今日は雛祭りだが、雛飾りはすでになく、白酒も雛あられもすっかり縁遠いものになった。ベランダの鉢を見ると、すっかり花が咲き揃ってきた。寒気が強いころに咲きはじめたときは、香りを感じなかったが、今日花弁にカメラを向けると、清らかの花の香りが漂った。他に先駆けて咲くので愛玩されてきた梅の花であるが、古今集の時代になると花の香りがもてはされるようになった。
色よりも香こそあはれとおもほゆれ たが袖ふれしやどの梅もぞ 古今集33
「あはれ」とはいとおしいの意、また「おもほゆれ」は思われると普通に解釈できる。歌の意味は、「梅はその姿よりも香りの方がいとおしく思われる。一体、この庭の梅の花は誰の袖に触れてこんな香しい香りがするのだろうか」ということになる。夜、花も見えないのにそよ風に乘って運ばれてくる香りを賞美するようになった。花の香りに、袖の移り香を連想する意識には、艶めかしい思いがおり込まれている。