熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

岐路に立つ特許制度

2009-09-27 18:32:10 | Weblog
知的財産研究所20周年記念論文集「岐路に立つ特許制度」を弁理士会で借りて読みました。

この論文集は、①特許制度の現状と展望(法学の観点から、経済学の観点から)、②先進国の特許制度が抱える課題とその克服、③発展途上国と特許制度 の3つの章からなっています。

実務家としては、この論文集のような大所高所から見た特許制度の現代的な課題を考えることも必要です。

参考になった論文は、「特許制度の現状と課題(法学の観点から)」です。
この論文は、神戸大学大学院法学研究科教授の島並 良さんが執筆したものです。

近年、裁判例では、特許制度の画一性の喪失が目立っています。
均討論の適用、権利消尽の限界、無効の抗弁等が、その代表例でしょうか。

画一性が高まれば、予測可能性が高くなり、安心してビジネスを展開できますが、その反面、具体的妥当性が低下してきます。

裁判所の裁量の範囲を広く認めると、具体的な妥当性は高まりますが、予測可能性は低下して、安心してビジネスを展開することが難しくなります。

均等侵害を認める裁判例は、現在のところ、極めて少ないので、予測可能性が低下しているとまでは言えません。

一方、特許無効の抗弁については、裁判所が認めることが比較的多く、無効事由の制限もないことから、特許権者の予測可能性が低下して、被疑侵害者への権利行使を躊躇するという委縮効果が懸念されています。
商標法のような、除斥期間の規定がないため、特許法167条の適用を受けなければ、何回でも無効審判の請求が可能で、経済的基盤の弱い特許権者にとっては、権利行使をした特許権がいつ無効になるのかわからないという不安定な状態に置かれることになります。

このように、予測可能性が低下するような状態が生じてきた場合は、法改正の必要性が高まってくることになります。

今後予定されている特許法改正案の中にも、予測可能性と具体的妥当性とを比較考量して、改正すべきであると結論づけられた内容も含まれています。

特許制度の現状と課題を考える良い機会を提供してくれた論文集です。
ご一読をお勧めします。



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