熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

景観利益

2009-10-01 21:19:32 | Weblog
万葉集に詠まれた景勝地で、映画「崖の上のポニョ」の舞台になったとされる広島県福山市の鞆(とも)の浦で、県と市が進める埋め立て・架橋事業をめぐり、反対する住民ら159人が県知事を相手取り、埋め立て免許の交付の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁でありました。

能勢顕男裁判長は「鞆の浦は国民の財産で、免許が交付されれば、住民が日常的に恩恵を受けている景観利益について重大な損害が生じる恐れがある」と原告の主張を全面的に認め、知事に免許を交付しないよう命じました。

改正行政事件訴訟法に基づき、景観利益を理由にして公共事業が事前に差し止められるのは初めてで、今後の開発と景観保護のあり方に大きく影響を与える画期的な判決です。

この裁判で争点となったのは、「景観保護と住民の便利さ」のどちらを重視するかです。

裁判長は、「鞆の浦の景観は歴史的・文化的価値を有し、国民の財産というべき公益で、事業が完成した後に美的景観を復元することは不可能」と言及し、その上で、埋め立て・架橋事業が景観に及ぼす影響を「決して軽視できない」と述べました。

県が策定した事業計画については、「周辺の道路事情は悪く、改善の必要性は認められるが、事前調査や検討が不十分で、景観の保全を犠牲にしてまで事業をしなければならないものか、大きな疑問が残る」と批判しました。

また、埋め立て免許の交付は、瀬戸内海の景観保全を定めた瀬戸内法に照らしても、「裁量権を逸脱した違法な行為にあたる」と指摘して、「架橋が完成すれば(鞆の浦の)景観が大きく様変わりし、美しさが損なわれ、文化的・歴史的価値が大きく低減する」と判示しました。

私は、この判決を支持する立場です。
便利さと経済的利益を優先させて、自然環境・景観を損なうような公共事業を進めることは、日本の将来のために良くないことは明らかです。

ダム建設、道路工事、空港建設等の公共事業も同様ですが、一度走り出したら止めることができない公共事業の在り方を根本的に変更する良い機会です。

政権交代があったから、初めて実現できる環境になったもので、これからも同様の判決が続くでしょう。

自然の景観を大切にする日本になって欲しいものです。



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