶん赤旗 きょうの潮流
南極の棚氷の崩壊は暖かく湿った空気の流入と関係していた―こんな研究成果が先日、本紙で紹介されていました。気候変動の影響でこの傾向が強まり、残った棚氷の崩壊が心配されるとありました
▼南極大陸を覆う氷は南極氷床と呼ばれ「地球最大の氷」です。氷床の沿岸で氷が海に流れ込み、氷床とつながったまま海に浮いている部分が棚氷。棚氷の崩壊が引き金となり、これとつながった内陸の氷床から海への流出が増え、海面上昇の要因になります
▼2002年に観測史上最大の棚氷の崩壊が起きました。わずか数日のうちに東京都の1・5倍に相当する棚氷が失われたといいます(『南極の氷に何が起きているか』)
▼最新の研究成果をまとめた国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書はこう指摘します。二酸化炭素などの排出による氷床と海面水位の変化は百年から千年の時間スケールで不可逆的だと
▼1900年から現在までの上昇は20センチ。しかし、排出量が非常に多ければ、氷床の不安定化を含み、2300年には15メートルを超える上昇の可能性も排除できないと
▼IPCCの指摘は明確です。エネルギーや産業、家庭など全ての部門で二酸化炭素の早急で大幅な排出削減が必要だと。そして太陽光発電と風力発電などの導入コストが劇的に低下し、大きな貢献ができると注目します。必要なのは「今すぐの行動」です。原発と石炭火力に依存し、実用化のめども立っていない技術を前提にした日本の政治の転換が急がれます。